第23話 決めるという仕事

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.23

階段試作 平面図を立体図で想像してみる。玄関を入った階段の部分です

「このレポート読んでますよ」という声を聞きました。うれしいです。「でも中村さん、家建てるのってタイヘンなんですねw」と言われ、たしかに苦労話ばっか書いていたかも、と反省しました。これから家を建てようかと考えている人たちに役に立ちたいと思い、「あれもタイヘンだった、これもタイヘンだった」ばっかりになっていました。楽しかったこともたくさんあった、それもちゃんと書かないと。いろいろ思い出すとつらかった日々が思い出されるのですが、考えてみれば、家を建てるなんて最高のプラモデルをつくるような楽しみがあるわけです。誤解のないように言っておきますね。家を建てる時間は、しあわせな時間でした。ただ、やらなきゃいけないことが、たくさんありますよ、ということです。でもそれも、自分たちの快適のためなんだから、そんなの苦労のうちに入らないと思います。

外壁の色外壁色のサンプルです

外壁色のサンプルだけではわからないので、候補の色の家を実際何軒も見に行きました。三井ホームの人は「1m四方くらいなら実際の板に吹き付けてみましょうか」と言ってくださったのですが、そう何色も試せないだろうから遠慮しました。大きい面積で太陽光で見ないと雰囲気はわかりませんからね。ボクはビスクオレンジという色がいいかと思ったのですが、いろんな色を見て、けっきょくスノーホワイトにしました。なーんだ、普通じゃんと思われるかもしれませんが、何軒も見て歩いたから「よし、これだ」と決められたことなんです。

壁照明照明のショールームにも何回も通いました

苦労したのは照明です。三井ホームからは「オーデリック」と「コイズミ」というメーカーの分厚いカタログをもらいました。ダウンライトなどの普通の照明はいいんですが、玄関とか、玄関の外の照明とか、ちょっとシャレた照明をつけたいときのセンスが合わなかった。汐留のパナソニックにも行ったし、ヤマギワ電気にもいったし。照明のいいヤツになかなか出会えなかった。後日、インテリア関係の仕事をしている人に「オーデリックやコイズミ以外にも照明のメーカー、たくさんありますよ」と言われた。うーむ、そこまでの調査能力はなかったか・・・。ま、でも、そんなシャンデリアのようなものを探していたわけではないので、まあ、今は特に不満な点はないんですけどね。「照明を決める」というのは結構時間がかかりました。

第24話 地球の一部分

第22話 情熱とお金

図面記号図面記号2

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.22

とにかく図面だらけです。どんな図面があるか、何のための図面か、をまとめておきます。
1■仕様書(仕上表):契約内容を言葉や記号で表した一覧表。素材や色、メーカーも記されています。要するに、これに基づいて「発注」するわけです。だから、間違っていたらタイヘン。要確認の表です。

2■配置図:敷地内のどこに家が建つかを示しています。

3■平面図・設備配置図:各階の間取りを表しています。プランの要といえる大切な図面です。電器配置図は平面図の中に電気の位置(照明、スイッチ、コンセント等)を表します。給排水(水やお湯の仕様箇所)の位置も記されています。

4■立面図:外観を東西南北4方向から表現。外観デザインや窓の配置がわかります。

5■矩計図(かなばかり):建物の断面図です。断面図と言えばいいのに専門用語です。

6■展開図:室内の様子をA、B、C、D、4つの壁面で示しています。これで室内を想像できます。ボクはこれと立面図を貼りあわせて模型を作りました。住宅模型って作ってくれるものだと思っていたら「あれ、結構お金かかるんですよ」と言われちゃいました。じゃあ、いいです、自分で作ります。ハレパネで50分の1のものを自分でつくりました。屋根はないですが。

これらの図面の中でとくに、仕様書、平面図、設備配置図にはいろんな色のペンで修正を入れていきます。もうゴチャゴチャになるくらい修正・変更を繰り返し、最終決定にたどり着くのです。思えば、契約のハンコから仕様書が確定するまでの約2ヶ月半が一番タイヘンだったように思います。ほんと「決めなくちゃいけないこと」が多いのです。ボクたちはただ後悔したくない、後悔は最小限にしておきたい、という思いでがんばりました。当時のノートから単語をひろってみて、当時毎日何をしていたかを書いてみます。

