フランス98の記憶⑧クロアチア戦

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第2戦クロアチア戦、ナント、ボージョワールスタジアム。この試合もチケットは取れていなかった。ボクたちはアルゼンチン戦のチケットを確保してくれたM氏から「たぶん大丈夫」と言われてはいたが、当日会えるまでわからない、不安の中にいた。一方、アルゼンチン戦はパブリックビューイングだったツアー仲間たちは逞しくなっていた。パリまで行って割高だけどチケットを確保した女の子たち、レンヌの駅前で「チケット・シルヴプレ」の紙を持ってなんとか1枚手に入れた、海外旅行が初めての青年。近ツリもかけずり回って何枚か用意してくれて、無事に全員が観戦できることとなった。よかった。

駅前スケッチ駅前のカフェでスケッチをしていたら、同じツアーの青年が「チケット・シルヴプレ」と書いた紙を持って自力で確保しようとしている姿を見つけた。2試合目にして日本人サポーターが逞しくなっている姿を目撃した。

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とても暑い一日だった。試合は0対0の時間が長く続いた。中田ヒデから速いクロスが入り走り込んだゴン中山が完璧なトラップからのシュートを打つも、相手GKのスーパーセーブに遮られる。試合は互角のように見えた。このまま勝たなくてもいいから引き分けで勝ち点1を取るのも悪くないなと、ふと思ってしまったのがいけなかったのだろうか。シューケル(当時レアルマドリー)に決められてしまった。決して鮮やかなゴールではなく、こぼれ球を押し込まれたような点だったように記憶している。どんなカタチでも1点は1点なのだ。ワールドカップは(というかフットボールは)勝つということがすべてなのだ。勝ち点3を取るか取らないか。そのためなら何でもする、という大会なんだ。惜しいシュートだったとか、いいカタチは作ったとか、ボール保持率は上回っていたなんて関係ない。相手より1点多く取るかどうかだ。

FR98CROBUS試合後のバスの中。悔しさを全面に出す2試合目の日本人サポーター。サクラはクロアチアとユニフォーム交換。AKITA#17はクロアチアへ。

試合後、スタジアムを出て日本人サポーターとゾロゾロ歩いているとき、第一戦の時とは違う空気を感じた。初戦のアルゼンチンは優勝候補の格上でもあるので、「0対1で済んでよかった」的な「最少得点差で負けた」ことに「よくやったよ」という空気があった。しかし2戦目はあきらかに「悔しい」という怒りにも似た空気が漂っていた。日本代表がだらしなかったわけではなく、ただ負けたことがホントに悔しいという空気。日本人サポーターも2試合目で成長したんだと感じた。ワールドカップ常連国は確かに強い。そしてその国のサポーターも強い。何度も悔しい負けを乗り越えて応援しているからだろう。その悔しさのパワーもハンパないんだと思う。代表チームも成長しなければいけないが、ファンやマスコミも初出場の日本は他の国より倍速以上の早さで成長していく必要がある、と感じた。

フランス98の記憶①開幕戦の夜
フランス98の記憶②出発直前
フランス98の記憶③長い一日
フランス98の記憶④最初の試合
フランス98の記憶⑤バスの一日
フランス98の記憶⑥ブラジウ(前半)
フランス98の記憶⑦ブラジウ(後半)
フランス98の記憶⑧クロアチア戦
フランス98の記憶⑨旅の終わり