「ジョニーって誰よ?」

KDDI日経30d2000年 KDDI 日経新聞30d

「ジョニーって誰よ?」

ーーー1983年夏ーーーー

「何か用か?」
「なんでもないっす」
「何だよ?変なヤツだな。何の用なんだ?」
「いや。なんだか最近、何にもやる気がしなくて」
「派手なヤマが無いからか」
「そうかも。なんだかだるいし、夏休みの友も、はかどってないし」
「バカ野郎。わざわざ呼び出しておいて、そんな話かよ」
「今朝の新聞、読んでないのか」
「シンブン?」
「大臣さんたちがやっと重い腰を上げてくださったってわけよ」
「えっ、ということは!」
「そうよ。やっと
電電公社と国鉄と専売公社の民営化
が始まるのよ」
「じゃあ、兄さんのあの、去年の夏休みの自由研究が現実になるってこと・・・」
「そうよ。だからそんなしけた面を二度と俺様の前にさらさない方が身のためってことよ」
「わ、わかったよ。兄さん。と、とりあえずおめでとう」
「給食が終わったら、さっそくみんなを体育館ウラに」
「ああ、そうしてくれ」
「あ、でも今日は夏休みの登校日だから給食はでないと思うぜ」

「もう一個、作ろうかと思うんだ。電話会社」
「お言葉ですがボス、今から作ってもどうせ業界二番手ではないですか?」
「ふん。頭の固い学級委員長さんにも世話がやけるぜ」
「いいか、二番手というのはな、一番手がやってきた失敗を繰り返す必要がないんだ。
わかるか?ロスなく事を運ぶことができるんだよ」
「つまり、そのぶん
No.2だから、ヤンチャできる
ってこと」
「そういうこった」
「だけど、町中のあっちこっちに、もう電信柱がおっ立っちまってるぜ、旦那」
「ば〜か。そんなもんが21世紀まであると思うか?」
「21世紀ったって、まだ17年5ヶ月以上も先ですぜ」
「ま、線がないとつながらないって発想は今日限りで忘れちまうことだな」
「ということは、もしかして・・・」
「ジョニー、火っ」
「は、はい」
「夏はやっぱり線香花火だな」

「そこでだ。半径100マイルの土地に一軒だけコンビニができるとする。
その町には店らしい店がその一軒だけ。そこの店主ならまず何を考える?」
「値段を高くしても客は買うしかない」
「そうだ。生活必需品ならなおさらだ」
「で、そこにもう一軒コンビニを作ったらどうなる?」
「おでんもあるといいなぁ・・・」
「ジョニー、お前は確かにいつもいい味だしてるぜ」
「ごめんなさい」
「やけに素直じゃねぇか」
「競って安売りしたり、品揃えを工夫したり、サービスを考えたりする」
「ピンポンだ」
「ケーザイっていうのは、競争して発展していくもんなんだ」
「だから電話会社もいくつかあって、競争する方がいいのかぁ」
「なーんだ、いままでは一個しかなかったから面白くなかったんだ」
「ってことになるかな」

「ひとつ素朴な疑問があるんですが」
「なんだカルロス」
「手紙を出すのに切手を貼りますよね」
「ああ、貼るわな」
「隣りの県に出すのも都内に出すのも同じ値段ですよね」
「そうだな」
「なのになぜ、電話料金は距離が遠いと高くなるんでしょうか?」
「う〜む。わかんねぇけど、エライ誰かさんがお決めになられたんでしょうな」
「東京都江戸川区に住んでいて、隣りの千葉県浦安市の彼女と
東京都八王子市の彼女だったら、どっちの電話代が安くすむんスか?」
「カルロス。二股は感心しねぇな」
「でも、それもいつか同じになるんじゃね〜かと思うぜ。別に根拠はないけど」
「やっぱり会社の会議室で、大勢で決めるとそういうことになるんでしょうか?」
「そうかもな。
多数決で決まることはたいていフツーだ
からな」
「そういう意味でも新会社を作るって面白いかも」
「そうですね。新会社を作ったらまず、スローガンなんかつくっちゃいますか」
「なんかカッコイイやつをバシッと。横文字かなんかで」
「ま、そうなんだけど、まず
スローガンより実行せよ
なんじゃねぇか?」
「あはは、そうでしたね。スローガンなんて企業の自己満足の場合が多いですからね」
「それに昔から、『死んだカモよりゃ生きてるカモのほうが値打ちがある』って言いますし」
「ジョニー、それは全然例え話になってないと思うんだが・・・」

