出口治明さんのお話②

「働き方」の教科書

「働き方」の教科書
ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEO出口治明さんのお話を聞く機会がありました。「働き方」の教科書という著書(新潮社)を読んだばかりなんですが、お会いできて声を聞けて感激です。だって、出口さんの声、話し方、顔を思い出しながらもう一度その本を読めるんですから。メモした言葉を整理します。いい話満載なので2回に分けて。
出口治明さんのお話①
————————————————
■ダイバーシティの意味(その1)
たくさん人に会う、たくさん本を読む、いろんな場所に行く。勉強するにはこれしかないと思っています。人と違うことをする、イノベーションを起こすためには勉強しかないと思います。でも人間は怠け者ですから、勉強をサボりたがる。そのとき、どうするか・・・。1人では勉強できないから、多様な人のグループに入る、集合をつくる、勉強会に行く。チカラを借りるわけです。ここにダイバーシティ(多様性)の本当の意味があります。①人と違うことを考える→②勉強しかない→③1人じゃしんどい→④多様な人と会う→⑤アイデアが出やすい。(→はい、そう思います。だからボクは「アイベヤ」や「アイベヤ別館」や「電通途中入社の会」などのグループに参加します。もっともっと活性させたいです。禎)

■ダイバーシティの意味(その2)
大企業のボードメンバーを見るとだいたい50〜60代のオジサンですよね。一人一人は立派な人なんですけど、その企業の生え抜きが多いですよね。昔の課長と係長がそのまま役員になってます。昔の課長と係長は一緒に仕事していましたよね。その人たちはたぶん、会った人も同じ、読んだ本も同じ、行った場所も同じ。ということは、考えることもだいたい同じですよね。グローバル企業は女性の外国人がいたり、出身が違う畑の人がいたりしますよね。会った人も、読んだ本も、行った場所もたぶん様々でしょう。どうでしょう?そのほうが、あの『ベジソバ』が生まれやすいとは思いませんか? ダイバーシティ(多様性)の本当の意味とはこういうことなんです。(←なるほど。まあ、ボクは電通のボードメンバーには入らないし、入れないけど、経営陣の顔ぶれを見ればその企業が成長しそうかどうか、わかるってことだな。禎)

■4+5=9、じゃないという話
夕方の4時に上司から5時間かかる仕事を頼まれたとします。4時から5時間だから9時に終わる。それまで残業すれば褒められる。そう考えてはダメなんです。不真面目な人はサボりたい、ラクしたいと考えます。そういう気持ちがイノベーションの引き金になるのです。4時に5時間かかる仕事を頼まれた。7時から飲み会がある、デートがある、なんとしてでも行きたい。だから、どうにかして3時間で終わるように必死で考える、工夫をする。それがイノベーションを生むのです。(→そう思います。「残業代」というシステムは、仕事が遅い人ほど儲かるシステムです。お金はたくさんもらえますが、効率が悪く、内容も薄まる気がします。早くいい企画ができた人より、なかなかできない人のほうが儲かる、というのはオカシイですもん。禎)

■本から学ぶ
(ここの話をされる時間はなかったのですが、レジュメに気になる言葉が書いてあったので記します)『古典を読んで分からなければ、自分がアホだと思いなさい。新著を読んで分からなければ、著者をアホだと思いなさい』(恩師の言葉) 昔の人の言ったことは正しいんです。正しいから、ずっと残っている。アホなことは残っていませんから。たとえば本屋に行くとたくさん本がありますよね。あれ、「とんでも本(←とんでもない本)」ばかりですよ。だって、「英語がすぐ話せるようになる」なんて書いた本がたくさんあるでしょう。その本が売れても日本人はいまだに英語しゃべれませんよね。そんな簡単なもんじゃないですよね。Googleで調べればわかることですが、10年前20年前のベストセラーだった本は、今はもう売っていない。だけど「とんでも本」は売れるんですよね。(←出口さんは「歴史から学べ」とおっしゃっていた。どんな本を読め、という話はレジュメにはあったけど、深い話にまでいく時間がなかった。ぜひその辺をお聞きしたかった。禎)

■人を使うということ
仕事というのは基本ひとりじゃできませんよね。どんなときに人は喜んで働くのかというと、①その仕事が楽しいとき→つまり、職場を楽しい雰囲気にすること。 ②得意なことをやらせてもらえること→つまり、時間をかけてその人を知り、その人の得意なことを見極めてやること。 ③チャレンジさせてもらえるとき→つまり、部下が「あんなことやってみたい」と言っていたことを憶えていて、それをチャレンジさせてみること。野球のピンチヒッターを送りだす監督のようなものです。「ここはお前しかいない」と送りだす。人を使うということは、そういうことだと思います。(→ついつい自分でやっちゃうんです。人を使う、というの、自分は下手だなぁと思っています。使われる方がラクなんですよね。だけど、人を使ってもっと大きい仕事にしないといけないんだろうな。禎)

