危険な犬種という誤解・スタッフィ(ロージー)⑤


檻の中ロージー【今回の主人公】イギリスの捨て犬保護施設にはスタッフィ(ピットブルの一種)が多い。今回は3回里親の元から戻されてきた3才メスのスタッフィ。他の犬にも攻撃的で自己主張が強く、行きたい方向へ力ずくで引っ張る。飼い主が従わないとしゃがみ込んで動こうとしない。
しゃがみ込んで

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シーザー・ミラン LEADER OF THE PACK
動物保護施設に収容されている、問題行動を起こす犬はなかなか新しい飼い主が見つからない。その犬のリハビリをしながら、新しい里親をトレーニングする。ナショナルジオグラフィックTVの ザ・カリスマドッグトレーナー、シーザー・ミランの番組。その中の言葉をメモすることにします。いつか犬と暮らす日のために。
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いつものように、クルマのケージに入れられてドッグサイコロジーセンターのシーザーの元にやって来る。ケージから出してリードを付けようとするとケージから飛び出そうとする。スタッフィという犬種(ピットブルの一種)は『危険な犬種』と誤解されても、幸せになる権利はある、とシーザーが証明します。

「まずは力を発散させて落ち着かせてやります。これで引っ張らなくなる」

■ここでロージーの飼育係が「ロージ〜♡」と猫なで声のような優しい呼び方で声をかけるとシーザーが注意します。

「招き方(呼び方)も重要なんです。その優しい呼び方は、動物の世界では弱いエネルギーです。群れを統率する者には毅然とした態度が必要なのです」

(←赤ちゃんをなだめるように「なんとかちゃ〜ん」と呼ぶのは犬からしたら「こいつは私のリーダーではないな」と思われているのだろう。呼び方にも毅然とした態度は必要なんだな、と思った。禎)

■飼育係がロージーを引こうとすると、抵抗して座り込んでしまう。

「コツがあります。頭を動かしてやるんです。アゴを上げると身体が自然と前に出る。前に出た瞬間に、リードを持つ力を緩める。そうすると犬は『この男に従うしかないな』と思うのです。人間を引っ張る癖は直さなきゃダメだぞと」

よく犬に引っ張られながら散歩している人を見ますが、あれは犬が元気でしかたがないのではなく、犬が飼い主のことをボスだと認めていない証拠なのです。

■スタッフィ(ピットブルの一種)、この犬種は危険だとよく勘違いされます。しかし危険なのは知識のない人間や心なき人間なのです。ロージーは人が創った闘犬ですが、その前に一匹の犬です。群れに順応する能力を持っている。牙をむき出すこと以外のストレス解消法を教えてあげないといけません。ほんとうは、遊びたいんです。(←オモチャを投げて遊ばせるとうれしそうに走り回っていた。禎)

タッチで警告■次はロージーがオモチャに飛びつくのを止めさせます。オモチャを持ったシーザーに飛びかかろうとしたら、(例の)タッチです。『Shuitt!』という声とともに腰辺りをタッチ(手で突く)して警告します。オモチャを持ったシーザーの前で座って待ったら、オモチャを与える。つまり、落ち着かせてからご褒美をあげる。
(←興奮したままだとオモチャはもらえない。落ち着いて座るとオモチャがもらえる、ということを学習させるわけですね。禎)

■次はフェンスに沿ってロージーを歩かせます(フェンスの中には他の犬たちがいます)リードを付けてほかの犬が吠える中を歩くんです。ほかの犬に攻撃的というロージーはどう反応するでしょう。

キック1 ウウウゥ〜キック2 これがシーザー得意のバックサイド・ヒールキック 犬は不意を突かれ興奮状態から我に返る

ロージーがフェンスに向かっていき中の犬に威圧的な態度をとろうとしたその瞬間、いつものシーザーの『バックサイド・ヒールキック』が入ります。ロージーは「ん?何?」と我に帰ります。タッチは感情を切り替えます。そういうときにやりがちなのが「止めなさい!」とリードを引こうとすること。犬は首を引っ張られても感じない(ダメ!というサインだとは思っていない)だから首ではなく胴にタッチして警告します。

「ロージーの攻撃性を懸念していましたが、至って穏やかでした。それは、リードを引いて歩くとき、ロージーに集中しすぎず、毅然と歩いていたのがよかった。リードから飼い主の緊張が犬に伝わりますからね」

「ドアから出るのは絶対に人間が先です。犬を先に出してはいけません」
(←これは前回にも言っていた。飼い主に従うことをちゃんと教えることが大事だということなんだろう。禎)

「ロージーは私が思い描くスタッフィそのものです。心優しい犬です。屈強な犬であるほど、穏やかな心を持っているのです」

複数の家庭で過ごした犬は分離不安症に陥ることもある。ロージーは3つの家庭から手に負えないと戻された過去がある。

「人間が犬と関わるには、まず扱い方を知ること。犬種を気にするのはその後です。里親になる上で必要なのは、犬と信頼関係を築くことです。そこに忠誠心が生まれる。ロージーから信頼と尊敬を得てください」

「アメリカの施設にはピットブルが多く、イギリスにはスタッフィが多い。サイズは違っても悪い評判は同じです。犬種を聞いたとたんに動揺する人がほとんどだ。問題は犬種ではなく飼い主なんだと教える必要があるのです」(←ボク自身もピットブル系は気性が激しい、言うこと聞かないイメージがありました。禎)

■飼い主候補のひとりがフェンスの中のロージーに対面しリードをかける・・・リードをかけようとしたとき、「待って」とシーザーが止めた。

「頭は下がっていても尻尾を振っているときは、リードをつけません。喜んで見えますがあれは興奮のサインです。外に出る前から興奮させてはいけない。落ち着かせ、犬が従順になったら、犬があなたを信頼し、尊敬している印です」

