うれしい書評⑩

見憶えのある達筆

何十年ぶりかの福岡県北九州市門司区の柳西(リュウセイ)中学校の同窓会に出席しました。3年生の時の担任だった山田弘司(ひろし)先生にお会いできる、というので、拙著をぜひ読んでいただきたいと楽しみにしていました。同窓会で「エラそーに、本なんか書いちゃいました、エヘヘ」と手渡そうと思っていたけど、当日だと荷物になるし、ボクのことを事前に思い出しておいてもらうためにも、と先に送ることにしました。

見憶えのある達筆のお手紙が届きました。そこに「うれしい書評」があったのでここに記録しておきます。身内の、教え子の本なので多少のお世辞も含まれているとは思いますが、あまりにうれしかったので。
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拝啓
思いもよらぬ懐かしい人からの便りと本に驚きと嬉しさ、
感謝の気持ちが入り混じっています。

本は一晩で読んだ。読み終わったあとフッと思ったのが、
「小生が現職時代、この本と出会っていたら、「暴力教師」どころか、
誰からも信頼される教師になれていたのでは?」だった。
本当にすばらしい本です。我が子にも早速読ませます。


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注釈:山田先生は体育の先生で、竹刀などの道具で多少「威嚇」することはありましたし、キックなどの手段もありましたが、それは決して暴力などではなく、正しい「指導」だったと全生徒は思っています。(だから今でもみんなから慕われているんです)

なによりうれしかったのは、お会いしてボクのことを憶えていてくださって、「タダシもええ本を書いたのぅ」とうれしそうに、ニコニコ褒めてくださったこと。「恩師孝行」ができたと思いました。

うれしい書評①(メルマガ土井さん編)
うれしい書評②(アマゾン編)
うれしい書評③(マーケター原さん編)
うれしい書評④(中村組OB編vol.1)
うれしい書評⑤(中村組OB編vol.2)
うれしい書評⑥(TCC会報家田さん編)
うれしい書評⑦(コピーライター以外編)
うれしい書評⑧(コピーライター編)
うれしい書評⑨(信用組合月刊誌編)
うれしい書評⑩(山田先生編)

長友さんと一緒に【稀代】⑨KOMATSU BAR

長友さんはいつもニコニコ。だけど、こんなに笑った長友さん、見たことないでしょ?時々、声が出なくなるほど笑う時がありました。ホントにお腹、痛そうでした。
クリネタ32号 Photo by 木内和美

「稀代」(けったい)とは、なんだ?クリネタおススメの、いい店、おもろい店
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KOMATSU RESTAURANT & BAR
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ホテルの匂い
そのBARに入ると、なんだか昔、来たことのあるような不思議な気がした。でも住所を調べて初めて来たのだから、そんなはずはない。銀座のど真ん中、ギンザコマツビルの西館7階にあるレストラン&バー、KOMATSU。オーナーの小坂敬さんと長友編集長が旧知の仲で、今回の「稀代(ケッタイ)」の取材を受けていただけることになったのだった。

広いバーカウンターと、何席かソファの席がある。バーカウンターとソファの席・・・。そうだ、昔のパレスホテルのBARもそんな感じだった記憶が。ホテルのBARには、なんというか独特の居心地の良さがあるように思う。宿泊客、とくに長期滞在のお客様がくつろげそうな、オーセンティックなんだけどホッとする、友だちのお宅の応接間にでも通されたような安心感があったりする。

このレストラン&バーKOMATSUは、オーナーの小坂さんがどうしてもつくりたくてつくったBARだそうだ。ソファ席の奥に、大きな柱時計が置いてある。実に堂々としている。しみじみ眺めていると「それ、フェアモントホテルにあった柱時計なんですよ」と店長の大島亜希子さんが教えてくれた。東京千鳥ヶ淵にあった、春には皇居の見事なサクラを見せてくれたフェアモントホテル。小坂敬さんはフェアモントホテルの経営者でもあったそうだ。バーカウンター→ソファ→パレスホテルのBAR→フェアモントホテル・・・昔来たような不思議な気がしたのも、まんざら偶然でもなさそうだ。


開店時間は16時。BARにしては早いほうだと思うが、そこは銀座。残業なんて野暮なことをしない大人たちが集まる時間。開店とほぼ同時に、上品そうなご夫人二人連れのお客様がご来店。ソファの席へ。「何になさいますか?」と大島さん。すると、そのご夫人は「泡、ちょうだい」とおっしゃる。「泡」とはシャンパンのこと。

広告業界のグルメで知られたプロデューサーもよく使う言葉だった。その、ある種、業界用語的な言葉を、上品な銀座のマダムの口から聴けて、なんだかうれしくなった。「泡って、みなさん、よく使う言葉なんですか?」と尋ねると、「ええ、泡とかシュワシュワくださいとか注文されるかたもいらっしゃいますよ」と大島さんが笑った。シャンパンください、より、泡ください、のほうが粋だ。しかし、ビールを泡とは言わないんだなぁ。ビールはビールか。

これはだあれ?
ほとんどの人が「これはだあれ?」と聞いてきそうな場所に、その絵は飾ってある。線画の肖像画。絵に筆で「これはだあれ?」と書いているものだから、「どなたなんですか?」と聞いてみると、オーナーの小坂敬さんの肖像だという。下に作者のサインが見える。アルファベットで書かれてた「K」が読めた。Koshi・・・「コシノヒロコさんです」オーナーにはお会いしたことはないが、かなりのイケメンだと想像できる。コシノヒロコさんは、この絵をどういう状況で描いたのだろう。小坂さんって、こんな感じだよね、とサササッと描いたのだろうか。深く考えずに最初に描いたタッチが、案外本質を突いていたりするから、この絵はかなり「本質」を突いているのだろう。

ニョッキ
メーカーズマークを注文すると、オン・ザ・ロックスのグラスが布のコースターに置かれる。「本日のお通しのニョッキです」と出されたのは片手には余るほどの器にたっぷりのチーズニョッキ。冷たいお酒を飲むときに、ちょっと温かいおつまみはうれしい。

ひとくち食べて驚いた。ちょっといいレストランで出てきてもおかしくない味。本格的すぎる。たしかに入口に置いてあった黒板に書かれたメニューは気になってはいた。BARにしてはかなり充実した食事のメニュー。「RESTAURANT & BARですから」と大島さんは笑う。カウンターの長友編集長「あのナッツ、ある?」と聞く。いつもは「なんか温かいもの、ある?」と頼む編集長が、ナッツにこだわった。「ここのナッツが、うまいねん」残念ながらその日「そのナッツ」はなかった・・・。

