だってブラジルなんだもの⑥サンパウロの空気

6月13日

バゲージクレーム再会!

■ 18時頃 サンパウロ・グアルーリョス国際空港到着(日本時間14日午前6時頃。家を出てから約38時間経過)

空港に着いてホッとするのはいつも、着陸した時でもなく、入国審査を通過した時でもなく、バゲージクレームのベルトコンベアーから自分のバゲージが出て来た時だ。いままでロストバゲージの経験はないけど、自分のだけ出てこなかったらどうしよう、といつも不安になる。それとバゲージタグは付いているけど誰もそれを確認せず、みんな勝手に荷物をピックアップしていく。だからボクはスーツケースの取手に派手な色のバンダナを巻くようにしている(今回はピンク)。同じスーツケースでも持った時に気づくと思うから。間違えて持って行かれてはたまらないからね。長旅で到着したとき、みんなボーッとしてると思う。ボクもそうだから。

【心配その1】『サンパウロ空港でチケット発券』
サンパウロに着いて最初の大仕事。試合の観戦チケットを現地のFIFAチケットセンターで発券手続きをしてチケットを受け取らなければならない。ギリシア戦とコロンビア戦のチケットをサンパウロ空港にあるチケットセンターで発券する。「そんなの行くだけやん」とお思いかも知れませんが、そこは日本の成田空港ではない。だってブラジルなんだもの、サンパウロなんだもの。しかもあまり信頼できないFIFAだし。何があるかわからない。何があってもおかしくないのがブラジルだと思っている。入国して次の便のチェックインの前に行くのでスーツケースを転がしながら発券センターへ行かねばならない。『ブラジルでの単独行動は危険』というルールに乗っ取り、同じようにサンパウロ空港で発券する人を探し、その人と一緒に行動することにする。ひとりよりふたり。ふたりより三人だ。

カラピナとゴムひもスーツケースの命綱

さらにボクは、スーツケースを守ることを考えていた。乗り換えの時間も長いので、空港でスーツケースを引きずる時間が長いと思った。手を離す瞬間もあるだろう。その時、持って行かれたりしないように。ユザワヤと東急ハンズで買った太いゴムひもとカラピナで身体とスーツケースを結ぶことにした。そんな鍵っ子のようなヒモ付きの旅行客なんてたぶんいない。しかしボクはひも付きスーツケースでいくことにした。たぶんスーツケースをかっさらっていく泥棒はいないと思う。そんなバカみたいな用心をすることで警戒マックスであることを自分にも意識させることも大事だと思ったから。それと泥棒にも「ボクは相当用心してるんだぜ」とアピールすることと「そんなヤツを狙うのは面倒くさそう」と思わせたかった。(そんな効果はなかったのかもしれないし、人はそれを笑うかもしれないが、自分の気持ちを引き締める効果はあったと思う)

チケットセンターまで空港の外を歩いて行く。日が暮れたサンパウロの空気。やや蒸し暑い。気持ちが焦るせいか、汗ばんでくる。スーツケースを転がして歩くが、同じ便の土井さんと野本さんの3人で移動するので心強い(ありがとうございました)。FIFAからのメールのプリントアウトやレター、クレジットカード、パスポート、あらゆるものを準備して持って行った。思ったほど行列ができていなかったので安心。数台並んでいる機械にクレジットカードを入れるだけで発券できるはず。土井さんはうまく行っているようだ。ボクは、、、うまくいかない。FIFAのサイトから「何時くらいに行く」という「予約」が必要なのだが、飛行機の遅れで、その時刻を過ぎていたからかもしれない。ちょっと焦る。
チケットセンター土井さんが撮った写真。係の人に撮っちゃダメ!と言われた。
人のいるカウンターに書類を見せると女の子がニッコリ対応してくれたので助かった。顔写真を撮られてサインをして、ハイ、どうぞ。TADASHI NAKAMURAと名前の入ったチケットをついにゲットした。若い女の子の前で直立不動のオッチャンが合格通知をもらうような気分だった。

FIFAチケットこれを手にするまでどれほど時間と手間と労力がかかったことか

発券成功1こういう喜んで浮かれているときにスキが生まれる。要注意。

土井さん発券土井さんはなんと日本戦を見て一度帰国し、決勝を奥様と見るために再びブラジルに来るというスゴイ人

【心配その2】『サンパウロ空港でATM』

子どもの「初めてのお使い」じゃないんだから、ATMでお金を引き出すなんてカンタンじゃん、とお思いのことでしょう。機械の操作が不安なのではなく、「ブラジルでは、お金を下ろした後を泥棒が狙っている」と言われていたから不安だったのだ。ボクは銀行の両替ではなく、クレディセゾンのNEO MONEYというカードを持って行った。
BRASILネオマネーこれは日本円で自分の口座に入れておけば、現地では現地通貨で下ろせるし、残金があればクレジットカードのようにも使えるもの。とにかくキャッシュを下ろすとき細心の注意が必要だと思っていた。サンパウロの空港にはそのキャッシュマシンが並んでいるコーナーにガードマンが立っていてくれたのでちょっとホッとした。背後を気にしながら、キャッシュマシンを操作する。英語表記に切り替えるのに手間取るがなんとか500レアル(たった2万5千円程度でこの緊張感かと笑っていただいても結構です)を下ろすことに成功した。機械からブラジル紙幣がでてくる。ボクはすかさずそれを握りしめ、左右の背後に怪しいヤツはいないか確かめ、キャッシュコーナーの端っこに行き、壁のそばにしゃがんで靴ひもを直すポーズを取った。そこでも周囲を見渡し、誰かボクのことを見ていないか確かめた。気がつくとさっきのガードマンはいなかった。ボクは長いジャージをはいている。ホントは暑がりだから短パンで行きたいのだが、ブラジルでは長いジャージと決めていた。なぜなら足首に巻くポシェット(ランニングのときに腕に巻く用のもの)をつけていたから。大事なモノはカバンではなく足首に巻くことにしていた。下ろした500レアルは100レアルをダミーの財布へ、そして残りの現金とNEO MONEYのカードは足首に隠した。そのための靴ひも結ぶポーズだった。

アシックス表アシックス裏これを右足首の内側に

たぶんそんなことまでしなくても大丈夫だった人もいるだろう。しかしボクはできる限りの準備をしておきたかった。これでもか、これでもかという安全対策。あとで笑い話になればいいと思った。ブラジルでは何が起こっても不思議じゃない。まさか!という事故や事件が起こった後、みんなはきっと、こう言うんだ。「だってブラジルなんだもの」(つづく)


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