だってブラジルなんだもの⑨レシフェの雨

2014年6月14日
プルナンブーコ
■19時すぎ アレーナ・ペルナンブッコ
子どもたちと肝っ玉校長先生と別れ、大型バスはスタジアムに向かう。スタジアム近くまでは入れないので、ここから歩いてスタジアムへ行けと、大きな通りで降ろされる。スタジアムってどこなのよ?と思ったが大丈夫。あたりは真っ暗。道の向こうに空が明るく見える場所がある。あれがスタジアムだ。明るい場所はあそこしかない。そこを目指して雨上がりのグジュグジュの道を歩き始める。ARENA PERNAMBUCOという道路標識。その先に、スタジアム全体が光っている。日本の初戦の舞台だ。

ハチマキ1ハチマキ2ハチマキ男

■ハチマキ
セキュリティチェックに大勢が並んでいる。日本人の姿も見えるが、やっぱりブラジル人も多いなぁ。ここでの仕事は『日の丸ハチマキ大作戦』のハチマキをブラジル人に配ること。誰彼かまわず配るのではなく、ホントに日本を応援してくれそうな人に渡したい。しかもただ渡すだけじゃなく頭に巻いてあげることにした。ときどき日本語が上下逆さまに巻いている人もいるから。そういう人を見かけると巻き直してあげた。ボクがハチマキをしているもんだから、「それくれない?」と寄ってくる人がいる。その人にあげると、それを見た人が「オレもオレも」と寄ってくる。「ちゃんと応援してくれよ?」「ジャ〜パオ!ジャ〜パオ!だよ」と言いながらハチマキを配っていたらあっという間に在庫切れ。ハチマキは全部で40本持って来て今日は初戦だから20本持って来た。もっと持ってくればよかったかなぁ。でもあんまり大安売りみたいにばらまくのもなんか有り難みがないので、このくらいでいいか。

ひろがるハチマキ ハチマキ一家ハチマキこうするふつう男には結ばないんだぞレシフェ係の人とオバカナ、ジャパオ、デスネレシフェの検問ペットボトルアカンヨ、ジョーシキヨ

列に並んでいたら知らない人から「中村さんですよね」と声をかけられた。「日の丸ハチマキやられているんですよね、facebookで見ました」と。ボクは初対面だったが同じ広告業界のディレクターの方だった。世界中からサッカーバカが集る、こんな日本の裏側でバッタリ会うことってあるもんなんだなぁ。上の4点の写真はその金子陽太さんが撮ってくれたものです。

■待ち合わせ
セキュリティを突破しても今日の大仕事が待っている。ちびろチェルシーさんと待ち合わせして別のチケットを受け取ること。現地で使えるWiFiの準備をしなかったことが悔やまれる。ちびろチェルシーさんというのは、一度会っただけの女性。ご夫婦で早くからブラジル入りされていて、ボクの友だちが取ってくれたチケットなどを現地発券してくれて、そのボクの分の2枚を受け取る約束になっていた。イタリアvsコスタリカとマラカナンでのラウンド16の試合。ゲートKの入り口で待ち合わせ。お互い何時にスタジアムに到着するか読めないので、20時と20時半と2度待ち合わせをすることにする。もしそこで会えなかったら、お互いの座席番号はわかっているので、中でなんとか会えないか、トライしてみることにして。

ちびろチェルシーさんとお会いしたのはW杯直前のアシシさん主催のブラジルW杯現地参戦組決起集会だった。とても美しい女性だったのでたぶんスタジアムで見かけたらすぐわかると思っていた。ボクはといえば、たぶんみんな日本のユニフォームを着た人ばかりだろうから「ブラジル国旗を纏って行きます」と伝えてあった。喉が渇いてきたのでコカコーラを買って飲んだ。後日気がついたのだが、会場で売られているコカコーラやBRAHMA(ブラーマ)というビールのコップにはその試合の対戦相手の名前と日付が入っている。みんな記念に持って帰っていた。ボクは最初それを知らずに「コートジボワールvs日本」のカップを捨ててしまった。あーもったいない。そのときはそんな表示に気づく余裕はなかった。ちびろチェルシーさんだけを探していた。