お通しのニョッキ

バーニャカウダ、エビとヤリイカのフリット、生ハム、チーズの盛り合わせを頼む。「あ、そうそう、ナポリタンやねん」と長友編集長が思い出したように話し出す。黒板のメニューには「オススメ!」みたいな表示がなくても、わかります。こういうメニューの中に「スパゲッティナポリタン」とあるだけで、その自信がうかがえます。来た来た来た!ナポリタン。色が濃い。見るからに濃厚。このスパゲッティナポリタンは別格だ。

そうそう、ナポリタンやねん

そしてもうひとつ気になったメニューがあった。「復活!牛すじカレー」だ。「復活!」ということは以前からあって評判だったのに何かしらの理由で止めていた、その「復活!」なのだろうから、うまいはずです。う〜む、クリネタ一回の取材では全部は食べ切れないなぁ。

シェフの佐藤さん
さきほどの「泡」を注文されたご婦人たちのテーブルに食事が運ばれていく。失礼にならないようにちらっと見ると「ハンバーグステーキ」だった。それもおいしそうだ。

後日もう一度取材させていただいたとき、シェフの佐藤さんにお話を聞くことができた。一流のレストランで何年もお勤めになったベテランシェフ。何料理というふうにこだわるのではなく、自由に工夫しながら料理をつくっていく。「このトマトソースには少しコニャックを垂らしてみよう」とか「新しい生春巻きはつくれないだろうか」とか考えながらつくっているそうだ。田舎風パテ、魚のテリーヌ、白子のマリネ、海老マヨネーズ、そしてチーズニョッキなど、週替りの付きだしが用意されている。「それを楽しみに通ってくださるお客様もいらっしゃいます」ですって。

好きな席
ウェブサイトには「会員制」とあるのだが、「事前にお電話してくだされば大丈夫ですよ」と大島さん。4、50名程度の貸切パーティにも最適な場所ではないだろうか。「クリネタで見ました」と言えば、話が早いかもしれない。初めて行く人に(全く個人的に)おススメしたい席がある。ふつうひとりで行く時はカウンター席だろうが、でも敢えて、一番奥の、フェアモントホテルの柱時計の影に隠れるようにあるソファ席。ここはこのBARのエアポケットのような場所だ。ひとりで静かにいるのもいいし、誰かとヒソヒソ話すのにもよさそうな場所。常連になったら、この席に案内されるようになりたいなぁ。

 

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KOMATSU RESTAURANT & BAR
http://www.komatsubar.jp/
〒104−0061 東京都中央区銀座6−9−5ギンザコマツ西館7F
03-6280-6690 (TEL/FAX)
営業時間 16:00 – 24:00 (L.O.23:00)
定休日   土日祝休み(土曜日は前もってパーティ等のご予約があれば営業します)
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No.32 (2015年冬号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月
長友さんと一緒に【稀代】⑥EST!
長友さんと一緒に【稀代】⑦赤道倶楽部
長友さんと一緒に【稀代】⑧ボロンテール
長友さんと一緒に【稀代】⑨KOMATSU RESTAURANT & BAR

山田先生への手紙

恩師に手紙を書く。まずキーボードでテキストを打つ。この漢字は間違っていないか、この言い回しは適切かどうか、確認しながら、何度も修正しながら書く。ほんとにデジタルの道具は便利だと思う。

そして、万年筆にインクを入れて、Macのテキストを見ながら清書する。字を間違えないように、ゆっくり書く。書き上げた原稿用紙を便箋に入るように三つ折りにする。そして読み返してみる、そのとき。

右手の中指と人差し指についたインクの指紋が原稿用紙についてしまった・・・書き直し。同じ文面を書く。今度は洗った手についた水で字がにじんでしまった・・・また書き直す。ほんとにアナログの道具は不便だと思う。

だから、手書きでもらう手紙はうれしいんじゃないだろうか。インクのシミがついていても、自筆で書いてくれたのだから多少のことは気にしまい。それより、そんなに手間をかけて、時間をかけて自分のことを考えてくれたということがうれしいじゃないの。と、相手も思ってくれることを期待して。

人に伝えるということは、文章の技術だとか、文字が達筆だからとか、そういうことは関係ないと思っている。相手への思いをどれだけ込められたか、じゃないかと、ボクは勝手にそう思っている。自己満足かもしれないけれど。

中学時代一番怖かった恩師に自分の書いた本を送れるという、有難き幸せ。今年のお盆は、何十年ぶりかの福岡県北九州市門司区の、中学時代の同窓会に出席する。

長友さんと一緒に【稀代】⑧ボロンテール

軽く握った右手のグーをカウンターに置き、「○○○○や、っちゅうてんねん」とか言いながら、軽くトンと叩く仕草がありましたなぁ。
クリネタ31号 Photo by 木内和美

「稀代」(けったい)とは、なんだ? クリネタおススメの、いい店、おもろい店

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JAZZ BAR ボロンテール
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長い友だち

赤坂見附の一ツ木通りに、和田誠さんのイラストが飾られた店があるのをご存知だろうか。ビルの2階の窓に飾られているので、歩いていても気づかないかもしれない。店の前を歩くより、舗道の向こう側からのほうがよく見える。サックスを持ったレスター・ヤングと唱うビリー・ホリデー。JAZZ BAR ボロンテールだ。

赤坂に引越してきて4年、その前は明治通り沿いの原宿で34年。1977年オープンの老舗バーである。われらが長友編集長が38年前から通っていたバー。長くお店を続けるのもタイヘンだけど、通い続けるお客さんもタイヘンだ。いや、毎日顔を出すわけではないので、そうタイヘンでもないか。むしろ、そんな長いこと通えるバーがあることが幸せなことだ。お店を友だちに喩えると、長いつきあいの友だち、幼なじみのような友だち。(あ、「長」い「友」さんか)原宿から赤坂に引越しても友だちに会いに行く。友だちが会いにきてくれる。

 

シルバー街

原宿でスタートした当時のボロンテールは、ファッション業界デザイン関係の溜り場だった。そう、セントラルアパートがあった時代。そのあたりには小さな店が何軒かあった。常連さんたちはそこを「シルバー街」と呼んでいて、長友さんは「シルバー街に寄ってから、(新宿の)ゴールデン街に行ってたんよ」だそうだ。

原宿のお店は明治通りの拡幅工事のために立ち退くことになる。そういえばあの、明治神宮前の交差点近くから、明治通りの渋谷方面へ斜めに入っていく道がある。その道を行くと明治通りに合流する三角地帯のような場所があった。ああ、あそこの角だったんですね。角の細いビルで、らせん階段を2階に上がったお店だったそうだ。「和田誠さんの描いてくださった当時のお店のイラストがあるんですよ」とオーナーの坂之上京子さん。週刊文春の表紙に描かれたイラストが額装されて飾ってあった。