●毎週土日のどちらかで三井ホームで打合せ・・・図面に直しを入れながら最終型に近づけていきます。この場で、次はいつまでに何を決める、などの確認をします。
●平日も休んで、各地のモデルハウスを再訪問・・・同じモデルハウスにも何回も行きました。「階段のここは何センチだったか」「お風呂の素材はどうだったか」「床の質感はどうだったか」最初に訪問した時はたくさん写真を撮ります。それをもう一度見ながら、実物を確かめながら、決定していくためです。
●照明器具のショールーム訪問・・・都内に何カ所かある照明器具のメーカーのショールームで器具を調べたり、照明のシミュレーションを見たりします。照明に関して、三井ホームに提案したことがあります。「夜の住宅展示場で照明のシミュレーションをみせてくれればいいのに」と。住宅展示場は夕方6時、7時で閉まってしまいます。もうすこし遅くまでやって、照明器具の感じとか、実際の夜に見せてくれればいいのに、と。ボクが三井ホームの社長なら、直ちに実行しますけどね。
●キッチンのショールーム訪問・・・妻はタカラのホーローにすると決めていました。妻のお母さんも薦めていました。丈夫で汚れにくく手入れが簡単だからだそうです。これも「たかがキッチン」ではなく、妻の大切な場所なので真剣です。もう何回も何回もいきました。
●三井ホーム主催の見学ツアーに参加・・・これは実際に建築中の家を見せてもらいます。上棟が終わって配線や構造材が見える状態の家を見学させてもらいました。これから自分たちがどう作り上げていくのかが見えて、とても有意義でした。
●外壁、タイルなど現地確認・・・外壁の色、質感はサンプルだけではわかりにくい。だって大きな面積がその色になるわけだし、タイル素材も実際の外の光でどう見えるか、ロケハンです。実際の家を紹介してもらい、外から見学させてもらいました。
●住宅ローンの打合せ・・・避けては通れません。

とまあ、こんなことを休みの日は朝から、平日は夜中まで、夫婦ふたりで四苦八苦していました。つらかったけど、これが家を建てるってことなんです。タイヘンだけどこれは「前向き」な苦労です。他人から見たら、家を建てる人の「贅沢な苦しみ」です。「本当の苦しみ」はこれからでした。そうです、●見積りとの闘いです。あれやこれや希望通りに作るのはカンタンです。しかし現実にはそこに「予算」という壁がある。その「予算」をオーバーした分をどうするか。何かを諦めていくしかないのです。例えば、開閉できる窓より、FIXの窓(開閉できない窓)のほうが安いとか、窓の数自体を減らすとか。床材の質を変えるか、外壁の塗装方法に凝るのをやめるか。何を諦めて、何を貫き通すか。この決断はふたりで相当悩みました。

住宅メーカーの広告が「あなたの夢をカタチに」みたいなことを言ってるのを見るとハラが立ちます。全然共感できません。夢だけで家は建つもんか。大事なのは情熱とお金です。ゼッタイ夢なんかじゃない、とボクは思っています。

第23話 決めるという仕事

第21話 三級建築士への道

家のスケジュール1家のスケジュール2

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.21

記念に今までの書類や図面をいくつか取ってあります。それを見返すと涙が出そうになります。楽しくてつらかった日々が思い出されるのです。夫婦ふたりだけで相談して決めて行く。それは、中村家二人 vs 三井ホーム という闘いの歴史のようでもあります。別に三井ホームとケンカしていたわけではありません。ただ「騙されないぞ」「言いなりにはならないぞ」という気持ちは持っていました。私たちにとって家を建てるということは初めてのことで、暗闇の中を手探りで進むような日々だったのです。落とし穴に落ちないようにすり足で、なのに急かされて進むのです。

