フェイスブックの書き込みに、4,928人ものいいね!をいただきました。
こんなに多くの人の賛同が集まった。ということを
記録として、残しておこうと思います。(2016.10.18)
『電通、労働時間の上限引き下げへ
新入社員の過労自殺を受け、社長が文書で通達』
というニュースに関して、思ったことを書いたものでした。
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電通はたしかに大きな会社ですが、結局は受注産業です。電通に発注するクライアントがいて成り立っている。クライアントの注文が大量で至急だったら、残業するしかありません。電通OBの友人の言葉を借りれば、『クライアントがいて、締切があって、正解が無くて、勝ち負けがあれば、期限ぎりぎりまで時間の限り頑張るしかない』のです。また、金曜の夕方にクライアントから「事情が変わった。至急直してくれ。月曜朝イチまでに」と言われたら、いつ仕事をすればいいのでしょう。電通の労働時間を制限しても、そのツケはプロダクションに回るのですか。社内の労働時間を規制する前に、クライアントに発注のルールや常識をきちんと伝えるべきではないでしょうか。無理な注文を黙って聞くことがクライアントサービスだと勘違いされては困ります。
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「わがまま言って申し訳ないですが、やってもらえませんか」と「代理店ならやるのが当たり前だろ。できないなら他に回すぞ」というのの違いですかね。お金払えばなんでもできる、という発想がそもそも違うと思います。
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お金を払う側とサービスを提供する側は、平等だと思うんです。だってその料金分の「商品」を渡しているのだから。こっちは金払ってんだ、というのなら、こっちはサービスという商品を身を削って提供しているんだ、と言いたい。お互い五分と五分です。だからそこにお互いのリスペクトがあるんじゃないでしょうか。そういう、いい関係のクライアントもたくさんありました。電通には。
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仕事のスケジュール表ってあるじゃないですか。カレンダーが表になってるやつ。あれの土日は表に入れないほうがいいですよね。スペースがあると、そこも使えると思ってしまう。特に年末とかね。年末にオリエンして、年明けにプレゼンしろとかいうクライアントもあったみたい。それは断るべきでしょ。そっちのほうがブラックでしょう。
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クライアントと広告代理店は、上下の関係じゃなくて、一緒に並んで競合商品や競合企業と戦う、同志だと思うんです。
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ボクは電通がブラック企業だとは思っていません。電通に労働基準局から強制捜査が入ったというニュースが流れ、世間は「電通はヒドイ」という印象を持ったかもしれませんが、電通を調べるなら、電通に仕事を発注している先も調べるべきだと思ったのです。仕事納めの前日の年末にオリエンして年明けにプレゼンしてくれ、などという発注を平気でする方がブラックなんじゃないのかと思ったのです(例え話です)
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何の根拠もないのですが、昔、三波春夫さんが「お客様は神様です」と言った。その言葉だけが勝手に暴走している気がするのです。三波春夫さんは自分のコンサートに来てくれたお客さんにありがとうございます、という意味で言ったのだと想像します。その言葉が一人歩きして、お客は何やってもいい、みたいな空気ができてしまったんじゃないかと。
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4,928人もの人たちの「いいね!」と317件もの「シェア」に正直、驚き、感激し、うれしく思っています。熱いものを感じました。ありがとうございます。
今回の一件。自分の家族、友人が、このような不幸なことの犠牲になったかもしれないと思うと、胸が痛みます。しかし、マスコミの取り上げるニュースには、所属していた会社だけが悪いと決め付けたような報道。違和感を感じました。だから、自分の思いを書かずにいられなかったのです。
こんなに多くの人の共感を得られるとは思ってもいませんでした。広告業界だけでなく、仕事に「発注」「受注」という関係がある限り、共通の大きな不満、共通の大きな問題があることに気づかされました。
ボクは電通に勤めていました。電通OBとして、このような不幸なことは二度と起こってほしくない。たかが一人のOBがfacebookでほざいたところで何も変わらないのかもしれませんが、いつも悪者扱いされる電通が、こういう時にこそ「クライアントからの理不尽な注文は断る」という毅然とした態度を示せば、何かが変わる気がしたのです。仕事は上流から下流に流れていくとしたら、一番上流にいる有名な会社が、そう宣言してくれれば、どれだけの人たちが救われるか。一番上が「NO!」を言わなければ、その下請け、孫請けは「NO!」とは言えないのです。電通だけでなく、博報堂、ADKといった大手が、せーの!で宣言したら、何かが変わるように思います。
「中村くん、クチで言うのは簡単だけど、それは非常識だよ」という人がいるでしょうか。だって、「非常識」なことが起こっているのだから、今までの常識では出来なかったことをやらないと、何も変わらないんじゃないですか?とボクは言いたい。労働基準監督官に、労働時間だけの問題じゃなく、なぜそんな労働時間になるのか?を調べてください、と言いたいのです。労働基準監督官はボクのfacebookを見てないとは思いますが。
ともかく、この小さな書き込みを読んで、くださったことに感謝します。うれしかったです。ありがとうございました。
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その通りです!私も印刷会社という受注産業の典型に身を置いております。“お金を払えばすべてがお客様で、お客様に絶対服従は当然だろ”と仰るなら、「ペッパー君とでもやってろ」って言いたくなります。中村先生は授業でこう仰いました。「コピーライターである前に、ちゃんとした人間でありなさい。仲間内の会話でも糸井さんや仲畑さんを呼び捨てにすることは、絶対にやめなさい」と。今もそうしてます。ですのでたまに「知り合いなの?」って聞かれ、こう応えます。「お二人を直接は知りませんが、お二人の作品は知ってます」と。発注側も請ける側も、ちゃんとした人間じゃなきゃ、人間を感動させるものは生まれません。
桑嶋くん、コメントありがとう。よくそんなに昔の話を覚えていてくれましたね、ありがとう。その気持ちはボクもいまだにブレていません。
よほど大きなものでなければ、30年も憶えてませんよね・・・。
その、よほどだったんですよ。