愛は、思うことではなく…

大事にとってあった新聞の切り抜きがあります。
朝日新聞「声」の欄。千葉県の59歳男性の投稿でした。
「ずっと抱いてあげたかった」という題。
「1997年」とあるから、今から15年前の記事。
その書き出しが、ずっとボクの心に刺さっているのです。

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愛は、思うことではなく行動することである。
愛の対象に向かって、話す、書く、体を動かすなどの行為を実践することである。
このことは夫婦愛、親子愛、兄弟愛、友人愛、さらには広く人間愛にもあてはまる。

名古屋に住んでいた私の母は、
1973年(昭和48年)10月始め、足の骨を折って入院した。
神戸に勤務していた私は、その時、仕事が非常に忙しく、
たまたま愛知県へ出張したついでに母を見舞った。

八人兄弟姉妹の末っ子で、私が生まれた時、母は43歳だった。
兄姉がうらやましがるほど可愛がってもらった。

病室に入ると、母はいきなり「抱いて」と言った。
私は一瞬戸惑ったが、抱きしめた。母の上半身は思ったより重かった。
五分ほどすると手が疲れたので母を下ろした。母は目をつむり何も言わなかった。

幼少時に母に抱いてもらった一万分の一の時間も、私は母を抱いていない。
三十五歳だった私の体力は、仕事が終わったら新幹線に飛び乗り、
名古屋に行って徹夜で看病し、早朝に神戸へ戻ることを楽に出来る余裕があった。
私はそれもしなかった。

見舞った数日後、母は逝った。私のつらい悔恨は、終生消えることはない。

1997年7月13日(日)朝日新聞「声」の欄より
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愛は、思うことではなく行動することである。という一行は
自分にも言い聞かせているし、友人や後輩の結婚のときには
この言葉を贈ることにしています。


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