ノートのスケジュールを見ると、契約までに図面等を見ながら打合せしたのが4回。契約後、見積りにOKを出すまでの打合せ回数が10回。これは多いほうかもしれません。三井ホームとしては、「時間をかけない」ことがコストを下げることにつながります。こっちとしては「慎重に進めたい」そのせめぎ合いです。3月末に契約して6月中旬に金額確定までの約2ヶ月半。約10回の打合せと書くとカンタンですが、その「打合せと打合せの間」がタイヘンなのです。連日深夜残業で「あれを確認しなきゃ」「これは質問しなきゃ」の洗い出し。クライアント(施主)はただ提案を待っていれば良いのではないのです。こっちから攻めるための「準備」が必要だと思います。その「準備」をしておかないと、向こう(三井ホーム)の言いなりになるしかない。「そこは、こうできるんじゃないですか?」とか「そこはこうできるはずでは?」と言えるようにと勉強しました。その時期同時にやったことは、ローンの相談・照明のショールーム見学・キッチンのショールーム見学・インテリア素材の現物確認・近郊の三井ホームモデルハウス見学・図面を読むための勉強・・・などなど。とても会社の仕事どころではありませんでした。

三井ホームからもらった「設計・インテリア打合せノート」に、契約から引き渡しまでのスケジュールが載っていました。まず最初のヤマ場が、着工までに金額も含めた設計図の承認。ここで基本が決まります。そこを決めるまでにクライアントである私たちは必死で準備しました。(これは広告を制作する作業とホントに似ています。しかし、大きく違う点がふたつあります。1つ目は、家の場合は私個人が一生かけてお金を払うけど、広告のお金はその担当者個人が払うわけではないこと。2つ目は、家は設計図を承認して着工したら大きな変更はできないけど、広告のクライアントは企画にOKをしたくせに、撮影したものでも平気でやり直しをさせたりするケースがある。まったく、ねぇ)

三井ホームからもらった「設計・インテリア打合せノート」は、初めて家を建てる人にはとても助かるノートでした。「いつまでに」「何をすべきか」がすべて書いてありました。

■第1回目の設計打合せの前までにご確認をお願いします
・家具の計測(新居で使う家具やクルマのサイズ)
・建物の配置(室外機をどこに置くかなど)
・主な図面記号の把握(図面記号を勉強しておいて)
・住まいの段差の確認
・高さ、位置関係の確認(さまざまな部資材の取り付け位置)
←コンセントの位置など

■設計打合せの前までにご確認をお願いします
・間取り
・外部仕様(事前に用語等の把握をお願いします)
←屋根材・雨樋など家の外側のあれやこれやです
・内部仕様(事前に用語等の把握をお願いします)
←床材・階段・手摺・ドア・玄関床タイルなどなど。幕板・巾木・ケーシングなど初めての単語ばかり
・電気設備(事前に記号の意味や用語の把握をお願いします)
・給排水設備(事前に図面記号や用語の把握をお願いします)
・その他確認事項(住宅設備機器や器具などの確認)
←キッチン・トイレ・洗面・浴室などのことです

「事前に記号の意味や用語の把握をお願いします」というセリフばっかりでしょ。これがタイヘンだった。とにかく図面を読む「記号」を理解することです。とても一度では憶えられませんが、このノートに書いてある説明を見ながら設計図を「解読」していきます。それができないと、「あれ?ここの窓違いますよ」という指摘ができません。コツがわかればとても合理的な記号だということがわかります。わかるようになりました。わかるまでやりました。三級建築士くらいにはなったんじゃないかと思います。

第22話 情熱とお金

第20話 諦めるところ、譲れないところ

洗面所参考建てると決めた後、もう一度モデルハウスを回ります。最初とは違うアングルで見ることができました。「じぶんごと」として見ると、また違ったものが見えてきます。こんな洗面室は参考になりそう。パチリ。

