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ビール、ビールと
蝉が鳴く。
1992年 キリン一番搾り
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これはB倍ポスターです。これも好きなコピーなんですが、いま思うと、よくこんなコピーを書けたなと(OKしてくれたクライアントに感謝です)その頃確か、仲畑広告制作所で句会が流行っていまして。みんなで俳句をやるんです。みんなで出し合って、みんなで選ぶ。それがボクの句はちっとも選ばれないんです。それが口惜しくて俳句の本を読んだりして勉強してて。そのころのボクの頭の中はほとんど五・七・五でした。で、どことなくコピーにもその五・七・五の匂いが残っているんじゃないでしょうか。それともうひとつ。心の奥の方でお手本にしていたコピーがありました。1974年日本国有鉄道、長沢岳夫さんの「ミーン、ミーン、ミーン。」というポスターのコピーです。これは夏休みの帰省か旅行のためのコピーだったかと思います。「ミーン、ミーン、ミーン。」だけですよ? なのにこんなにシズる言葉。こういうの、いつかできるといいなぁと漠然と思っていました。そういう背景で、このコピーができたんだと思います。
そして何気にボクは「うれしいビール。キリン一番搾り」というのが、名コピーなんだと思っています。これはボクがチームに加わる前からあったコピー。CMで緒形拳さんが一番搾りを飲んでひとこと「うれしー」と言って終わる。(だからたぶん、安西さんの発明かな)これが実によかった。だから、「うれしいビール」になったのだと思います。時代が変わっても、タレントが変っても、酒税が変っても、担当広告代理店が変っても、商品名やパッケージや愛飲するお客様が変らないんだから、この「うれしいビール。キリン一番搾り」というコピーだけはずっと使い続けていたら、カッコイイのになぁと勝手に思ったりします。