日本はまだケガをしたまま。

日本はまだケガをしたまま
2005年1月31日 日経新聞夕刊

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日本はまだ、ケガをしたまま。

2005年  三宅島災害・東京ボランティア支援センター
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三宅島の全島避難指示が出されてから約4年半。
明日2月1日、ようやく島へ戻ることができるようになります。
依然として一部地域では火山性ガスの影響があり
まだ安全が確保された状況ではありませんが
ご支援いただいたみなさまへ
謹んでご報告をさせていただきます。

10年前、阪神淡路大震災で被災された方々も。
昨年の台風被害で被災された方々も。
新潟中越地震で被災された方々も。
スマトラ沖地震で被災された方々も。
元の生活を取り戻すためには、
気の遠くなるほどの長い時間がかかるものです。
私たちはこれからも支援活動を続けてまいります。
どうかみなさま、ニュースの扱いが小さくなっても
心のどこかで、ご支援いただけると心強く思います。
災害は自然のチカラですが、
復興は人間のチカラなのですから。

三宅島災害・東京ボランティア支援センター
代表:山崎美貴子
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CD:白土謙二  AD:小塚重信  C:中村禎

もしボクが被災者だったとしたら、何が一番イヤだろう? と考えました。日に日に新聞のニュースの扱いが小さくなっていくことに、心細さを感じるんじゃないか、と思いました。忘れられてしまうことが一番怖いと思ったのです。みんながみんな、被災地を毎日支援することはできないでしょう。でも頭の片隅にでも、まだ復興に汗を流している人たちのことを忘れてほしくない。そんな気持ちで書きました。ボク自身も忘れかけていました。いろんな自然災害が次々と起こり、最近の出来事に目を奪われるけれど、ニュースに取り上げられなくても、まだ復興の途中なんだ、と。

日本をひとりの「身体」だとすると、いろんな場所にケガをしてて、それがまだ全然治っていない。そんな状態だぞと。痛みはだいぶ無くなったけど、傷跡はまだジュクジュクしたままだぞと。

ボディコピーの「災害は自然のチカラですが、復興は人間のチカラなのですから。」の最後の一行はキャッチ案のひとつでした。たくさんキャッチを書いて捨て難いものをボディコピーのアタマや締めに持ってくる。ボディコピーのある一行が心に刺されば、ボディコピーはそれでいい。だからキャッチはたくさん書くのです。

この広告は、日経新聞と電通が企画をして掲載しました。「こんな広告するお金があるなら被災地に送れ」という声を防止するために、その一行を入れてくださいと言われたのです。広告に金を使うことがそんなに意味のないことか? 支援を集めるためにも、もう一度国民に向けて「忘れないで!」と叫ぶことに意味がないというのか?と、ちょっとムッとしました。(ボランティア支援センターの人にムッとしたのではなく、そういうイチャモンを付ける人がいることにムッとしたのです)

もっとムッとしたことは、この広告がコピー年鑑の一次審査で落とされたことです。コピー年鑑に掲載してもらえなかった。ボクはいいコピーだと思っています。だからボクはここに残します。


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