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.20

家の設計は楽しいものだと思っていました。イヤ、確かに楽しかったのですが、正しく言うと、楽しいことばかりじゃなかった、ですかね。住宅メーカーの広告は夢を煽るようなものが多いですが、現実は「何を諦めるか」「これだけは譲れない」のせめぎ合いでした。予算もたっぷり、土地もたっぷり、ならばそれはそれは楽しい時間となるでしょう。しかし、建ぺい率やら容積率、北側斜線規制やら建築基準法やらいろいろ制約があるのです。ま、一番の制約は「予算」なんですけどね。「制約の中でベストなものをつくる」という点で、家づくりは広告をつくることと似ています。

設計初期段階でやったこと①
いきなり「何を諦めるか」と言われると、シュンとしちゃいますが、まず最初にやったことは「希望をすべて書き出す」ことでした。「あれもしたい」「これもしたい」を小さなことから大きなことまですべて書き出す。そして、優先順位を考えていきました。ホントに小さなことも漏らさず考えてみるのです。

「リビングは広いほうがいいね」「キッチンも広いほうがいいわ」「お風呂も広くなくちゃね」「玄関は広いほうがいいぞ」「トイレも広いほうがいいわ」「収納も・・・」と書き出して行くと、5階建てでも建てるんかい!となってしまう。希望を書き出すことで、できることできないことを確かめる。譲れない点、百歩譲れる点を整理していきます。

設計初期段階でやったこと②
休みの日はまたモデルハウスに行きました。お弁当をつくって郊外の住宅公園にも行きました。三井ホーム以外の家も、また見に行きました。その目的は自分の家の設計の参考になるような間取り、工夫、インテリアなどを見つけるためです。モデルハウスの家は大きくて豪華な家が多いのですが、間取りのアイデアは盗めます。二度目のモデルハウス巡りは設計図を頭に入れて見るので、最初に見た時とは違う発見がありました。ここに窓があると明るくていいとか。こんなところに飾り棚があるのもいいなとか。階段のおどり場はフラットなほうがゆったりしてるなとか。お風呂はこんな明るい感じがいいなとか。キッチンの床が大理石だと落とした食器はすべて割れるだろうなとか。外壁の色、質感。室内の壁の色。床材の色、その質感。照明器具、ドア、窓のカタチ。毎回大量の写真を撮って帰ってきました。そしてその写真を見ながら深夜残業。次の打合せまでに希望をまとめなきゃです。

ダルメシアン三井ホームのモデルハウスで出会ったダルメシアンのぬいぐるみ。欲しい!

第21話 三級建築士への道

第19話 深夜残業の日々

家ノートスケジュール1なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.19

契約が決まった。さあ、これからが怒濤の深夜残業の日々の始まりです。もう忘れかけていましたが、「家ノート」のスケジュール表を見返してみて思い出しました。あのキツかった日々のことを・・・。

3月末に正式契約
(頭金などを振り込みました)
■4月全般:基本設計合意
(同時に見積りと相談しながら進めます)
■5月中旬:ほぼ最終の図面アップ
(つまり1ヶ月ちょっとで最終図面の確認までいくということ)
■6月中旬まで:見積り金額確認
(金額確定。もう一度緊張する「印鑑の儀式」がある)
■6月下旬:地鎮祭
(神主さんによるお祓い。工事の無事を祈願。これから工事が始まる日)
■7月:工事開始
(照明の位置、コンセントの位置など最終確認。詰めることはまだたくさん)
■8月上旬:上棟式
(骨組みが出来上がり屋根がかかった状態で細部・内装の最終確認)
■9月中旬:足場ばらし
(これ以降はもう大掛かりなことはできません)
■9月下旬:竣工・引き渡し
(そして引越です)

