チョン・テセ選手の涙

テセ登壇

第2回アジアサッカーマネジメントセミナー「2014FIFAワールドカップブラジル後のアジアサッカー界の動向」というセミナーに出席しました。その中で、チョン・テセ選手の話が聞けました。
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「日本・韓国・北朝鮮、3つのアイデンティティーを持って見つめるアジアサッカー」
水原三星ブルーウィングス所属
鄭 大世(チョン・テセ)
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チョン・テセ選手は日本で生まれて日本で育ちました。朝鮮学校でサッカーを始めたそうです。ボクも中学生の頃、九州の福岡県のサッカー部で、ときどき地元北九州にあった朝鮮学校と練習試合をすることがありました。メチャメチャ怖かった。いろんな人に「朝鮮学校は怖いことするぞ」と脅されていたのです。でも終わってみたら、特に汚いファウルとかはなくて、フェアな試合でした。(でも怖かったけど)ま、そうやって、草の根から日本の朝鮮学校でサッカー選手になったテセ選手。

川崎フロンターレにいた頃のチョン・テセ選手のことは好きでした。強引なFW。相手が何人来ようがなぎ倒してでもゴールを決める、というあの気迫が好きでした。そして、北朝鮮代表の国歌のとき。テレビカメラなんか気にせず号泣していた姿に感動しました。その姿で一気にファンになりました。しかし、今日、そのときの、実はそうじゃなかったという「裏話」が聞けたのです。

テセ涙

【涙のわけ】
最初の涙は、初めて北朝鮮代表に選ばれた2008年の試合。相手は日本代表です。選手が並んで国歌を聞きます。その時、チョン・テセ選手は泣いていました。その映像はテレビに大きく映しだされました。初めて北朝鮮代表に選ばれて北朝鮮の国歌を聴いて涙が出たのだろうとテレビを見た人全員が思ったはずです。でも、事実は違いました。言われてみれば、チョン・テセ選手は北朝鮮国歌になる前から泣いていた。そこに北朝鮮代表として立つことで感無量だったのだろう、と思っていました。ところが…

日本で生まれて日本のJリーグで育ってきたテセ選手。だから、北朝鮮代表の前の、日本代表の「君が代」を聞いて泣いていたんだそうですw。「君が代」に感動して。テセ選手はこどもの頃から「君が代」を聴いていた。その曲が流れてきて思わず泣いてしまった、というのが真相なんだそうです。それを今語ってくれるテセ選手も、いーじゃあーりませんか。北朝鮮のチームメイトに「おまえ、日本の国歌で泣いてただろ!」と怒られたとも言ってました。

しかし’、2010年の南アフリカW杯の試合前の国歌での涙(写真上)は、ホント涙のだそうです。北朝鮮代表としてワールドカップの舞台に立てた感動、しかも相手はブラジル代表だという感動。テセ選手は泣いているのに、エスコートキッズがあくびしているというこの写真に何度も突っ込みを入れられたそうです。

【ビフテキとミニハンバーグ】
欧州サッカーの話もしてくれました。テセ選手がドイツ・ブンデスリーガの2部ボーフムに所属していた当時、日本代表選手が大勢ドイツに行っていて(今もそうですが)よく向こうのみんなで会って話したそうです。

「欧州の選手はスライディング・タックルがうまい。深い」とみんなも感じていたそうです。これは、こどもの頃の環境の違いだとテセ選手は言っていました。日本のこどもたちのグラウンドは土、砂です。スライディングしたら太ももの外側は擦りむいてカサブタ。(テセ選手はそのカサブタを「ビフテキ」と言っていたそうです。それぐらいでかかったのでしょう。ボクらのカサブタはせいぜい「ミニハンバーグ」くらいでした)欧州のこどもたちは芝生だからスライディングしても「ビフテキ」はできない。だから思い切り滑れる。遠くからでも滑れる。だから欧州の選手は守備範囲が広いんだそうです。たしかに、こどもの頃、そこまでして滑りませんでした。環境って大事なんですね、こどもの頃の。

テセ・ウッチー

【ぶれないメンタリティ】
「欧州で成功する秘訣はありますか?」というテセ選手への質問。その答えが「さすが」だと思いました。
●海外に行く選手は、何かしら自国リーグで認められた得意技があるはず。それがあるから海外のチームが誘う
●海外に行くと→言葉が通じない→生活環境が違う→サッカーも思い通りにいかない→相手に合わせようとする→自分の弱点を補強しようと焦る→自分のストロングポイントを忘れてしまう→結局、うまくいかない
●だから、自分の武器は何かをしっかり捉え、その武器を磨き続けるぶれないメンタリティが大事だと思う
とテセ選手は言っていました。それが一番あるのがシャルケ01の内田篤人選手だとも言っていました。

人(特に日本人)(ボクもそう)は、うまくいかないと弱気になる→自分が相手に合わせなきゃと反省する→弱点を直そうとする→自分の強みを忘れてしまう→結局、自分を出せないまま終わるという悪循環

これは、チョン・テセ選手から聞いたサッカー選手の話だけれど、どんな仕事の人にもあてはまる部分があると思いました。だからメモしたんですけどね。やっぱり、どんな職業でも、必死でやっている人の言葉にはヒントがいっぱいあるなぁと思いました。


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