幸運なレコードたち

昼はカフェタイム。(弟の聡さんがマスターで、野菜たっぷりパストラミ・ビーフサンドがおススメ)夜はバータイムで、いつも名盤LPのジャズが流れている。お酒の種類よりレコードの数のほうが圧倒的に多い。だって約三千枚。長い年月かけてコツコツ集めた貴重なアナログレコードとジャズメンの肖像画や写真が飾られたバー。

『ボロンテール』とは「ボランティア」の語源となったフランス語で、「気ままな空気」「前向きな、いい空気」といった意味らしい。オーナーの京子さんがつくりたかったお店のイメージ通りのネーミングだ。三千枚ものレコードがあって「お客さまからリクエストがあったらすぐ見つかるのですか?」と聞くと、だいたい何がどこにあるか、頭に入っているらしい。京子さんなりのルールで整理しているそうだ。小柄な京子さんが一番出しやすい位置の棚にはよくかけるアルバムが置いてある。

「この三千枚のレコード、実は危なかったんですよ」と京子さん。原宿を立ち退く日が迫っているのにまだ次の行先が決まっておらず、もう少しレコードだけでも置かせてもらえないか、とお願いするもダメで。仕方なく倉庫を借りてそこに預けることに。それが2011年2月末日。つまり、3.11の直前だったのだ。もしあの時そのまま、原宿の店に置いたままだとたぶんレコードも被害を受けていたはず。もう二度と手に入らない貴重な名盤たちが命拾いした。そう思うと、原宿から赤坂に引っ越さなければならなくなったのも、何か運命なのかも、と思えてくる。

ふたつの心臓

この「ボロンテール」のこの三千枚のレコードは財産であると同時に、オーディオ機器も重要だ。60年代のJBLアンプ。古い曲を聴くのにはやはりその時代につくられたオーディオが合う。JBLというとスピーカーをまず思い浮かべるが、オーナーにとってはこのJBLアンプが大事なのだという。なにしろ2台もあるのだから。「なぜ2台もあるんですか?」と聞くと、「もし壊れたら困るから、予備に」ということ。まさにボロンテールの心臓なのだ。

オーナーの京子さんにレコードの話をお聞きしていると、うれしそうに話してくれる。CDやiPodで音楽を聴くことが当たり前になってきたけれど、そういえばターンテーブルのレコードで音楽を聴いていないなぁ。ボロンテールには、33と1/3回転のLP(ロング・プレイ)、45回転のEP(エクステンディッド・プレイ)、そして、1分間に78回転のSP(スタンダード・プレイ)がある。

音楽好きなお客さんのために、なかなか聴けないSP盤大会やEP盤大会の夜もあるらしい。店内を見渡すと窓の上にロール式のスクリーンがあった。「あれは何に使うんですか?」と聞くと、「トークショーをときどきやるんです」という。映像を見ながら、シャープ&フラッツの原信夫さんによる「戦後のジャズ史」のトークショーも開かれたそうだ。

秘密の蓮の花

白木の曲線のカウンター。オーディオやレコードを収納する棚にも曲線が活かされた内装。「原宿のお店の雰囲気もこうだったのですか?」と聞くと、全然違うのだという。「だって、新しいものをやりたいじゃないですか」と京子さん。

「でもね・・・一か所だけ前の店の名残があるの・・・」と。当時お店に、蓮の花のカタチをした照明器具があった。その照明はもうないのだけれど、その「蓮の花」を模った照明を作ってもらった。それはお店の中の、とある柱の上にさりげなく灯っていた。たしかに蓮の花だ。Kenny Dorhamのロータス・ブロッサムという曲にちなんだのだという。原宿時代からのお客さんも、気づいている人は少ないんじゃないかな。こんどお店に行ったとき、柱の上を見渡して見つけてください。ロータス・ブロッサムです。

常連のリクエスト

若い頃はたくさん買えなかったけど、コツコツ買い集めてきた愛しいレコードたち。「もしかしてビートルズのLPとかもあったりして、アハハ」と冗談のつもりで言ってみたら「あるんですよ」ですって。カウンターからは一番遠い棚の上のほうにあるらしい。閉店時間が近くてお客さんがいないときにかけることもあるという。JAZZ BAR ボロンテールでビートルズを聴けるにはもっともっと常連にならなければリクエストはできないだろう。クリネタを読んで来ましたと言えば、かけてくれるかな。
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JAZZ BARボロンテール
http://volontaire.jp

〒107-0052 東京都港区赤坂5-1-2 赤坂エンゼルビル2F
営業時間   12:00 – 02:00
CAFE TIME  12:00 -19:00 (L.O.18:30)
BAR TIME  19:00 – 02:00(L.O.01:30)

定休日      日曜
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No.31 (2015年秋号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月
長友さんと一緒に【稀代】⑥EST!
長友さんと一緒に【稀代】⑦赤道倶楽部
長友さんと一緒に【稀代】⑧ボロンテール

蛇足:この日の取材のあと、まだ明るい夕方だった一ツ木通りを編集団で歩いていて、セールをしているブティックの前を通りがかる。すると長友さんは「ちょっと見てみる?」と店に入り、これええね、とチェックのシャツを2、3枚ご購入。「なんか旅先のお店で洋服買ってるみたいですね」というと「ゆっくり買いに行く時間がないねん」と。そしてみんなで近くの開高健さんも通っていたBARへ。しあわせな時間でした。

うれしい書評⑨


「しんくみ」ってご存知ですか?はい、信用組合の略です。で、その一般社団法人全国信用組合中央協会の役職員の方のための「しんくみ」という月刊誌があるそうで。その書評に『最も伝わる言葉を選び抜く コピーライターの思考法』を取り上げていただきました。広告業界のコピーの本が信用組合の方々に紹介されている。はてな、どこでボクの本を見つけてくれたのでしょう。ありがたいことです。

「世の中のあらゆる仕事はクリエイティブであり、言葉はすべて広告コピーの要素を持っている」と本にも書きました。店頭POPにも書きました。それが証明された、というわけです。人に伝える言葉を選ぶという仕事は、なにも広告業界、コピーライターだけに限った話じゃないですもんね。広告業界以外の、信用組合の役職員の人たちの月刊情報誌に取り上げていただいたなんて、感激です。

さらにビックリしたことに、その文章を書いてくださったのは「社会生態学研究者」の方らしい。世間を観察しながらコピーを考えるボクのスタイルを発見されたような気持ちです。とくにうれしかった一文がありました。「コピーについての教科書的な本ではない。コピーライターという一人の人間の血の通った物語が端々に浸透していて、読み終えたときに、いい温泉に浸かったような感覚さえ湧いてくる」なんと素敵なお褒めの言葉でしょう。温泉のような文章、なんてうれしいじゃないですか!