毎週土日は三井ホームの人と会うか、モデルハウスに行って細部を確認したりする。平日の夜は夫婦で次の打合せに備えて、資料を揃えたり、確認事項をまとめたり、心配事項を書き出したり。毎晩深夜残業をしているような日々でした。正直、会社の仕事どころではありません。よく住宅メーカーは「夢をカタチに」みたいな歯の浮くようなことを言いますが、あんなの全然リアリティのないことです。「ふざけたこと言ってんじゃねーよ」です。現実は建築規制でできないこととの闘い、予算的に削らないといけないこととの闘い、時間との闘いでした。ま、それも、「後悔したくない家づくり」のためです。よく「家は3回建てないと満足いく家なんかできない」と言いますが、そんなアホな、です。3回も建てられませんよ。ふつう1回です。だからできるだけ「後悔」を最小限にしたい。そのための毎晩深夜残業です。なんだか脅かしているようですが、ホントのことなんです。だけど!ボクたちの家は、初めての家ですが、後悔しているところはほっとんどありません。いろいろ用心深くシミュレーションしたり、確認したりして進めてきたので、「こうしておけばよかった」という箇所は、ないんじゃないかな。それくらい用意周到に「仕事」を進めて来たのです。次回からは、それを順を追ってお話しします。

第20話 諦めるところ、譲れないところ

第18話 覚悟の印鑑

三井ホーム契約書類

 

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.18

2009年3月28日土曜日。ついに三井ホームと正式な契約を交わしました。初めて三井ホームと接触したのが2月14日の土地さがしセミナー、住宅ローンセミナーだったから、1ヶ月と10日くらいでの決断。これが早すぎるのかどうなのかはわかりません。ただこの40日間は毎日このことばかり考える日々でした。いま思うのは、ウチにとってはベストな決断だったと思っています。ウチのように土地から探さなければいけない場合、気に入った住宅メーカーがあれば、そこが持っている土地情報を活用した方がベターだと思いました。契約も一本化できるし、土地のローンも住宅が完成してから支払いをスタートできるというメリットもあった。土地の値引きもしてくれたし。なにより「土地を買う」という得体の知れない商品の買いもの、当たり外れがある買いものへの安心感、これが一番大きかったと思います。

新宿三井ビルのちょっと上質な部屋での契約は、さすがに緊張しました。そりゃそうですね。人生で一番高い買いものをするのですから。印鑑を何カ所にも押しながら、ドキドキしながらどこか安心感もありました。それは「三井ホーム」という大きな名前からくる安心感かもしれません。三井ホームの担当の人の誠実そうな表情からくる安心感かもしれません。これが、どこかの街の不動産屋と土地を契約し、工務店と建築家とも契約を交わすと考えると、めんどくささと不安が残ったでしょう。土地探しにくたびれ果てたボクたちには、三井ホームとの契約がいい結論だったと思います。

契約完了。ひと仕事終わった疲労感でした。印鑑を押したからこれで終わりではなく、これからが本番だという覚悟はしていました。言いなりにはならないぞ、という覚悟です。でもこの時はまだ、これからほんとうの闘いが始まることを、知る由もありませんでした。

(上の写真は、契約書類一式をいれておくケースです。大事なものだからまとめてここに入れておいてください、といただきました)

第19話 深夜残業の日々

第17話 住友林業の家

住林のテラス

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.17

(この写真は幕張メッセで行われた住友林業の住宅フェアの家のテラス。こういうのいいなぁと撮ったものです。結局こんなスペースは取れませんでしたけどね)

世田谷の住宅街に建っている、その住友林業の街中モデルハウスは素敵でした。予算が合えば即購入してもいいくらい。ま、私たちには、予算も広さも2倍くらいの家でしたけどね。吹き抜けのリビング、隠れ家のような小さな和室、陽当たりのいい大きな窓。デジカメであちこち撮りました。その写真だけ見ると、文句のない家でした。

しかし、妻は「やっぱりアレはない」と言うのです。見に行ったのは3月中旬の午前中。ダウンのコートを着た、まだ寒い時期でした。妻は「家の中が寒くてダウンのコート脱げなかった」と言いました。滞在時間はせいぜい2、30分だったでしょうか。リビングのエアコンをつけてもらっていたのですが、天井の高いリビングはなかなか暖まらない。家のあちこちを見て回っても結局ダウンのコート着たままでした。

そうなんです。全館空調の三井ホームではそういうことはなかった。全館空調は常に室温をほぼ一定に保っているので、外から帰って来ても玄関も廊下も階段も家の中のあらゆる場所が一定温度に保たれています。エアコンで各部屋を暖める方式は、むしろロスが多いと思いました。