ロージーは遊びの最中にとくに興奮するため(犬はみんなそうだよなぁ。禎)飼い主は対処法を学ぶ必要があります。ホースで水を巻き興奮させる。ロージーは狂ったように喜んでホースの水を飲みながら浴びながらジャンプしている。

興奮しているときはエサは認識しません。眼中にない。だからエサで気を引くことは不可能です。短いリードをつけ、水から少し離して「タッチ」します。何度も「Shuitt!」と言ってタッチします。遊ぶにも限度があると犬に知らせなければなりません。何度もタッチして警告しつづける。頭が下がってきたら興奮が冷めてきたということ。無理に水から遠ざけるのではなく、水から助け出す感覚です。乱暴はしない。
(←リードをつけて無理矢理引いてもダメだということですね。さっきのフェンスの中の犬を威嚇したときのような「不意打ち的タッチ」が有効なのでしょう。禎)

■犬との初対面

「初めて犬と接するときのルールは、①触らず、②話さず、③目を見ない」

「No Touch!  No Talk!  No Eye Contact!」

初対面のときは目を合わせちゃダメなんです。まず、しゃがんで匂いを嗅がせましょう。(←よく街で「可愛いですね」と犬に寄っていくけど、犬を怖がらせないよう人間の目の位置を近くするためにしゃがむほうがいいことは聞いていた。でも本当は触ったり声をかけたり目を見たりしてはいけないんだ。まず匂いを嗅がせて安心させてから、なんだろうな。禎)

■犬を飼う上で知るべきは、エネルギーについてです。これを学べば自分で犬が選べる。動物に過去や未来はありません。その瞬間を生きる。子どもと同じです。子どもを正しい方向へ導き、守ることが親の役目です。でも時にこんなケースもある。愛情を与えるだけで、指導と保護を怠る。すると主導権は子どもに握られます。不自然な関係です。犬を飼育する上では、規律と愛情と運動が大事です。

ダメと前へ 「ダメ!」というときは一歩前に出る 強くなくても「意思」を示すことが大事

■初めて犬を飼う人が、犬の群れと接することは最高の経験になるんですよ。犬について学べます。群れの言いなりになることはないんです。群れに「ここは自分の領域なんだ」と主張していいんです。何かを拒否するとき、友だちに何ていいますか?「ダメ!」といいますね。そのとき犬に向かって一歩前に出ながら「ダメ!」と言うことが大事です。後ろに下がったら、犬を呼び寄せてしまう。こっちへどうぞ、の意味になってしまう。後ろに下がりながらの「ダメ」は、ただじゃれているだけです。そして「ダメ!」に感情を込めてください。(飼い主候補の子どもに犬が飛びついてくる。子どもは小さいから下がりながら「ダメ!」と言うしかなかった。でもそこで一歩前にでて、犬を押しのけてでも「ダメ!」ということが大事。そうしないと犬は理解できないから)

犬の群れと接することで新しい世界が開けます。犬種が何かなんて気にならなくなる。群れと接するときに不安がないから1匹と接するときも怖がる必要がなくなる。

■興奮状態のときにはエサを与えない。興奮したら「Shuitt!」耳が後ろにいったら落ち着いた証拠です。地面や子どもの手にある食べ物に敬意を示させることが大事です。

■散歩中に起こり得る混乱を想定してみましょう。ロージーを連れてほかの犬のそばを歩きます。目標はロージーを興奮させないこと。周りがどんなに興奮していてもね。

しゃがみ込んで歩かない場合は、リードをアゴの下に回して上げる。そうすると立ち上がる。自分の横か後ろを歩かせる。地面に鼻をつけさせない。そうすれば支配権を握れます。(←「地面に鼻をつけさせない」ためにはどうすればいいのかは、よくわからなかった。禎)

「犬への毅然とした態度は人の自信を育てます。犬に主導権を握られたら、リーダーにはなれません」

周りの犬が吠えて混乱してても、人が主導権を握っていれば犬は惑わされません。だから冷静で落ち着いていられる。

さあロージー さあロージー
約束通り 約束どおり見つけたぞ もう柵からでられるんだぞ
新しい家だ 新しい家だ

■里親に決まった家族に対してシーザーの言葉:
後は学んだことをいかに続けるかです。毅然とした態度を貫き、根気よく接してください。責任を持って犬と暮らす。これと同じことが夫や父親にもあてはまる。子どもを落ち着かせるのは穏やかな父親です。指導は毅然と行う。一緒にいて楽しいだけじゃない。犬は家族や友人との関わり方まで教えてくれるのです。
(そしてシーザーはロージーのリードから手を離す。だけどロージーはその里親家族の足元にじっといる)・・・これが信頼です。

待て 歯をむき出して威嚇していたあのロージーがエサを前に「待て」ができているという感動

(←檻の中で吠えまくっていたスタッフィのロージーがこんなに従順になる。凶暴な犬は不安なんだ。その不安を取り除いてあげて、信頼できる、安心できる飼い主のもとで暮らせるなら、犬は穏やかに暮らせるんだ。同じ犬とは思えないほどの変わり様だった。禎)

 

 

 

 

 


危険な犬種という誤解・スタッフィ(ロージー)⑤」への3件のフィードバック

  1. 我が家にはラブラドールとフレンチブルのミックス犬がいます。時々スタッフィ~ですか?と聞かれます。かわいい犬です(^^)v

  2. ピンバック: 犬の攻撃性は後天的なもの・ピットブル(ロキシー)⑥ | ぶ厚い手帳:コピーライター中村禎の場合

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