ちょうちん袖の夏。

ちょうちん袖B全

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ちょうちん袖の夏。

1987年 西武百貨店ポロシャツ
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コピーをたくさん書いて、この仕事のADナガクラトモヒコ氏に見てもらった。書いたコピーを全部見せると、ナガクラくんは「いいねえ。いいのイッパイあるねぇ。で、中村くんはどれをやりたいの?」と言った。ハッとした。今までコピーを書いて、「誰か」がいいねと言ってくれるコピーを選んでいた。自分で「これがやりたい!」と強く思ったことはあまりなかったし、「誰か」がいいねと言ってくれるだけでホッとしていた。「ちょっと待ってて」とデスクにもどり、もう一度読み直して、1本を決めた。

当時、自分の書くコピーになにか閉塞感を感じていた。「ああ、自分がモッタイナイ」「楽しい仕事は、ラクじゃない」「プロの男女は、差別されない」「働いているだけでは、プロにはなれない」、、、気がつけば、ほとんどが「ない」で終わっている。「・・・ない」という否定形は確かに強いんだけど、そればっかりかよ、と気になっていた。このポロシャツのコピーにも「ちょうちん袖じゃなければ、ポロシャツじゃない」なんて下書きもあったと思う。そういうコピーに、もう飽きてきていた。なんかこう、ぽか〜んとしたコピーを書いてみたかった。そこで、『ちょうちん袖の夏。』をナガクラくんに持って行った。

新聞10段と店内に貼るB全ポスター。B全ポスターをナガクラくんの席で原寸でレイアウトしていた時。その頃は『版下』に『写植』を貼って『入稿』していた時代。ボクは、ナガクラくんが席を外している隙にコピーの紙焼きを勝手に120%とか150%に拡大して、知らん顔してその版下の上に置いたりしていた。笑ってもらえればそれでいいし、万が一採用されたらラッキーってカンジだった。席に戻ったナガクラくんは「もー、中村くん、またやったでしょ」と見抜く。しかし、しつこく繰り返した。ヤケクソでもっとデカく拡大したコピーを置いたら、写真の下からはみ出てしまった。あわてて写植を切って2行にした。こりゃ、バレるわ、と思ったら、ナガクラくんは「この字切りも面白いね」と採用になったのだ。

この頃は楽しかった。このB全ポスターの一番下に(新聞原稿には上に)奇妙な模様のラインが入っているでしょ。これは、ナガクラくんのデスクのカッティングシートに張り付いていた他の仕事の残骸だった。それがたまたまこのレイアウトにくっついて、あれ?これ、面白くね?となったのだった。こういう『遊び』が仕事の中にあった。デザイナーとコピーライターで、あーでもない、こーでもないと原稿を作っていた。パソコンの画面の中でいじるのではなく、原寸で切ったり貼ったりしながら、遠くに離れて眺めてみたり。ひとつの原稿をじっくり作ることができた。体温があった。

しあわせな仕事。クライアントも喜んでくれたし、憧れのADだったナガクラくんとの仕事ができたこともうれしかったし、コピーの書き方の新たな経験もできた。なによりうれしかったのは、ふだんあまり褒めてくれない親分の仲畑さんが「あれ、ええね」とポツリと言ってくれたことだった。

(↑上の写真はレイアウトが決まったときに撮ったポラです。まだコピーがガタガタですが、全体の雰囲気は完成していました)


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