例えば、冬。室温を24℃くらいに設定しておけば、寒い季節、留守にしていても室温はそれほど下がらない。部屋ごとのエアコンだと、外出のときOFFにする。すると室温はどんどん下がる。家に帰るとその下がってしまった室温をまた24℃くらいまで上げなければいけない。フルパワーで暖めるのでその電気代もかかります。室内の温度変化が少ない。それが高気密・高断熱のツーバイフォーの得意技であり、そのツーバイフォーだから全館空調が活かせる。というわけで、中村家は三井ホームと契約することにしたのです。

第18話 覚悟の印鑑

第16話 荻窪の土地

怖い土地

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.16

(写真の土地は、たくさん見た中で一番怖かった、思い出の土地です。日が暮れかけてたということもあるんですが。しかし「これはないな」という土地もたくさん見たことは決してムダではありませんでした)
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荻窪の街中モデルハウスを見た後、「この近くに三井ホームの土地があるんですが、見に行きますか?」と営業マン。荻窪に住む、ということは全く考えていなかったのですが、クルマで連れて行ってくれるというので、「ま、せっかくだから行ってみますか」となりました。

その土地はすでに整地されたほぼ正方形の南向きで、前の道は一方通行の5m道路という好条件。両隣も後ろもすべて三井ホームが建っていて、一区画だけ残っていた土地。しかし疑い深いボクは「なんでここだけ最後に残ったのだろう・・・」とひねくれた考えを持っていました。

ここに決めるなら早い方がいい。他の人が現在検討中だとも聞かされました。ボクはまた、疑り深いので「早く決めさせるための手じゃないか?」と思いましたけどね。しかし、どちらにしても決断は早い方がいいとは思っていたし、いつかは決断しないといけないわけだし、何より、つらい土地探しの旅にも飽きていました。

荻窪の土地を見た次の日も田園都市線あざみ野、久が原、御嶽山、大田北領、阿佐ヶ谷、と精力的に見て回りながら、二日後、雨の月曜日。会社を半休し、その荻窪の土地をひとりで歩いて見に行きました。雨の中、駅から歩く道のりを確かめたかったし、その土地の周りの家を見たかったし、ゴミ置き場などはどうなっているかとか、結構時間をかけてうろうろしました。近所の人が見たら怪しい男に見えただろうと思います。

土地は、その大きさや方角も大事ですが、隣近所はどうなっているかも大事だと感じていました。いままでいろんな土地を見てきて、その土地自体はいいんだけど、その左右、後ろの環境がよくないものがありました。この土地はその心配はなさそう。その夜、妻と相談し、よし、ここにしようと(ほぼ)決断したのです。これまでさんざんいろんな条件の土地を見て来たおかげだと思います。素人ながら土地を見る目が養われていたのでしょう。この荻窪の土地、妻は一目で気に入った様子でした。「今までさんざん見て来た中で一番いいと思った」と言っていました。その目の確かさはボクより上でした。

ふたりの腹は決まりましたが、まだ契約はしていません。最後の「ひとあがき」の余地は残されています。じつはもう一軒、住友林業の街中モデルハウスを見に行く別の約束もしていたのでした。エヘヘ。(つづく)

第17話 住友林業の家

第15話  街中モデルハウス

成城の白い壁

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.15

この写真はモデルハウスのものです。街中モデルハウスの写真も撮ったのですが、現在はどなたかがお住まいになっている家なので、こっちの写真にしました。

実験ツアーなどに参加しながら、三井ホームに気持ちは傾きつつありましたが、同時に他社の家も見ていました。三井ホーム主催の実験ツアーでは自社のいい所を見せる。いい所しか見せない、とも言える。まず、どこかの話を聞いた上で他社を見る。そうすることで、その「良さ」が、どこでもあることなのか、特別のことなのかがわかると思うのです。すべての住宅メーカーを勉強し尽くすことはできないし、そんな時間はなかった。比較できるのはせいぜい2、3社だと思います。