本に、コピーを書くことは「会ったこともない人を泣かす仕事」だと書きました。まさに、会ったことのない人がこの本を見つけてくださって、深く読んでくれた。有難すぎる書評です。

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うれしい書評①(メルマガ土井さん編)
うれしい書評②(アマゾン編)
うれしい書評③(マーケター原さん編)
うれしい書評④(中村組OB編vol.1)
うれしい書評⑤(中村組OB編vol.2)
うれしい書評⑥(TCC会報家田さん編)
うれしい書評⑦(コピーライター以外編)
うれしい書評⑧(コピーライター編)
うれしい書評⑨(信用組合月刊誌編)

 

長友さんと一緒に【稀代】⑦赤道倶楽部


ボクも、タックルとかしてたんやでぇ とラガーマンの長友編集長
クリネタ30号 Photo by 木内和美

「稀代」(けったい)とは、なんだ? クリネタおススメの、いい店、おもろい店

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赤道倶楽部
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バーは、カウンター
赤道に行ったことはありますか?赤道と聞いてどんな風景を想像しますか? 海か、砂漠か、密林か。今回の稀代(ケッタイ)なお店は銀座にある「BAR&RESTAURANT 赤道倶楽部」

店に入るとまず目に飛び込んでくるのが不思議なカーブを描く真っ赤なカウンター。店の中央をぐるりと囲む大きな唇のような真っ赤なカウンター。その不思議なカタチは実はアフリカ大陸を表わしているのだそうだ。アフリカ大陸のカタチをデフォルメしたカウンター。スタッフが出入りするために開いている部分がちょうどアフリカ大陸東側の赤道。今回の取材写真で、三人の編集団が座っているのがコートジボワールあたり。取材の私は南アフリカあたりに着席。カウンターはアフリカ大陸だし、壁には象徴的にスポットライトがあたるムパタのピンクのサイ。

実は私、この店をアフリカの店かと思い込み過ぎていた。お店のコンセプトを読むと、『赤道地帯の恵みを再発見』とある。そうか、赤道は地球を一周しているので、アフリカだけのものじゃない。赤道直下の国々にはボルネオ島やスマトラ島を含むマレーシア、インドネシア諸国、ケニア・ウガンダ・タンザニアなどアフリカ諸国、エクアドル・コロンビア・ブラジルなど南米諸国もある。ま、でも、そんな堅いこと言わずに飲みましょうか。(毎号クリネタの稀代をお読みになってくださっている人は気づいたかもしれません。前号の『湯島EST!』の見出しには「バーは、棚」と書きました。今号は「バーは、カウンター」です。そのBARに初めて入った印象がそのBARを決める、と勝手に決めたのでした)

マイネーム・イズ・真羽闘力
「赤道倶楽部」のコンセプトや自慢のメニューの話もしたいのだが、最初に彼の話をしないわけにはいかないだろう。今年の4月から店員として迎えた大物。名刺は「真羽闘力」さん。力士ではない。「まう・とうりき(Toriki Mau)」さん。ラガーマンだ。しかも、元日本代表のラガーマン。赤道にも近い南太平洋に浮かぶ島、トンガ王国出身。日本語はペラペラ。それもそのはず、日本に来て早や20年。神戸の名門六甲クラブでずっとラグビーをやってきたのだ。残念ながら私はサッカー派なので、このマウさんの凄さはわからないが、ラグビーの本場から来て日本に帰化して日本代表で戦った選手。サッカーで言えばラモス瑠偉か呂比須ワグナーか田中マルクス闘莉王といったところだろうか。思わずお店の取材を忘れて、ラグビーの話で盛り上がる。

185cm110kgの肉塊が100m11秒台で向かってくる。なんて恐ろしい競技なんだラグビーは。そういえば、我らがクリネタ長友編集長もラガーマンだった。あんなニコニコしながら「まあ、ええやないの」とか言いながらタックルしていたのだろうか。想像できない・・・。まあ、いいけど・・・。

マウさんのごつい手がメーカーズマークのオン・ザ・ロックをつくる。メーカーズマークってミニボトルもあったんだっけ?と思うほどのボトルの小ささ。いや、マウさんの手がデカイのだ。山崎12年もミニボトルに見える。ロックグラスがショットグラスに見える。「お酒も相当強いんですか?」という質問に「はい」と即答。聞くまでもなかった。

そのマウさんの手にカメラマンのレンズが寄っていく。「ちょっと撮らせてもらっていいですか?」ごつい手にキレイなタトゥー。なんか云くがありそう。このタトゥーの物語は、直接お店で聞いた方がいいだろう。 あまりラグビーの話ばかりしていると、赤道からズレてくるので、この「赤道倶楽部」の話に戻そう。

この店は、体育会の部室のような店ではなく、もっとスマートなBAR&RESTAURANTなのだ。メニューはあとで紹介するが、女性のバーテンダーもいるお洒落なBARだ。赤道直下から来た女性ではないが、常時2名いる。ムパタの絵のそばにはアフリカの写真集なども飾られてあり、ギャラリーのようでもある。

なぜ「赤道」なのか
「赤道倶楽部」にはちゃんとした理念がある。なぜ「赤道」なのか。「赤道」じゃないといけなかったのか。『太平洋、インド洋、大西洋に帯状に分布する赤道気団のもと、高温多湿の気候条件に恵まれ、多様な動植物の、生命の彩が濃密な地域。赤道地帯は人類発祥の地でもあり、大航海時代以降は、その豊かな生物資源が世界中の食文化に多くの影響を与えてきました。「赤道倶楽部」では、そんな赤道地帯の恵みとして、ナッツやスパイス、赤道の国々で親しまれているビールなども取り揃えて・・・・』(パンフレットの文章より)とある。タスカーというケニアのビール。殻付きのままローストしたマカデミアナッツ。食事療法にも欠かせない食材「スパイス」にこだわったメニュー。チョリソー入りポテトサラダなどのおつまみから、お腹の空いた人のためにサラヤの10種の野菜カレーも用意されている。

赤道の約束
最後に、「赤道倶楽部」の活動を報告しておこう。それは「赤道倶楽部1%基金」だ。売上の1%を赤道周辺の途上国・地域の「衛生・環境・健康」向上に寄付している基金。赤道直下で活動する「NPO法人 ボルネオ保全トラスト・ジャパン」「スマイル アフリカ プロジェクト」という2つの団体を支援している。赤道直下のビールを飲みながら、赤道直下のスパイスの効いたサラダを食べながら、遠い赤道の国々を思いながら、アーコリャコリャになっていく。我らがクリネタも記念すべき30号を迎えた。「100号記念はみんなでアフリカに行こか!」と長友編集長が言う。しかし、その頃までみんな元気でいられるだろうか。せめて50号記念くらいにしときましょか。

BAR&RESTAURANT 赤道倶楽部
http://sekidoclub.com/
東京都中央区銀座1-13-8 ハビウル銀座2F
■03-6228-7295 営/18:00~24:00(23:30ラストオーダー)
休/土日祝

No.30 (2015年夏号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月
長友さんと一緒に【稀代】⑥EST!
長友さんと一緒に【稀代】⑦赤道倶楽部

長友さんと一緒に【稀代】⑥ EST!

