お前もな!


コピーライター養成講座金沢クラス 宣伝会議賞応募者へ何かアドバイスを、と書いたコピー

【宣伝会議賞に応募しようとしている人たちへ】この言葉を贈ります。どうやったら賞が取れるだろうとか、どうやったら褒められるだろうとか、ショボイこと考えながら書くんじゃないよッ。

その課題に対して、『ホントに思ったことを書け(言いたいことがないなら、書かなくてよろし)』

そして今年もまた、宣伝会議賞応募する人たちのケツを叩きます。締め切り前日に書いて出したコピーで賞を獲った女の子の話、聞くぅ?

一番カッコ悪い言い訳

(とかなんとか偉そうなことを言いながら、同じ言葉を自分にも投げかけています。「お前もな!」と)

いいコピーは何度でも


佐賀県 武雄市 · 武雄温泉 大正浪漫の宿 京都屋にて

出張先のホテルのロビーで、ふと目に留まったチラシ。
いいコピーじゃん、と思ったら。あ、ボクが書いたコピーじゃん。
(1992年頃に書いたキリン一番搾りのコピー)
しかも、ボディコピーまで忠実に再現してくれている。
フロントの人に聞くと、ビールはキリン以外を出しているそうな。
ええよええよ。コンプライアンス的にとか言わないで、なんだかニッコリ。
うれし〜。 http://nakamuratadashi.com/2013/05/27/post-2000/

人を助けるキッカケをつくる


今年も母の日から、ピンクリボンデザイン大賞の応募受付が始まります。今年で14回目。14年前の眞木準さんが審査委員長だった頃は、たしか「日本人女性30人に1人がかかる」と言われていました。それが今、11人に1人。でも、怖がる必要はないのです。正しい知識を持って行動すれば怖くない。たとえその11人の1人になったとしても、早期発見さえすれば大丈夫です。そのことをもっと知らせたい。もっと実感を持って伝えたい。行動に移させて欲しい。そのためのコピーとポスターデザインを募集します。

【審査委員長からのコメント】
ピンクリボンデザイン大賞は、コピーとデザインのコンテストのひとつですが、賞を狙ってつくるのではなく、人を助けるキッカケをつくるんだ、と思って取り組んでほしいのです。あなたが書いたその言葉、あなたが描いたその絵が、人の命を救う第一歩になるかもしれない。そう思って考え抜いてほしいのです。本気で思う気持ちは、必ず人の気持ちを動かすと信じていますから。たくさんの「本気」を待っています。(クリエイティブディレクター/コピーライター 中村禎)