そんな時に営業マンの人が「杉並に実際に建てたモデルハウスがあるのですが、見に行きませんか?」と言って来た。住宅展示場のモデルハウスは正直大きすぎる。あんなに大きな敷地はウチの場合、あり得ない。そういう理想型だけを見て惚れてしまうのは危険だとは思っていました。以前展示場めぐりをしていたとき、三鷹の「ドリーム」という大きな敷地の贅沢なつくりの家と「リアル」という現実的なそこまで大きくない土地でリーズナブルな装備のモデルハウス、両方を見に行った時、とある住宅メーカーの「ドリーム」と「リアル」の差に愕然とした記憶があったから。単に広さの問題ではなく『質感』があまりにも違っていた。住宅の素人でも床材や壁の質感の違いはわかります。いくつも展示場を見て回ることで目が肥えて来たのかもしれません。つまり、三井ホームも住宅展示場の贅を尽くしたモデルハウスだけ見るのではなく、街中の狭い土地に建つ「リアル」な家を見る必要があると思っていました。よそ行きの服を着たモデルハウスの豪華な雰囲気に惑わされず、街中に建つ実際販売される普段着の家も見ておくべきだ、と記しておきます。

第16話 荻窪の土地

第14話 なぜ屋根の雪が溶けなかったのか

なぜ私は三井ホームで家を建てたのか vol.14

とある写真を見せてもらいました。首都圏に大雪が降った年、偶然に撮られた写真。それは、横浜平沼橋の住宅展示場のモデルハウス群を見下ろす写真でした。大雪が降った翌々日か。クルマの通りの少ない場所や土の所はまだ雪が積もっていますが、クルマが通った跡や展示場の家々の屋根の雪は溶けてしまっている。ところが、一軒だけ屋根の雪が溶けていない家があるんです。なんで?

それが三井ホームのモデルハウスだったのです。説明によると、展示場のモデルハウスは営業中ですから当然暖房をつけている。その熱が屋根から逃げているというのです。ホント?とまず疑ってみます。でも、太陽光で溶けているなら三井ホームの屋根の雪も一緒に溶けるはずです。なのに三井ホームの屋根だけ溶けていなかった。これはDS(ダブルシールド)パネルという、発泡スチロールをサンドイッチしたような断熱効果の高い独自開発の屋根材を使っているからということでした。広告で説明されても、すぐには信用しないのですが、こういう「証拠写真」を前にすると説得力がありました。

実際、住宅展示場でもそれは実感しました。夏の暑い時期にモデルハウスを回っていたときです。屋根裏部屋なんかいいな、と思っていろんなメーカーを見て回っていました。三井ホームの屋根裏部屋はトータル空調だから下のリビングと同じ室温なのですが、そうじゃないメーカーだと、やはり屋根裏部屋は暑い。屋根から熱気が伝わってくる。これじゃあエアコンいれててもムッとするわな、と思いました。

空調ホースとDSパネルトータル空調の銀色のホースと配線とDS PANEL

断熱性がいい、ということはどこのメーカーも唱っています。しかし、だいたいは「壁」の話です。「屋根」そのものの断熱性について言っているメーカーは少ない。考えてみれば夏の太陽は上から照ってくるわけだし、冬の部屋の温かい空気は天井へ上がって行く。天井(屋根)の断熱性が大事だということがわかりました。

う〜む。なんだかうまいこと丸め込まれてはいないか?と用心深くなりながら、意地悪な目を持って「家づくり体験会」の次のブースへ向かったのでした。

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おまけ

物置DSパネル斜めになった濃い茶色の部分がDSパネルの内側

後日、こんな話も聞きました。DS(ダブルシールド)パネルの屋根材は電気の配線工事をする人たちに評判がいいんだそうです。夏の炎天下の工事。屋根がかかってから室内の配線の工事に入るのですが、そのとき三井ホームの屋根だと暑さが直にこないので作業しやすいというのです。他の屋根だとそうはいかないらしい。そういう意味で、工事をしている現場の職人さんたちにいろいろ聞いてみるのもいいなかと、今思いました。

第15話 街中モデルハウス