へー、そのフレンチフライ食べてみたかったですなぁ と長友編集長
クリネタ29号 Photo by 木内和美

クリネタらしいBARを紹介する、稀代(ケッタイ)の記事をご紹介します。長友さんと一緒に取材に行ってまとめた記事です。

「稀代」(けったい)とは、なんだ? クリネタおススメの、いい店、おもろい店
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EST!
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バーは、棚
「稀代」で取材させていただく店は「ケッタイな店」イコール「風変わりな店」ではなく、むしろ「唯一無二な店」「ファンタスティック!な店」の意味あいが大きい。今回は「湯島」と聞けば、「あ!」と思い出す人も多いのではないだろうか。オーセンティックなバー、EST!だ。ここを知らないなんてバー業界のもぐりではないかとさえ言われるくらい老舗中の老舗バー。オープンは1974年、この湯島の地でかれこれ41年。マスターの渡辺昭男さんは今年8月で81才を迎える。お元気です。なにか健康に気を付けていることはあるんですか?と聞くと「毎日ちょこちょこ動くことですかね」と笑う。天気のいい日は湯島まで自転車で通うこともあるそうだ。

カウンター9席、テーブル4席の小さなバー。重厚な雰囲気を醸し出しているのはバーの顔でもある酒の棚だ。渡辺さんが昔見た、ドイツの倉庫の写真からイメージされてつくられたもの。太い柱で組まれたその棚は東日本大震災の時もビクともしなかったそうだ。

「店を始めたころはこの棚もガラガラで淋しかったんです。この棚がいっぱいになるくらいのお酒の種類を揃えられなかった。それを見かねた人がBlack&Whiteを一列贈ってくれて。最初はそればっかりが並んでいたんです」
と渡辺さんは笑う。そうか、それでこのEST!の入り口にはBlack&Whiteのボトルがたくさんディスプレイされているんだ。オープン当初の感謝の気持ちを忘れずに41年目の営業をしているんですね。

「この店の柱や梁の木は私が焼いたんですよ」と渡辺さん。大工さんに頼んでも「できない」と言われたので、自分でガソリンバーナーで焼いて、タワシでゴシゴシ磨いて、自分で組み立てたそうだ。自分で組み立ててみて、なぜ大工さんが嫌がったかがわかった。手も身体も炭で真っ黒になってしまったのだそうだ。41年という歳月の味もあるだろうが、渡辺さんのその情熱がしみこんだ柱や梁がこのバーの雰囲気を作ってくれているのだろう。初めての来店でも落ち着いた気持ちになれるのはそのせいかもしれない。

ちょちょっとしたもの
昔は軽食として温かいものも出していた時もあったが、今はもうやっていないそうだ。「昔はフレンチフライを揚げていたんですよ。毎日ジャガイモ洗って切って、一日さらして翌日揚げて。若い頃はそれを毎日やっていたんですが、でも、いまはもう、ね。ちょっとシンドイもので・・・」一日分を切って洗って一晩さらして翌日揚げて。それを聞いただけでうまそうなフレンチフライ。絶対うまいはずです。食べたかったけど、いまはもうない。昔のEST!に通っていた人がうらやましい。

「ライ麦パンならありますけど、焼きましょうか?」なんか温かくて、ちょちょっと食べれるものはないですか?という長友編集長のお願いにやさしく応えてくれました。「クリームチーズをパンにはさんで焼くだけなんですが」「ぜひお願いします!」バーテンダーのつくる「ちょちょっとしたもの」って、なんかうまそうだ。

バーテンダーと薬剤師
満州で生まれ、九州佐賀県育ちの渡辺さんは薬剤師を目指して上京した。それがどういうわけか渋谷宇田川町のトリスバーの求人広告に目が留まり、バーで働くことになる。薬剤師とバーテンダー。薬の調合とカクテルづくりは、まあ似てるといえば似ているけれど、どうしてこの世界にはいっちゃたんでしょうかねぇ、と笑う。

60年前の渋谷宇田川町。バーといえばトリスバーくらいしかなく、渋谷の街はチンピラだらけ。「毎晩その辺に人が倒れているような街」だったそうだ。渋谷はヤバイ、銀座へ行こう。その後銀座のバーに移るものの、上野にバー「琥珀」がオープンするというので転勤。銀座の店からは「早く銀座に帰ってこい」と懇願されるも「琥珀」のママも渡辺さんを手放さない。結局上野の「琥珀」に18年。そして念願の自分の店「EST!」を湯島に持つことになる。

「EST!」とはフランス語で「ここにある!」という意味。東京大学醸造学の坂口健一郎教授が命名してくださったそうだ。店の外には「EST! EST!! EST!!!」と、ビックリマークが増えていくネオン看板が「ここにある!」と静かにアピールしている。

修行はチラ見
渡辺さんのふたりの息子さんもバーテンダーだ。長男の憲賢さんは、新橋のアトリウム・エン、次男の宗憲さんはアトリウム。ふたりとも新橋で。長男は東京のパレスホテルのBARで5年、次男は札幌の「BARやまざき」で、それぞれ修行を積んだそうだ。お父さんの元で修行させないんですか?と聞くと、「やはり外に出ないとね」と。

バーテンダー見習いは、ただひたすら見て習うそうだ。ああしろこうしろ、ではなく師匠の姿を見て盗む。カウンターの中でひたすら観察するのだ。お客様の前でつくるので、それを横からじっと見つめるわけにもいかない。「グラスを拭く素振りなどしながら横目でチラチラ見ながら盗むんです」と笑う。そこでの発見なり記憶なりが自分の味となっていくのだろう。(どんな仕事もそうなんですね。「教えるということは、自分の姿勢を見せること」と3代目市川猿之助さんも言っていました)

たとえばギムレット。辛口が好きなお客様もいれば、やや甘めが好みの人もいる。そのお客様の好みを探りながら、こうかな?ああかな?と試行錯誤するのが楽しいという。「ある意味、バーテンダーはお客様に育てていただくものかもしれませんね」。その渡辺さんは『お客の心で主(あるじ)せよ』という言葉を大事にしているのだという。

 