http://www.pinkribbonfestival.jp/event/design/

長友さんと一緒に【稀代】#14 マコマン


ケッタイ最後の取材お店は、長友さんが愛したお店。マコ・マンです。

クリネタ最終号 Photo by 木内和美

「稀代」(けったい)とは、なんだ? 
クリネタおススメの、いい店、おもろい店
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マコ・マン
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マコ・マン
 長友さんと取材に行けることが何よりの楽しみで、それだけでこのクリネタ稀代(けったい)のコーナーを担当させていただきました。そして今回がラスト。最後の店はどこにする?長友さんがよく通っていたケッタイな店、そう、六本木の「マコ・マン」です。お店の紹介というよりも、クリネタ編集団全員でお店に行って、「マコ・マン」のママ、安田晶子さんと長友さんの話をする最終回にしましょう。
長友さんの場所
 六本木の、昔の言い方でいうところの、防衛庁のとこのガソリンスタンドから一本乃木坂寄りに入ったとこに、「マコ・マン」はあります。お店を始めた頃はみんなが「1年持たないだろうね」というので、呑気にやっていたら、もう23年になるんだそうです。ネーミングは長友さん。でも、仕上げたのは黒田さん。黒田征太郎さんが「長友だけがつけると店がつぶれる」ということで。ま、K2のお二人の共作ですね。(詳しい「経緯」はお店で聞いてください)お店の看板ロゴデザインは長友さん。ロゴの形は「そら豆や」と長友さんはいうんだけど、ママは「あれはトモさんの耳たぶよ」と言っていました。
耳たぶ
 お店の中は、ケッタイです。BARスツールのような椅子はありません。すべてベンチシート。シートというより、長友さんのベッド。毎晩来ては、ここで寝てたというんですから。その姿はまるでお地蔵さんか大仏さんだったそうです。このベンチシートのこと、篠山紀信さんは「日本一高いベンチシート」と言っていました。「ぼったくりBARと呼ばれて23年です!」とママは笑っています。(クリネタ読者はぼったくられないと思うのですが、一応各自確認してください)
ある日長友さんに「お店にマッサージチェア置こか」と言われたそうですが、さすがにBARですからね。それは丁重にお断りしたそうです。
 壁や天井には山本容子さんの絵。フクロウの顔をしたトンボや、天使がこっちを見ています。足場を組んで壁から天井から数時間で描き上げてくれたそうです。そしてこの「マコ・マン」の特徴の一つ、いつもドアが開けっ放しだということ。冬は寒いので透明のビニールをおろしますが、ドアは基本開けっ放し。開けておくと、「ヘンな人が入って来ない」のだそうです。なるほどね。そして「すぐ逃げれるし」ですって。
 長友さんのブログ「日々@好日」にもたびたび「マコ・マン」は登場します。打ち合わせが長引いて夕食を食いそびれた時、「マコ・マン」に電話して「なんか食いもんないかなぁ」とわがままをいうと、隣の居酒屋「民酒党」さんからメンチ、ウインナ、キムチ納豆、おにぎりなどを注文していた。(長友さんだから許されるわがままかもしれません。そういえば、ケッタイNo.25で取り上げた表参道のBAR JADAでも近くの中華の店から出前を取っていました。あれも常連さんならではの裏技なんだろうなぁ)「わがまま」なんていうと叱られるかもしれませんね。「わがままちゃうねん。そうゆうものやねん」
さみしがりの甘えん坊
 平日の夕方、柴田副編集長や山岡編集員に長友さんから、「何してんのん?」と電話がかかってくる。「あ、誰かとの食事の約束が流れたんだな」と直感する。そして「マコ・マン」のママにも、土日はお店が休みだというのに「どーしてんのん?」「出てきーひん?」と電話がかかってくる。「人と会う約束をしているからダメなんです」と断ろうとすると、「そんなん言わんと出てきーな」と食い下がる。挙句に「その人も一緒に来たらええやん」となる。ほんと「ヤキモチ焼きのオバちゃんやから」だそうです。こんなわがままな人はいない、鬼のような人ですよ、と言いながらみんな笑っています。
名ゼリフ
「甘え上手なんですよね」とママはいう。母性をちょちょっとくすぐる天才だと。甘え上手の頼み上手。ある日、こんなことを言われたそうです。「オレを味方にしてもたいしたことないけど、敵に回したら、コワイでぇ〜」一同爆笑。そのセリフを言ってる顔が目に浮かびます。「あの顔で得してるよね」一同納得。
 長友さんには名ゼリフが多い。というか、印象に残ることをよくおっしゃっていた。そういえば以前、お好み焼き屋で雑談兼編集会議をしている時、長友さんは、「クリネタで東京五輪のロゴ問題についてちゃんと特集したいねん」とおっしゃっていた。デザインを志す若者たちのためにも、話をウヤムヤにせず、ちゃんとデザインの話をしたいねん、とおっしゃっていた。「アートディレクターはレタリングからや」「手描きが基本や」今はMacでデザインする。有り物の写真を自由に使える。それがダメだと。「だから、Macの電源を切れちゅうてんねん(笑)」
ドアを開けて
 そんな話をしながら、みんなで笑っていると、どこからか一匹のでっかい蚊が入って来ました。「デカッ」あれ、長友さんかもね!その蚊が止まって震えている。「オレの悪口言うてへんか?」と怒って飛んで来たのかも、と大笑い。みんなで追っていると、柴田さんに止まり、山岡さんに止まり、そしてママが手でパッと捕まえて、流しに流されました(笑)さて次はどんな形で出てくるかな。「虫はないやろ」とか言いながら。好きだったカエルかな。「マコ・マン」のドアはいつも開けっ放しなので、またいつでもいらしてください。 長友さん、ありがとうございました。
マコ・マン
東京都港区六本木7丁目3−15鈴や第2ビル1F
電話03-3402-5542
営業時間:[月~金]21:00~3:00
定休日 :土、日、祝、年末年始(詳しくは店舗までお問合せください)
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No.38 (2017年最終号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月
長友さんと一緒に【稀代】⑥EST!
長友さんと一緒に【稀代】⑦赤道倶楽部
長友さんと一緒に【稀代】⑧ボロンテール
長友さんと一緒に【稀代】⑨KOMATSU RESTAURANT & BAR
長友さんと一緒に【稀代】⑩JAZZ BAR直立猿人
長友さんと一緒に【稀代】#11 サントリーラウンジ 昴
長友さんと一緒に【稀代】#12 キヌ・ギヌ
長友さんと一緒に【稀代】#13 The OPEN BOOK
長友さんと一緒に【稀代】#14 マコ・マン