「広告キャンペーンはどうしましょう?」
「やっぱ広告代理店かなんかをいっぱい呼んでバ〜ンと大競合大会っすかね」
「お前はとんでもねぇ勘違いをしている。案がいっぱいあればいいってもんじゃねぇんだ。
確かに広告屋さんはいろんなアイデアを提案してくれる。
でもそれをチョイスするのはクライアントなんだ。そこで、どの案を選ぶかが勝負なんだよな」
「世間の人から『この企業はこ〜んな広告がいいと思って採用したんだぁ〜』
『ダッサァ〜』
とか思われているんですかね、陰で」
「とにかく広告主は、自社の商品を褒めただけのコピーを採用しがちなんだ。
誰でも自分を褒められると悪い気はしねぇからな。だけどちょっと考えてみ?
合コンで、自分のことを褒めてばっかいるヤツが、モテると思うか?」
「確かに・・・
つまんない広告
をする企業は、ほぼ、つまんない(笑)
「広告だけ面白い、って企業もあるんだけどな(笑)いろいろタイヘンなわけよ。
ま、コピーライター講座はその辺にして、下校時間の放送の前に本題にはいるぞ」

「ジェシー、例の枠はいくつだ?」
「はい、郵政省が次世代の携帯電話の参入枠を3つと設定しました」
「確かか?」
「はい、昨日の中吊り広告に出ていたので間違いありません」
「そうか、中吊りか」
「はい」
「で、今はどうなってる?」
「旧電電公社系と旧国鉄系がすでに手を挙げています」
「すでに、か」
「さすがは、そういうところは抜け目がないようです」
「残るはあとひとつか」
「国内電話と携帯電話、あと国際電話とインターネットプロバイダ・・・」

「兄貴、うちの親父が国内電話のDDIのお偉いサンやってまっせ」
「拙者の知り合いのオジキの場合はケータイのIDOを、やっておるでござる」
「カルロスの家は確か・・・」
「はい、父親が国際電話のKDDの関係者だという噂です」
「よし、わかった。明日全員をこの秘密基地に集めろ」
「えっ?何をする気ですかい」
「まさか誘拐?」
「ば〜か、兄貴が人様の迷惑になるようなことをしたことがあるか?まだ小学生だぜ」
「合併するんだよ」
「あ、知ってますよ。中華街で売ってますよね」
「それは月餅だよ、ジョニー」
「そんな調子だから子分の一番になれないんだよな、お前は(笑)」
「それだけは言わない約束だったのに。でもさ、
日本で二番手でも
世界で一番になればいいじゃん。
でしょ?」
「お、いいこと言うじゃん。それ、採用(笑)」

「で、最初は何をやりますか。やっぱ値下げですかね」
「値下げの広告って、一覧表を見てもよくわかんないんですよね〜」
「あれはわざとですかね。どこもイタチゴッコだし」
「そうなんだ。3分当たりいくら下げました!って威張ってみたところで、使える地域が限られていたりする。
注意しないと『安くしました!』というイメージだけが残っちまう」
「それが目的だったりして(笑)」
「そういうまぎらわしい広告は、ジャローラモ一家が黙っちゃいないでしょ」
「確かに、ウチの立ち上がりの時期にはドコもそういう広告が増えてくるでしょうな」
「たぶんな。だから、ウチは他と違うアプローチが求められるってわけよ」
「値下げで威張るのはカッコ悪いですもん。だったら最初から安くしとけっちゅうの(笑)」
「でも、商売ですから、そうも言ってられないんではないかしら」
「そりゃあ、ねぇだろう、ジェシー」
「消費者って、っそういう広告の狙いを意外とズバッと見抜いているもんなんだぜ」

「お話の途中ですが兄さん・・・」
「なんだ、ジョニー、久しぶりだな」
「僕たちは一体誰なんですかね?変な小学生の設定になっているようですが」
「架空の人物なんですかね?」
「ば〜か。架空でこんなに面白い話ができると思うか?」
「まだ若いお前たちには、実名を明かすわけにはいかないけどな、フフフ」

「なんか面白くなりそうですね、兄さん」
「ははは、そうだな。ま、面白くなきゃ、こんなことやってらんねぇけどな(笑)」
「あ、そうだ。合い言葉は、
二年後に笑おう
に決めたから」
「二年後というと、アレが規制緩和されて、アレとアレに決着がついて・・・・」
「それまで、笑うのを我慢しなきゃいけないんですかい?でも、昔から言うじゃないですか。
スポーツ選手へのインタビュアーは必ず『放送席、放送席』と二度叫ぶ、って」
「ジョニー、お前は、生まれてくるのがちょっと早すぎたのかもしれねぇなぁ」

*というわけで、KDDとDDIとIDOがひとつになりました。
合併と言うより集合ってカンジが近いかもしれません。
とにかく、これからの通信業界を面白くするために。
*このストーリーは、ある程度事実に基づいたフィクションです。
*しかも、1983年から今年までの話を数分間に短縮したものです。

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長いコピーを読んでいただきありがとうございました。
あまりに長かったので、この仕事の裏話は後日報告します。
なぜジョニーなのか。ジェシーとは誰なのか。

ジョニー三部作
①「ジョニーって誰よ?」
ジョニーの正体
ジョニー前(下書き)


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