観察力と記憶力
「昔のパレスホテルのバーにミスター・マティーニと呼ばれる今井さんというバーテンダーがいましてね・・・」渡辺さんはその今井さんがつくるマティーニ、何回ステアするのか、こっそり見ながら数えたことがあったという。「そのときはたしか、15、6回でしたかね」

パレスホテルのバーには筆者にも思い出がある。当時パレスビルにある会社に勤めていた私は、社長のSさんに連れて行ってもらったことがあった。「Sさんは常温のハイボールがお好きでしたね」と渡辺さん。え!Sさんのこと、ご存じなんですか!「ウチのお店にもよくお見えになりました。常温のソーダ水でつくるハイボール。Sさんの名前のハイボールでした」もうそのSさんはお亡くなりになって何年にもなるのだが、好きだった飲み方まで憶えてもらっているなんて、いいなぁ。そして、そうして憶えてくれているバーテンダーって、いいなぁ。私もこれから常温でハイボール、頼もうかな。

取材の後の記念写真 あの日は寒かったなぁ 長友さんと一緒の写真に写れるだけでシアワセなことです

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EST! 
東京都文京区湯島3-45-3
■03-3831-0403 営/18:00~24:00 休/日曜
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No.29 (2015年春号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月
長友さんと一緒に【稀代】⑥EST!

CEOの言葉が最高の広告コピー

出張先のコンビニでよく買うものがあります。エナジードリンクのレッドブルです。『元気出さなきゃ』という時、よく買います。エナジードリンク系は普段はあまり買わないのですが、買うならレッドブルにしています。なぜか。広告がいいから?コピーがいいから? いや、違います。ボクはレッドブルという企業が好きだから、レッドブルを買っています。

こう言っては失礼でしょうが、エナジードリンクなんてどこも大差ないと思っています。こういう「大差ない」商品を買う場合、重箱の隅をつついてその微差を自慢する商品は買いません。レッドブルという企業がやっていることに賛同するから、レッドブルを買っています。

一番最初にレッドブルを知ったのは、サッカー日本代表の宮本恒靖選手がオーストリアのザルツブルクに移籍した時。レッドブルはそのスポンサーでした。(知らなかったのですが、レッドブルはオーストリアの会社のようです)

以来、気にして見ていると、ただ人気のスポーツに広告を出しているのではないことに気づきました。マウンテンバイクのダウンヒルという(日本ではまだマイナーな)競技の大会や、ややクレイジーとも言える危険な競技大会のスポンサーをしている。いやむしろ、そういう大会を率先して主催している。ただ人気スポーツ選手の「顔」にお金を払うのではなく、そのスポーツをするボクたちを応援している企業なのです。

先日、千葉の幕張でエアレースという飛行機の世界大会がありました。これもレッドブルが開催している。エナジードリンクという商品と一直線上にあるスポーツを応援する企業。商品と1mmもずれていない、全くぶれていないマーケティングだと思いました。

2014年の手帳にメモした言葉を思い出しました。レッドブルのCEOの言葉です。これを忘備録としてブログに残しておきます。痛快です。全く同感です。

『汚い短期決戦の広告を街にバラまくのではなく、長期的な市場を創り出そうとする広告が街に増えれば、草木を植えるように街が色づくのではないか』

本当にそう思います。このCEOの言葉こそが、最高のレッドブルの『広告コピー』だと思っています。

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レッドブルCEO デートリッヒ・マテシッツ氏

おそらくこれからの時代は、レッドブルやヴァージングループのように徹底的にマーケティングにこだわる企業か、グーグルやパタゴニアのように徹底的にプロダクトにこだわる企業しか生き残れないのかもしれません。アップルのようにプロダクトもマーケティングも完璧な企業も稀にありますが。

マーケティングと広告の意味を理解していない企業は俳優一人に億単位のお金を支払いますが、マーケティングのプロであるレッドブルは、マイナーな人たちを活用することで自分たちの価値観を世の中に伝えていきます。

汚い短期決戦の広告を街にバラまくのではなく、長期的な市場を創り出そうとする広告が街に増えれば、草木を植えるように街が色づくのではないでしょうか。

「今すぐ電話」や「○○で検索」ではなく、目に見えない価値観を伝える時代になりました。

レッドブルCEO デートリッヒ・マテミッシ氏
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長友さんと一緒に【稀代】⑤ 抱月


へー、そないなことになってんのん? と長友編集長

クリネタ28号 Photo by 木内和美

クリネタらしいBARを紹介する、稀代(ケッタイ)の記事をご紹介します。長友さんと一緒に取材に行ってまとめた記事です。

稀代(ケッタイ)とは、なんだ?
クリネタおススメの、いい店、おもろい店

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抱月
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「神楽坂のBAR」と聞くだけでもう、ちょっといい雰囲気の佇まいを想像してしまう。場所というか住所というか地名というか、そういう名前はとても大事なんだなと思う。地図を見ながら夕暮れ時の神楽坂を歩く。路地を入るといくつか目印になるお店を頼りに歩くと、暗闇にぼんやり灯りが燈る。料亭のような、個人宅のような「抱月」という灯り。ガラガラガラ。格子戸をくぐって「ほんとにここでいいのかな」と思いながら玄関へ。ごめんください、おじゃまします、という気持ちで靴を脱いで上がる。京都かどこかの小料理屋に迷い込んだような気分。

畳に座布団で足は伸ばせる掘り炬燵式カウンターに6、7人。こりゃ落ち着くわ。ここを知っている、というだけでちょっと自慢できる店だ。連れて来られたらたぶんうれしい。古い日本家屋に少しだけ手を加えた隠れ家のような会員制のBAR。出版社関係のお客様が多いらしく、いろんな本を置いて行ってくれる。いろんな本が置いてある。読書好きの人の家に上がり込んだような錯覚。

2階に上がる階段の下のスペースに、ちょうどいい二人用の席がある。小さなちゃぶ台と座椅子の席。階段があるということは2階もあるんですね。もしかして誰か住んでるわけじゃ・・・。「2階のお座敷も客間なんですよ」と。階段を上がると6畳ほどの和室。ここで落語の独演会をやることもあるそうで、常連さんグループの集まりや、なにやら「密談」するのにちょうどいい部屋だった。しかし二階の部屋は「男女二人っきりはお断りしています」ですって。

「一見さんお断り」とか「会員制」というような野暮な表示はしていない。けれど、この玄関の佇まいを見れば、ぶらっと来て入れる場所じゃないことくらいわかる。けれど年に何回か「ここ、お店ですか?」と言いながら迷い込む人もいるらしい。

