あと10年だよ


まだ59才だったとき、ボクより4つくらい年上の先輩にお会いする機会があった。その先輩はボクより先に電通から独立された人で、会社を辞めたボクに「最近、どうよ?」と声をかけてくださったのだ。ボクは

「あと20年、80才くらいまで生きるとして、今何をすべきかを考えて
 時間を無駄にしないようにせねば、と思うんです」

というとその先輩は、

「ナカムラ、20年じゃないよ。10年だよ」

とおっしゃった。その先輩は活動的で日本全国、いや世界中を飛び回り、講演したり川下りをしたり。それはもう行動的というか活動的な人だ。

「今日が人生最後だとしたら、今日やることは本当にやりたいことだろうか。
 『No』という答えが幾日も続いたら、私は何か変える必要があると知るのです」という*スティーブ・ジョブズの言葉(ぶ厚い手帳)は知っていた。

そして、「死を意識している」人たちが、人生を最高に楽しんでいる9つのワケというTABILABOの記事も読んだ。*今日は人生最後の日(ぶ厚い手帳)
しかし、まだ身にしみていなかった。

手書き入力ができるようになったというiPad Proを買った。
毎日使うものだからそこに、ある言葉を刻んでおこうと思った。
日本語で書くとちょっと生々しすぎると思ったので目立たないように
(ってブログで公表しているのですが)イタリア語で刻印することにした。

Se oggi è la mia vita l’ultimo giorno
今日がボクの人生最後の日だとしたら

(注:Google翻訳なので正確ではないかもしれません)
(注:「è 」は刻印できませんでした)

朝、起きた時、ベッドの中でウダウダしていたい寒い雨の朝など、
『今日がボクの人生最後の日だとしたら』と言われると飛び起きるでしょ。
こんなことしている場合じゃない。やること、やらなきゃ。と思うでしょ。
この言葉は、自分のケツを叩く言葉なんです。
あと10年、毎日この言葉を思い出して生きていこうと思います。

講師の仕事


コピーライター養成講座基礎コースの修了式。そのあとのパーティにはいつも行くことにしています。基礎コースは少人数クラスを受け持つので、何人かの生徒は顔見知りだから。ボクのクラスかそうじゃないか、すぐわかる。ボクの生徒は「禎さん」とか「中村さん」と呼んでくれるけど、そうじゃないクラスの生徒は「先生」と呼んでくるから。(ボクは「先生と呼ばないで」という話をいつも最初にするんです)
 
修了パーティには、仲畑さんと対談した渡邉千佳さんも。いつも来てくれる中島信也さんはこの日、名古屋クラスでの講義のため残念ながら欠席(でも、この日来られないというので、その数日前に生徒さんの飲み会に参加してくれたらしい。やさしいね)修了パーティ2次会に山本高史さんと玉山貴康さんも顔を出してくれました。
 
ボクたち講師の仕事は、コピーを教えることというよりも、迷える生徒たちを勇気づけたり励ましたりすることなんじゃないかなぁ。中西からの帰り道、ふと思ったのでした。

世界のトップ4と

さて問題です。この写真はなんでしょう? 見る人が見ればスゴイ!人たちと写ったものです。サッカーに例えて言うならば、クリスティアーノ・ロナウドメッシ澤穂希ワンバックの4人と、サッカーのこと全く知らないオッチャンとの写真、みたいなものです。

これは、世界の囲碁界トップ4の選手たちなのです。写真左から、謝依旻(シェイ イミン)六段柯潔(カケツ)九段、オッチャン挟んで、於之瑩(ヨ シヨウ)六段井山裕太九段。ペア碁という、男女がペアになったチームとして囲碁を戦う、その最強位決定戦の後のパーティでの写真です。

「ペア碁ワールドカップ 2016東京」優勝ペアの於之瑩六段・柯潔九段ペア(中国代表)と今年8月に行われた「ペア碁最強位戦2017」優勝ペアの謝依旻六段・井山裕太九段(日本代表)の4人。

もう一度サッカーに例えると、2014年W杯で優勝したドイツと、クラブW杯で優勝したレアルマドリーが試合をするようなもの。その時のレアルのクリスティアーノ・ロナウドセルヒオ・ラモス、ドイツ代表のノイアーゲッツェと一緒に写真を撮ったようなものなんです、サッカー全く知らないオッチャンとが。

囲碁は全くできないボクが、なんでこの場所にいるのか。それは、この大会の告知ポスターを制作させていただいたから。
「囲碁のミックスダブルス。試合中しゃべると反則。」
「1+1=2、以上の強さになる。」
「黒石女→白石女→黒石男→白石男→。」
「強いもの同士のペアが強いとは限らない。」
「自分以外、3人の頭の中を想像しながら戦うゲーム。」
「ケンカはやめた。ペア碁で戦う。」
「人間はミスをする。人間がフォローする。」
などなどのコピーでポスターを作りました。

選手のスピーチでうれしかったことがありました。日本代表(女性)の謝依旻六段が、『あのポスターを見た、囲碁に全く興味がないはずの友人から連絡があってビックリした』と言ってくれたのです。ボクみたいな囲碁を知らない人間がこの仕事をした狙いは、ボクみたいに囲碁に興味がない人にいかにこの大会いかに興味を持ってもらうか、でした。選手の口からその「効果」が聞けて、うれしく思いました。謝さんは、掲出されているポスターの前での自撮り写真も見せてくれました。有り難や。

サッカーワールドカップ決勝後の優勝チーム、準優勝チームの選手たちとFIFAの会長ら大会関係者との祝宴の末席にお呼ばれしたサッカー全く知らない人、という状況でした。

【言い訳】囲碁ファンからすると、囲碁もできないヤツがこんなスゴイ人たちと記念写真に写るなんて許せない!と思うと思います。サッカーを全く知らないオッチャンがCR7やメッシと記念写真に写っていたら、ボクだってムカつくと思うから。でも、囲碁を広めるための仕事をしたから一緒に写ってもらえたわけなので、許してください。

【追記】ほんとはこの話をしたかった。選手のスピーチで、この4人は世界のトップ4であり、ライバル同士でもあるのですが、決戦の前夜、試合会場のある渋谷セルリアンタワー近くの居酒屋に4人で行ったそうなんです。ペア碁の世界大会は日本、中国、韓国、台湾だけでなく欧米のチームも参加する大会です。世界の国と国が政治で争っているけれど、こういう「ルールのある戦い」でしのぎを削りあう人たちは、お互いをリスペクトしているし、仲良しだったりする。平和って、こういうことなんじゃないかと思うのです。まさに「ケンカはやめた。ペア碁で戦う。」だなと、そのスピーチを聞いて思いました。

まだ60才

2017年10月3日。中村禎、60才になりました。
5才の時に父と別れ(思えば人生の12分の1)
40才の時に母と別れ(思えば人生の3分の2)

親孝行しきれていない自分がいます。

『親はなくとも子は育つ』とはいうものの
人は誰も一人では生きられません。

今まで出会ったすべての人たちのおかげで、
今の自分があるのです。

いろんな人からいただいたご恩を、
少しでも返していける人生にしたいと思います。

ボクを名前で呼んでくれるすべての人たちに、
ありがとうございます。

生まれて初めて60才になって
そう思う、10月3日です。

55分経過 (55才)
56年見てきた右手 (56才)
1957年10月3日 (57才)
勝手に新記録 (58才)
ただいま59%(59才)
まだ60才(60才)