■会えた!
薄暗い場所だったせいもあってか、あれ?そうかな?そうだよな?と思いながら近づいて行った。ちびろチェルシーさんは最初ボクに気づかなかったそうだ。考えてみれば、ハチマキ巻いてバカ殿のちょんまげをしてブラジル国旗巻いたヘンなオッチャンだ。「中村です!」と言って気づいてもらえた。うれしかったぁー。ケータイのある生活が当たり前になった時代に、昔のオールドスタイルの待ち合わせ。このドキドキ感がなつかしかった。唯一後悔しているのは、あまりにうれしくて興奮して、記念写真を撮ることをすっかり忘れていたことだった。

レシフェアップ試合後にこの写真を見ると、なんか覇気がないようにも見える選手たち

■着席
Category2 GATE I LEVEL1  BLOCK114  ROW R  SEAT 005
これがボクの席だ。LEVEL1だからピッチから近いぞ。目の前で代表がアップを始めた。1998年フランス、トゥールーズ競技場に初めてワールドカップの日本戦を見に行ったあの日を思い出した。あの時は目の前のゴールに川口能活がいたなぁ。代表チームは先発組と控え組で別れてアップをする。こっちは長友や本田、がいるからこっちが先発組だ。遠藤がいないな、大迫の1トップか。試合前、スコールのような雨が降って来た。こんなに雨が降っているのに、ピッチのスプリンクラーで散水している。なんでやねん。

ヨシオとピッチも写そうとするとどうしてもこうなる ヨシーマンと逆光

■待ち合わせその2
会えた!その2だ。フットボールチーム、FCバッカーノの仲間であり同じ会社にも勤めるヨシーマン(中村嘉夫くん)に会えた。ボクの座席番号を知らせていたので席まで来てくれた。ゲートの入り口では厳しくチェックされるが、入ってしまえば中の移動は自由だった。席が空いていれば前の方に行くこともできる。「タダシさん、ずっと席で待っていたんですよ」という。実はボクが自分の席を間違えていてひとつ隣りのBLOCKの同じ番号の席に座っていたのだった。お恥ずかしい。ヨシーマンという男もサッカー好きでヨーロッパサッカー(とくにイタリア)をよく現地まで見に行く強者。今回も一人で行動して何試合も見るらしい。同じ日に成田を出発し、彼はエミレーツでリオデジャネイロへ。ボクはエティハドでサンパウロ、ナタル。それがこのレシフェ・ペルナンブッコで再会。日本の真裏で再会。なんかすごくない? 試合の後はまたお互い別の道を行く。なんか切ないなぁ。

■試合前
君が代を録画した。フランス98の君が代は泣いた。ブラジル2014ではしみじみ聞いた。最後でやっぱりうるっときた。

■試合
(省略します。別立てで書くかも)

■試合後
14日23時45分試合終了。負けた試合はとっとと帰る。待ち合わせの場所に向かう。しゃべることもない。本降りになった雨の中代表のカッパを着てゾロゾロ歩き始める。途中でセルジオ越後さんがテレビの取材を受けていた。何を言っているんだろう、だいたい想像はつくが、もうどうでもいい。さっき歩いて来た道を戻る。来たときより道がぬかるんできた。シューズの中も濡れてきた。黙って歩く。最初の集合場所に着くも、連絡が入ったようで、バスが違う場所にいるというのでまた移動することに。「そういう連絡は早めに言えよ」という気力もなく、雨の中をゾロゾロ。はぐれないようにゾロゾロ。結局今来た道を戻ってシャトルバスに乗り、バスの駐車場に行くことに。同じバスに乗っていた人とはぐれないように、暗い道をゾロゾロ、雨の中をゾロゾロ、クツの中はジュクジュク。バスに乗れたのは1時半くらいだっただろうか。

