長友さんと一緒に【稀代】⑨KOMATSU BAR

長友さんはいつもニコニコ。だけど、こんなに笑った長友さん、見たことないでしょ?時々、声が出なくなるほど笑う時がありました。ホントにお腹、痛そうでした。
クリネタ32号 Photo by 木内和美

「稀代」(けったい)とは、なんだ?クリネタおススメの、いい店、おもろい店
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KOMATSU RESTAURANT & BAR
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ホテルの匂い
そのBARに入ると、なんだか昔、来たことのあるような不思議な気がした。でも住所を調べて初めて来たのだから、そんなはずはない。銀座のど真ん中、ギンザコマツビルの西館7階にあるレストラン&バー、KOMATSU。オーナーの小坂敬さんと長友編集長が旧知の仲で、今回の「稀代(ケッタイ)」の取材を受けていただけることになったのだった。

広いバーカウンターと、何席かソファの席がある。バーカウンターとソファの席・・・。そうだ、昔のパレスホテルのBARもそんな感じだった記憶が。ホテルのBARには、なんというか独特の居心地の良さがあるように思う。宿泊客、とくに長期滞在のお客様がくつろげそうな、オーセンティックなんだけどホッとする、友だちのお宅の応接間にでも通されたような安心感があったりする。

このレストラン&バーKOMATSUは、オーナーの小坂さんがどうしてもつくりたくてつくったBARだそうだ。ソファ席の奥に、大きな柱時計が置いてある。実に堂々としている。しみじみ眺めていると「それ、フェアモントホテルにあった柱時計なんですよ」と店長の大島亜希子さんが教えてくれた。東京千鳥ヶ淵にあった、春には皇居の見事なサクラを見せてくれたフェアモントホテル。小坂敬さんはフェアモントホテルの経営者でもあったそうだ。バーカウンター→ソファ→パレスホテルのBAR→フェアモントホテル・・・昔来たような不思議な気がしたのも、まんざら偶然でもなさそうだ。


開店時間は16時。BARにしては早いほうだと思うが、そこは銀座。残業なんて野暮なことをしない大人たちが集まる時間。開店とほぼ同時に、上品そうなご夫人二人連れのお客様がご来店。ソファの席へ。「何になさいますか?」と大島さん。すると、そのご夫人は「泡、ちょうだい」とおっしゃる。「泡」とはシャンパンのこと。

広告業界のグルメで知られたプロデューサーもよく使う言葉だった。その、ある種、業界用語的な言葉を、上品な銀座のマダムの口から聴けて、なんだかうれしくなった。「泡って、みなさん、よく使う言葉なんですか?」と尋ねると、「ええ、泡とかシュワシュワくださいとか注文されるかたもいらっしゃいますよ」と大島さんが笑った。シャンパンください、より、泡ください、のほうが粋だ。しかし、ビールを泡とは言わないんだなぁ。ビールはビールか。

これはだあれ?
ほとんどの人が「これはだあれ?」と聞いてきそうな場所に、その絵は飾ってある。線画の肖像画。絵に筆で「これはだあれ?」と書いているものだから、「どなたなんですか?」と聞いてみると、オーナーの小坂敬さんの肖像だという。下に作者のサインが見える。アルファベットで書かれてた「K」が読めた。Koshi・・・「コシノヒロコさんです」オーナーにはお会いしたことはないが、かなりのイケメンだと想像できる。コシノヒロコさんは、この絵をどういう状況で描いたのだろう。小坂さんって、こんな感じだよね、とサササッと描いたのだろうか。深く考えずに最初に描いたタッチが、案外本質を突いていたりするから、この絵はかなり「本質」を突いているのだろう。

ニョッキ
メーカーズマークを注文すると、オン・ザ・ロックスのグラスが布のコースターに置かれる。「本日のお通しのニョッキです」と出されたのは片手には余るほどの器にたっぷりのチーズニョッキ。冷たいお酒を飲むときに、ちょっと温かいおつまみはうれしい。

ひとくち食べて驚いた。ちょっといいレストランで出てきてもおかしくない味。本格的すぎる。たしかに入口に置いてあった黒板に書かれたメニューは気になってはいた。BARにしてはかなり充実した食事のメニュー。「RESTAURANT & BARですから」と大島さんは笑う。カウンターの長友編集長「あのナッツ、ある?」と聞く。いつもは「なんか温かいもの、ある?」と頼む編集長が、ナッツにこだわった。「ここのナッツが、うまいねん」残念ながらその日「そのナッツ」はなかった・・・。

お通しのニョッキ

バーニャカウダ、エビとヤリイカのフリット、生ハム、チーズの盛り合わせを頼む。「あ、そうそう、ナポリタンやねん」と長友編集長が思い出したように話し出す。黒板のメニューには「オススメ!」みたいな表示がなくても、わかります。こういうメニューの中に「スパゲッティナポリタン」とあるだけで、その自信がうかがえます。来た来た来た!ナポリタン。色が濃い。見るからに濃厚。このスパゲッティナポリタンは別格だ。

そうそう、ナポリタンやねん

そしてもうひとつ気になったメニューがあった。「復活!牛すじカレー」だ。「復活!」ということは以前からあって評判だったのに何かしらの理由で止めていた、その「復活!」なのだろうから、うまいはずです。う〜む、クリネタ一回の取材では全部は食べ切れないなぁ。

シェフの佐藤さん
さきほどの「泡」を注文されたご婦人たちのテーブルに食事が運ばれていく。失礼にならないようにちらっと見ると「ハンバーグステーキ」だった。それもおいしそうだ。

後日もう一度取材させていただいたとき、シェフの佐藤さんにお話を聞くことができた。一流のレストランで何年もお勤めになったベテランシェフ。何料理というふうにこだわるのではなく、自由に工夫しながら料理をつくっていく。「このトマトソースには少しコニャックを垂らしてみよう」とか「新しい生春巻きはつくれないだろうか」とか考えながらつくっているそうだ。田舎風パテ、魚のテリーヌ、白子のマリネ、海老マヨネーズ、そしてチーズニョッキなど、週替りの付きだしが用意されている。「それを楽しみに通ってくださるお客様もいらっしゃいます」ですって。

好きな席
ウェブサイトには「会員制」とあるのだが、「事前にお電話してくだされば大丈夫ですよ」と大島さん。4、50名程度の貸切パーティにも最適な場所ではないだろうか。「クリネタで見ました」と言えば、話が早いかもしれない。初めて行く人に(全く個人的に)おススメしたい席がある。ふつうひとりで行く時はカウンター席だろうが、でも敢えて、一番奥の、フェアモントホテルの柱時計の影に隠れるようにあるソファ席。ここはこのBARのエアポケットのような場所だ。ひとりで静かにいるのもいいし、誰かとヒソヒソ話すのにもよさそうな場所。常連になったら、この席に案内されるようになりたいなぁ。

 

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KOMATSU RESTAURANT & BAR
http://www.komatsubar.jp/
〒104−0061 東京都中央区銀座6−9−5ギンザコマツ西館7F
03-6280-6690 (TEL/FAX)
営業時間 16:00 – 24:00 (L.O.23:00)
定休日   土日祝休み(土曜日は前もってパーティ等のご予約があれば営業します)
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No.32 (2015年冬号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

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