紹介がないお客様はお断りする、というお店はたまに聞く。いままで「なんだか上から目線な店だなぁ」という印象だったけれど、お店側からしてみたら、お客様には来て欲しいけど、どんな人が入って来るかわからないんじゃあ不安でしかたがないだろう。やっぱり、一度来てくれて「いい人だな」と思えるお客様の知り合いなら安心できるし、もしイヤな人だったらその知り合いのお客様を通じて文句も言える。お客さんにとってもヘンな人が入って来ないほうがいい。

BAR「抱月」のオーナー松島薫さんは若いころ、銀座でお店を始めた。そのときの店の名前が「抱月」だった。島村抱月のことは知っていたが、とくに好きだったわけではなかったらしい。きっぱりそう言うところが清々しい女性だ。「月を抱く、なんてとても色気がある名前じゃないですか」銀座七丁目あたりで、小さなBARを始めた。お店が軌道に乗り始めた頃、「抱月」という名前を使わせていただいているのだから、一度ご挨拶に行かねばと、雑司ヶ谷にある島村抱月のお墓を訪ね、見守ってくださいと手を合わせたそうだ。律儀。

ところがお店が順調に行き始めたと思ったら、その店に建て壊しの話が持ち上がる。結局、銀座の「抱月」は3年で閉めることになる。20代で始めた銀座の店。お客さまも増えてきて、さあこれからという時に立ち退きを迫られる。さぞ悔しかったことだろう。お店への愛着もどれほどだっただろう。

と話していたら「ジオラマ、見ます?」と松島さん。精巧につくられた二十分の一のお店の模型。小さなカウンター、ソファの席、ボトルの棚、見事に再現されている。昭和の映画のセットのようだった。こういう模型を見て愉しむのは男だけかと思っていたら、案外松島さんも男っぽいんですね、というと「私はお店という空間をつくったんだと思っているんです。だから、写真じゃなくて、その場所の記憶や記録を三次元で残しておきたかったんです」今なら3Dプリンターで自分やお客さんのフィギュアも置きたくなってしまう。「トイレも作っておけば良かったと後悔してるんです。トイレもかわいかったんですよー」

銀座の「抱月」を閉めたあと、傷心の日々。とにかく一日でも早く日本を脱出したかった。そして「世界一周ひとり旅」へと旅立つ。ハワイからロス、アリゾナ、ラスベガス、グランドキャニオン、シカゴからAmtrakでニューヨーク。大西洋を渡りリスボン、マドリード、フィレンツェ、ウイーン、プラハ、ベルリン、フランクフルト、ブリュッセル。リールから船でドーバー海峡を渡りロンドン、ストックホルム、サンクトペテルブルク、モスクワ。北京、ソウル、そして日本。ふぅ。ほぼ2ヶ月のひとり旅。アメリカ横断鉄道やユーレイルを乗り倒した。まるで「ひとり世界の車窓から」だ。

「鉄道好きなんですか?」と聞くと「ええ、テッちゃんですよ」と軽く返ってきた。「見ます?」と差しだされた雑誌は「旅と鉄道」その表紙に駅にたたずむ女性。よく見ると「あ、似てる?」似てるんじゃなくて、その表紙の旅人は松島さん本人だった。「特集の『津軽半島一周紀行』のページ、私が書いたんです」と。14ページの特集記事。これ全部松島さんが?「本を読むのも好きですが、書くことも好きになってきました」と。

『傷は癒えたけど出会いはなかった』という世界一周の旅から戻り、今度は自分のペースでできる場所でお店を再開しようと場所を探し始める。偶然出会った神楽坂。この家の大家さんは若いころ芸妓さんで、ここに住んでいらしたそうだ。その大家さんは「いずれはここでBARをやりたい」と思っていたらしい。

大家さんはもう自分でお店はできない年齢になられたというので、この場所を貸す事にした。そんなとき、BARにしたいと思って探していた松島さんが現れた。運命的な出会いだったのだろう。どこの町で店を構えるか。自分のペースでできる店を出したかった、松島さんは考えた。「神楽坂を選んだのは、花街がいいと思ったから。神楽坂はほら、昔から女が商売をしてきた街でしょ」と。なるほど。
松島さんはこのBARが、あるいは松島さん本人が、人と人との化学反応の接点になれると面白いなと思っている。「いろんな職業のお客さんがいて、あの人とこの人が出会ったら、何か新しい、面白い化学反応が起きるかもしれない。そのキッカケになれたら楽しいですね」いちおう会員制のBARだから「クリネタを見て来ました」だけではムズカシイかもしれません。なんとか伝手を探して行ってみましょう。

追記:「本が好きで、書くことが好き」と聞いた長友編集長は即座に「クリネタになんか書いてもろたらえーやん」と。で、書評「きなみえりの読書感想文」というコーナーができました。

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抱月

〒162−0832 東京都新宿区岩戸町19番地

営業時間19:30〜24:00(23:30ラストオーダー)

土日祭日休み
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No.28 (2014年冬号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで
【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月

うれしい書評⑧

Photo by 岩崎亜矢

うれしい書評⑧コピーライターからの声 編

養成講座の受講生たちだけでなく、現在コピーライター、CMプランナーとして活躍している人たちも読んでくれました。その人たちの声をまとめてみます。
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岩田純平さん(コピーライター)
禎さん!読みました!一気に読みました!面白かったです!考え方やコピーの書き方ややってることが、ふしぎなほど僕と同じでびっくりしました。僕の場合、割と無意識でやっているので「ああ、そういうことか」と自分のやり方を禎さんの本を読んで納得するという謎の体験でした(笑)後輩にも勧めておきます!
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橋口幸生さん(コピーライター)
電通から独立された中村禎さんの著書、「最も伝わる言葉を選び抜く コピーライターの思考法」を読んでいます。本の中で登場する「ダメなコピーも書けないやつに、いいコピーは書けない」という言葉。これは会社の新人研修のときに、禎さんが言っていたことで、今でも昨日のように覚えている。いいコピーが書けないとき、プレゼンが通らないとき、賞を取れないとき、どれだけこの言葉に救われたかわからない。研修後も、僕がコピーを見てもらいたくて押しかけると、(仕事での接点はほとんど無かったのに)多忙な中いつも丁寧にアドバイスしていただき、応援していただいた。

