長友さんと行ったケッタイ取材、最後のお店となってしまいました。
クリネタ36号 Photo by 木内和美
「稀代」(けったい)とは、なんだ?
クリネタおススメの、いい店、おもろい店
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The OPEN BOOK
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新宿?
京都の町家に来たような錯覚。でもここは、なんと新宿ゴールデン街。2016年の3月にオープンしたばかりのケッタイなお店。まだ木の香りが残る、静かな図書館のようなBAR「The OPEN BOOK」です。オーナーの田中開さんは作家・田中小実昌さんのお孫さん。「おじいちゃんの本が家にたくさんあって、もったいないから、それを飾る場所として、お店をやることにしたんです」
店内は開さんのラフスケッチから設計された吹抜け。漆喰の白い壁と船底の古木を使ったカウンター。遠く広島の友人を訪ねて探し出した、こだわりの古材です。ゴールデン街のお店ですから、当然広くはないのですが、見上げると吹抜けの壁には本、本、本。約1000冊くらいはあるそうです。どの本がどこにあるか、わかるのですか?と尋ねると「作家の名前の五十音順に並べてあります」小実昌さんがご自宅の本棚でもそうやって並べていたそうです。
我らが長友編集長も「なんやったかいな、小実昌さんの本の装丁もやったんやけどなぁ」と「た行」の棚を探すものの思い出せない。開さんが「もしかしたら今、ちょうど貸し出してる本かもしれません。こないだ何冊か貸したので」常連になると、貸し出してくれるようです。
本棚を見上げるとやっぱり気になるのが、吹き抜けから見える上の階。上はどうなってるんですか?ハシゴのような急な階段を登ると2階にはトイレスペースともうひとつ。靴を脱いで上がる、茶室のような畳の小部屋が出現。一輪挿しの花が静かにに飾ってあったりして。この座敷で飲めるようになるには、多分何回か通って馴染みにならないといけないのかも。ボトルを入れて飲まないと、一杯ずつお替りしていたら運ぶのが大変です。その場合はせめて途中まで取りに来てもらうか、ですかね。
そして、もう一つ、上のお座敷に上がった人だけが目撃する「もう一つの秘密」がここにあります。これは、お店に行った人の楽しみとして取っておきましょうか。ヒントは「体の固い人にはきついかな」です。
メニュー?
1階はスタンディングのカウンター。まず気になるのが、スライスレモンがたっぷり入った何やら見慣れないマシーン。The OPEN BOOK自慢のレモンサワー・マシーンです。黒糖焼酎ベースでつくるレモンサワー。バーテンダーがお酒をつくる仕草を眺めることは、バーでの楽しみの一つですが、このレモンサワーも是非注文してほしい。何でもない小道具に感動したりします。筆者は小さな電動泡立て器に、おおーっと、(心の中で)声が出ました。
他には何があるのかなと見回すと、古木のカウンターにさりげなく原稿用紙が一枚。そこに手書きの縦書きでメニューがありました。「本」と「原稿用紙」は、相性がいい。さりげないセンスを感じます。
そのメニュー、最初にレモンサワーが書いてあって、次にあるのがビール。「金鬼ペールエール」と書いてある。少量生産の地ビールを取り寄せているそうで、いつも同じビールがあるわけではなく、その時々で変わるそう。それも楽しみです。で、ビールサーバーはどこ?と思うと、カウンターの上の天井から黒いアームが突き出ている。ここからビール?そうなんです。生ビールの樽は2階にセットしてあって、場所をとらずなかなかスマートです。
レモンサワーの次はジムビームのソーダ割り。「バーテンダーの作るちょっとした食べ物」が大好きな長友編集長は、メニューの文字を見逃しません。乾きものだけではなく、ちょっと温かいものがうれしい。「この、カレートースト、お願いできる?」とろけるチーズとカレーの乗った一口サイズに切ったトーストは、たぶんみなさん、お替りなさると思います。取材班も2度お替りしました。
長友さんは温かいものが好き
数学?
ほろ酔いになり始めた頃、ぼんやり本棚を眺めていたら、階段のそばの本に「ん?」と目が止まりました。「数学辞典」という本。数学の辞典?そのそばには何やら数学関係の難しそうな本が数冊。何ですか?これ?とたずねると「大学で応用数学をやっていたんです」と開さん。てっきり作家系というか、文学系だったのかと思いきや、数学。「文学はいつでもできるから。数学は後からじゃできないと思って」大学は早稲田の理工学部に進んだそうです。
それを聞いた東京理科大学で化学専攻の柴田副編集長がうれしそうに語り始めます。「そう、数学は哲学なんだよ」・・・ホンマかいな。柴田博士曰く、「1+0=1」なのに、「1×0=0」になる。そして「0÷1=∞」になり、「1÷0=やってはいけない」のだそうです。うーむ、わからん。わからんところが哲学なのか。懐かしそうにその数学辞典をめくる開さんの長い指がセクシーです。その長い指がレモンサワーやハイボールを作る仕草もセクシーでした。
「しかしThe OPEN BOOKとはいい名前やねぇ」と長友編集長。たくさんの本があって、みんながその本を開く・・・あ、田中開さんだからOPENか!とその時気づいたら、「なにを今ごろ気づいてんねん」と笑われました。「せやから、いい名前やねぇ、いうてんねん」と。すみません。
こんなにたくさんの本の「か行」の最後の「く」のあたりにクリネタも並べていただけますか。バックナンバーもいいのが揃っていますので。
The OPEN BOOK
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町1-1-6 ゴールデン街五番街
営業時間 19:00 -26:00 無休
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No.36 (2016年冬号)
クリネタ
http://www.crineta.jp
長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月
長友さんと一緒に【稀代】⑥EST!
長友さんと一緒に【稀代】⑦赤道倶楽部
長友さんと一緒に【稀代】⑧ボロンテール
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長友さんと一緒に【稀代】#11 サントリーラウンジ 昴
長友さんと一緒に【稀代】#12 キヌ・ギヌ
長友さんと一緒に【稀代】#13 The OPEN BOOK
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