■リーダーの条件
リーダーに大事なことは三つあると思います。1:自分にはやりたいことがあるんだ、ということ。『これをやりたい!』『こっちの方向へ行きたい!』という強い意思。(←それがディレクションをするということですね。禎) 2:共感力。その思いを共感させる力。3:コミュニケーション力。統率力と言ってもいい。仕事をしているといい時ばかりではない。雨の日もある。そのとき、落伍者になりそうな部下を救うことが大事です。引っ張る力です。リーダーの心得として、『三つの鏡を持て』という教えがあります。私は手鏡もって歩いていないんですけどね。トイレの鏡なんかで見ればいいんですけど。リーダーはいつも楽しそうにしてなきゃアカン→自分の顔を常に見ることです。リーダーがため息ばかりついていてどーする!って話です。若いヤツがついてくるわけがない。歴史を勉強せよ→今の時代、将来がどうなるか見えにくい。教材は過去にしかないんです。たとえば、リーマンショックがまた来るかもしれない。来ないかもしれない。そのとき、リーマンショックのことを勉強している企業としてない企業、どっちが強いか。どっちが生き残るか。わかりますよね。自分のことをボロクソに言ってくれる人をそばにおく→王様は裸だと言ってくれる人です。(→①は大島征夫さんのことを思い出しました。大島さんが、そうでしたわ。確かに。②はそうですね。ビジネスマンがみんな戦国武将の話を読んでいることには抵抗がありましたが。勉強という意味での歴史、かぁ。③は完全同意。「さすが社長!」という人間ばかりで周りを固めた会社はたぶんダメですもんね。上司に「それは違うと思います」と言って嫌われてもいいと思います。それを嫌うような器の小さい上司からは離れたほうがいいと思うから。禎)

■人を育てる
CITIグループの親分、ジョン・リードさんのお話です。企業のトップと従業員は違う、ということ。名選手が必ずしも名監督ではないのと同じです。ではどうするか。ある幹部候補の社員がいたとします。その社員を幹部にする前に子会社の社長をやらせるというのです。1軍の監督の前に、2軍や3軍の監督からやらせてみる。やらせてみて、本体の幹部に登用する。日本の企業はどうですか。社長争い、出世争いに負けた人を子会社の社長に回していることが多くないですか? やらせてみるしか人は育たないない、ということです。(→たしかに。サッカーチームの監督も下部組織の監督から上がってきた人のほうが経験がぶ厚い。禎)

■ライフワークバランス
1年は8760時間ですね。そのうち働いている時間は残業とかも入れてもせいぜい2000時間です。7:3で働いていない時間のほうが多いわけです。だから私は仕事以外の時間を大事にしたほうがいいと思っているんです。仕事はどーでもいいんです。どーでもいい、くらいに思っているほうが、仕事の時に思い切った決断ができる。「仕事がすべてだ」と考える人は失敗が許されないわけですから、なかなか決断ができない。ライフとワーク、ライフのほうが7:3で多いわけですから、私は「ワークライフバランス」ではなく「ライフワークバランス」と呼ぶんです。このバランスは何対何でもいいんです。自分は何対何かを考えてみることが大事で、意味のあることなんです。(→たしかに「仕事」に人生の重心を置き過ぎていると、決断が慎重になり過ぎて判断が遅くなる。自分の人生の時間配分から優先順位を決めていく。大事なことなんだな。禎)

■50才は折り返し
人生80年といいますよね。じゃあ半分は40才じゃないかとお思いでしょうが、20才までは人間じゃないんですね。親に育ててもらっていたわけですから、働いていない。人間は20才から始まるんです。となると、20才から80才までの60年。半分は30年。つまり50才が折り返し地点なんです。マラソンは半分走れば帰り道はラクですよね。だってもう道を知っているから。50才を過ぎたらリスクはコストになるという話をします。清水(寺)の舞台から飛び降りるのが怖いのは、下が見えないからですよね。でも下まで1mだと分かれば怖くないし、5mだと分かればヒモを使って・・・などと対策が取れますよね。50才になるといろんなことがわかる。いろんな経験をしてわかったことが増える。わかるということは、リスクはコストに変わる、ということです。例:自分のこどもをプロのピアニストにしたいと思う。そのためにはウイーンの学校に留学させなきゃいけない。ニューヨークの学校の方がいいのかもしれない。お金がいくらかかるかわかりませんよね。ピアニストになれるかどうかもわからないんですし。ところが、普通の子を大学に行かせるとします。すると、学費と生活費は計算できる。それがわかると「怖さ」がなくなる。20代、30代で独立・起業するより、50代で独立・起業するほうがずっといいんです。経験もある、人脈もある、お金の借り方も知っている。リスクが計算できればそれはコストにできるんです。(→勇気いただきました。禎)

■置かれた場所で咲く
人生で何が大事かというと、私は死ぬときに後悔したくないんですね。やりたいことは、ちょっとでもやってみたほうがいい。やってみる人生、がいいと思うんです。よく「がんばれば何でもできるんだ!」という人がいますが、あれウソですよね。がんばって何でもできる人生なんてカンタンな人生ですよね。大事なのは、がんばってもできないこともあることを理解することだと思います。その場所で咲けなかったら、咲ける場所を探せばいい。別の場所を探して、そこで咲けばいいと思うんです。(→ちょっとラクになりました。禎)

■すいません、時間配分を間違えてしまいました
緊張してしまって、時間配分を間違えてしまいました。もっと話したいことはいっぱいあったんですけど、ごめんなさい。最後にもう一度言いますけど、「人」「本」「旅」が大事です、と言いました。いつも、YESと言うことです。面白いと思ったら、会ってみる、読んでみる、行ってみる。つまらなければ帰ってくればいい。食わず嫌いほどモッタイナイものはないです。人生、縁があれば「YES」と言う。それが人生を豊かにすると思います。本日はありがとうございました。(←「YES」ですね。ありがとうございました。禎)

出口治明さんのお話①


出口治明さんのお話②」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 出口治明さんのお話① | ぶ厚い手帳:コピーライター中村禎の場合

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です