才能がある人、やる気がある人は大勢いるけど、活躍できるかどうかは、こういう先輩や師匠との出会いに恵まれるかどうかも大きいと思う。コピーライターやコピーライター志望者が全員、禎さんに会って教えてもらえるわけでないけど、この本を買うことなら誰でもできる。内容は本質的かつ超実践的で、読んだ5秒後には実践できるノウハウが満載。コピーを書くときや選ぶときは、つねに手元に置いておきたい。
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中村直史(なかむらただし)さん(コピーライター)
じぶんは才能ないからコピーライターやめたほうがいいんじゃないか、と考える人は、とりあえず一回読んで、書いてあることを実践してみたら良いんじゃないかと思います。仕事で行き詰まったときにも読んで試すことをオススメします。チカラが出ます。そんなこんなで私は実践中です。
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岩崎亜矢さん(コピーライター)
大先輩であるコピーライター、中村禎さんの初となる著書は、わかりやすく、シンプルで、とても重要な言葉が詰まっています。私も宣伝会議や大学などで人様になにかを伝える身となったこの頃ですが、僭越ながら、私が生徒に言っていることと、おなじこともたくさん書かれていて、なんというか「ああ間違えてなくてよかった…!」とホッとしたとともに、やっぱり大事なことっていうのは普遍なんだと思ったり。

タダシさんの宣伝会議の講座は、宣伝会議のコピーライター養成講座において、大ヒットのご長寿講座。とにかく毎年、優秀な人材を輩出しています。厳しく、優しく、そして簡潔にたいせつなことを常に伝えている講座なんだろうなあと、この本を読み終わって、生徒の方たちがうらやましくなりました(かなり)。 普遍、っていうことは、コピーライター志望に限らず、アイデアを考える上で、どんな職業の人にもヒントになる本だと思います。

そしてとあるページに、むかし、父の放った言葉が載っています。それがどの言葉なのかは、是非読んでみて、想像してみてください。
(岩崎俊一さんの言葉を書かせていただいたので、本を謹呈させていただきました)
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大椛玲奈さん(コピーライター)
言葉を選ぶことも大事、って教えていただきながら、やっぱり長々書いてしまうわ…大好きなコピーライターの中村禎さんが執筆された『最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法』。先日は東京で出版記念セミナーがあり、福岡や名古屋など全国に中継されるとのことで、そちらにも参加してまいりましたー。いやー…面白かった。禎さんのお話、いつ聞いても分かりやすくて、面白くて大好き。本になったらいいのになー、そしたら絶対買うのになー、と思っていたら本当に本になりましたーーー!だよねぇ。直接お話聞ける機会なかなかないけど、勿体ないもんねぇ。

コピーライターじゃなくても、誰かに何かを伝えるときの考え方に、「おー!」ってなると思う。 私は最初からずっと職場にコピーライターの先輩がいなかったので、コピーの勉強をしているときに講師としていろんなコピーライターの人から話を聞けるのが、ものすごくありがたかった。前の職場の後輩にあげたいなー。なんか最近、”楽して得する”みたいなのが賢い、という感じのものが多くあるけれど、禎さんはその真逆。ずるしないし、ラクしない。広告だけじゃなく、ニュースとか、SNSとか、何でもそうなんだけれど、普段考えていることって言葉に出ると思ってる。

そりゃあお金欲しいし、美味しいもの食べたいし、ふかふかのお布団で眠りたいし、いいシャンプー使いたい。でもそのために後から自分で「恥ずかしいっ!」って思うようなことしてると、結局誰にも伝わらないと思う。えーと、本とか、CMとか、ラジオとか、歌とか、友達からかけられた言葉とか、思わず泣きそうになっちゃうことって今まで何度もあるけれど、その言葉はその人の中になければ出てこなかったことのはず。ということを、禎さんの言葉がいっぱい詰まった本を読みながら思いました。
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石井 陽一さん(コピーライター)  
中村禎さんの「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法」を読ませていただきました。この本は、広告制作者やコピーライターの志望者が読めば役に立つことがたくさん書いてあります。でも、一読者として、コピーライターとしてぼくがいちばん同感したのは、つぎの箇所です。

「広告費をいちばんたくさん出せる広告主が自動的に儲かるのであれば、クリエイティブで競う必要ないですもんね。だから本当は、いいコピーを見極める目を一番持たなければならないのは、広告案を選んでお金を払うクライアントだと思うのです」

コピーライターはもちろん、企業の特に広告や広報の担当者に読んでほしいです。高いコピー料を払って、いちばんいいコピーを使わなかったらもったいないじゃないですか。コピーライターのイチオシが選ばれないこと、ちょくちょくあるんです。 中村さん、執筆おつかれさまでした。
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眞木 茜さん(コピーライター)
きれいなすみれ色の本。一文一文、共感したり、発見したり、反省したり…コピーだなぁと思いました。父の話も書いてくださっていて。私もまだまだ道半ばなのだし、半ばな人の責任として、進もうと思った道を簡単に離脱してはいけないですね。父もよく「とりあえず3年、そのまま10年続けてごらん」と言っていたのを思い出しました。いろんなことをすぐ離脱しがちな私に。中村禎さん、ありがとうございます。
(眞木準さんのコピーについて書かせていただいたので、本を謹呈させていただきました)
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多田琢さん(CMプランナー)
ご無沙汰しています。 「本」ありがとうございました! しかも、直接お届けいただいたんですね。感激です。 今、読み終わりました。 書かれている通り、コピーライターだけでなく、すべての若者へのエールですね。 うちの社会人1年目の長男ともうすぐ就活の次男にも読ませます。 もちろん、 回し読みでなく、買って読ませます。 本当にありがとうございました。
(多田琢さんの話を書かせていただいたので、本を謹呈させていただきました)
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高崎卓馬さん(CMプランナー)
タラシ先輩!本いただきました!!買うつもりだったので、部員たちに買わせます!席について一章読んで、なんだか猛烈にコピーを書きたくなりました。すごいひとは、すごいひとにたくさん会って、すごくなってるんだなと。なんだか朝から、いいドキュメント番組みちゃった気持ちです。ありがとうございました!正座して読みます!
(高崎卓馬さんには以前、「表現の技術」出版の時、献本していただいたので、謹呈させていただきました)
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葛西薫さん(アートディレクター)番外編
中村くん、 おはようございます。このたびは「最も伝わる言葉を選び抜くコピーライターの思考法」をありがとうございました。ちょっと拾い読み、どのページも中村くんらしいねえ。しゃべる姿が目に浮かびます。阿久悠氏の「時代の中の隠れた飢餓」について語られており、嬉しくなりました。とても共鳴します。(僕の名が出ると恐縮、こそばゆく懐かしく)ではますますの活躍を!お礼まで。
(葛西さんの話を書かせていただいたので、本を謹呈させていただきました)
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うれしい書評①(メルマガ土井さん編)
うれしい書評②(アマゾン編)
うれしい書評③(マーケター原さん編)
うれしい書評④(中村組OB編vol.1)
うれしい書評⑤(中村組OB編vol.2)
うれしい書評⑥(TCC会報家田さん編)
うれしい書評⑦(コピーライター以外編)
うれしい書評⑧(コピーライター編)
うれしい書評⑨(信用組合月刊誌編)