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暑い暑い世の中で
ビールだけが冷えている。
1992年 キリン一番搾り
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これは新B額面というボクが一番好きなメディア、電車のB3ポスターです。電車のドアの戸袋の、一番端の席に座った人の頭の上に貼られるB3ポスター。つり革につかまって、つい読んでしまう位置。このコピー、自分では気に入っていました。でもプレゼンする前、ホントにこれでいいのか?と思っていたある昼下がりの山手線。ボクはその新B額面が掲載される場所が見える位置に座っていました。中年のサラリーマンが汗を拭きながら乗って来て、その新B額面が貼られるであろう位置のつり革につかまった。そこで想像してみたのです。その汗を拭きながら乗って来たサラリーマンの後ろから「暑い暑い世の中で、ビールだけが冷えている。キリン一番搾り」と頭の中でささやくのです。すると、そのサラリーマンはどう思うか、と想像してみます。「何言ってんだか・・・ふんっ」と思うか「くーっ!ビール飲みてぇ〜」と思うか。勝手な想像力ですが、ボクは後者だと確信しました。汗ばんだ背中がそう言っていたのです。
一番搾りの広告は、「すべてのビール広告の中で一番うまそうな広告、一番飲みたくなる広告にしよう」というチームの暗黙の約束がありました。一枚のポスターが心に残る。しかも「なんかビールの広告見てたらビール飲みたくなった」じゃなくて「あの一番搾りの広告でビールが飲みたくなった」と言わせたい。それが一番搾りという商品のファンをつくっていくんだと信じていました。今はもう担当ではありませんが、今でもそう思っています。
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暑い暑い世の中で
ビールだけが冷えている。
子どもの頃に好きだった夏は、
いったいどこへ行ったのだろう。
いつの間にか「暑いなあ」の言葉を
「疲れたなあ」の意味で使っていた。
「暑いなあ」を連発しても、涼しくなるわけではないので、
そんな時は「夏だなあ」と思うことにした。
その方が、少し元気がでてくる。
ビールがあるさと思えば、また少し元気がでてくる。
冷えたビールがあれば、夏は暑いほうがいい、と勝手に思った。
うれしいビール。キリン一番搾り。
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