■呪われた2号車
たぶんブログに書くだろうと思ったから、時間経過をメモしていた。そのメモによると、
・23時45分試合終了
・0時15分頃スタジアム外で集合〜雨の中をゾロゾロ
・1時半頃バスのところへ到着
・2時頃 バスがレシフェを出発
・朝6時半頃 ナタルまで後少しという高速道路でバス故障
・朝8時すぎ お迎えバスに歓声
・9時半ホテル到着

止まった2号車故障で止まっていると能天気な色に見えるブラジルカラー

バスで寝ていて目が覚めるときって、だいたいバスが止まったときなんだなと今回気づいた。目が覚めると雨の中バスが止まっていた。ここはどこだ?休憩でもするのか?と思ったらそうじゃないらしい。ビュンビュン他のクルマが別の車線を走っている。中央分離帯の向こうは反対車線のクルマが走っている。上を見るとなにやら大きな道路標識が見える。ここは高速道路じゃないか? ボクの席は左側の後方だった。窓の下にカラフルな傘が見える。バスの横っ腹の戸が開けられている。なに?荷物でも出すの?まさか、故障?

バスと傘窓の下でもめている

はい、故障でした。しかも完全な故障。修理不能です。ブレーキ系の故障だそうです。別のバスはナタルの空港へ向かっていてそのバスが人を降ろしてからここに向かうか、ホテルに着いたバスがここに戻って来てくれるか、とにかく待つしかないという状況。なんだよブレーキ故障で動かない?ブレーキ故障でよくこの高速道路の路側帯で止まれたもんだ。いい方に考えれば、大事故にならずにすんでラッキーだったとも言える。そうだ、そう考えよう。怒ったところでホテルに帰れる時間は変らない。ここはただ笑い話にするしかない、と思った。(思い返せば、ファベーラの子どもサッカーに行く道を迷って余計な遠回りをしたことも、このブレーキトラブルの原因なんじゃねえか?と正直疑いたくもなった)

バスの雨宿り笑うしかない雨宿り

1時間以上止まっていると車内が暑くなって来た。「エアコン入れてくださ〜い」というと「エンジンもかからなくなってダメなんで〜す」という返事。そこまで壊れてるのか・・・。デカいバスの後方座席は空気が悪くなって来た。息苦しい。ちょっと外に出ましょうか。うしろのエンジンルームの開けたハッチで雨宿りしながら笑うしかなかった。その時だ。反対車線をこの2号車と同じカラーリングのバスが通るのが見えた。迎えが来たッ。大拍手、大歓声。昨日の本田のゴール以来の大歓声だった。

■15日午前9時30分ホテル到着
試合が終わったのが昨日の23時45分。ホテル到着が翌朝9時30分。どんだけ遠いんじゃ、レシフェ〜ナタル。ホテルの朝食が始まっていて、そこでとりあえず栄養補給。うまかったなぁ。何時間ぶりのちゃんとした食事だろう。あたたかいスクランブルエッグ、あたたかいソーセージ、あたたかいコーヒー。沁みた。そしていよいよ、何よりの楽しみ、やっとベッドに横になって眠れる。それがうれしかった。6月15日午前10時30分(日本時間15日22時30分) 四つ星ホテルVila do Mar 105号室。チェックインしたのは昨日の朝だっけ? 気を失いそうなカンジでベッドに沈んだ(んじゃないかと思う)ちょっと寝ます。

試合にも負けて、雨の中をゾロゾロ歩かされ、おまけにバスまで故障する。これがアウェイの洗礼か。いや、ただの整備不良じゃねえか。ちゃんと整備しとけよ、まったく。でもなぁ、そういうことが起こるのがこの国の「フツウ」なのかもしれないなぁ。だってブラジルなんだもの(つづく)


だってブラジルなんだもの⑨レシフェの雨」への3件のフィードバック

  1. ピンバック: だってブラジルなんだもの●総合目次 | ぶ厚い手帳:コピーライター中村禎の場合

  2. ピンバック: きょ年の6月14日のこと◎BRASIL 2014 | ぶ厚い手帳:コピーライター中村禎の場合

  3. ピンバック: きょ年の6月15日のこと◎BRASIL 2014 | ぶ厚い手帳:コピーライター中村禎の場合

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です