初めて を たくさん


初めての人に会う。
初めての場所に行く。
初めてのことをする。
だけじゃなく、
いままで会った人と新しいことを始める。
いままでやってきたことで、初めての体験をする。
小さなことでいいんです。
今年、いくつの「人生初」を実現するか。
やってみます。

2018年あけましておめでとうございます。
今年も仲良くよろしくお願いいたします。
中村禎

2017年元旦の言葉


今年の手帳の最初のページに書いた言葉。自分から自分へ書いた言葉。2017年の元旦に書いた言葉。その年のテーマといいますか、ま、自分への教訓とでもいいますか。今年1年この言葉を忘れるなよ、という自分へのメッセージですね。そして大晦日に振り返ってみて、それが実行できたかどうか、振り返る。

早い話、時間を大事に使おうぜ、という意味なんですね。フリーエージェント・コピーライターになって、大事だなと思ったことは「時間を大事に使うこと」なんですね。自分の時間をどう使うかで、我が社の業績が決まるわけです。もちろん「体も大事に」もあるのですが、今年は時間を大事にしようと。無駄な時間を極力減らそうとしました。フリーだからというだけでなく、今年60才という年齢になり、これから先の人生の時間だって、そんなにたっぷりあるわけじゃない。無駄な時間、無意味な時間を過ごしているヒマはないのですから。「君にはもうそんなことをしている時間は残されていない」という本も読んだなぁ。

無駄な時間ってなんだろう?と考えてみました。待ち時間か?いや、何かを待っている時間、待たされている時間も、考えたり、メモをしたり、頭を整理したり、やることはできる。無駄にしなきゃいいだけ。で、結論に至った一番無駄な時間は「モノを探す時間」だと思い至りました。書類を探す時間、道具を探す時間。「あれどこにやったっけ?」とあることはわかっているけど、どこに仕舞ったかわからない時間。あれが一番無駄じゃないか、と。

家の中のモノは捨てる、整理する、分類する、同じ場所に戻す、をする。書類もなるべくデジタル化してタグづけして見つけやすいようにする。

ぼーっとする時間も大事です。なーんにもしない時間も大事です。だけど、何かを探している時間はやめよう、と思います。このテーマは今年だけではなく、これからもずっとテーマであり続ける大事な言葉ですね。

2017年も静かに終わろうとしています。みなさま、良いお年をお迎えください。

2017年 大晦日

Se oggi è la mia vita l’ultimo giorno
今日が私の人生最後の日だとしたら

自分との約束 2016

 

プラハのおしり


句会という遊びは本当に楽しい。まず季題が三つ発表されます。今回は冬の季語「霜柱」「外套」「白菜」の三題。締切日まで一所懸命考える。歩きながら、電車に乗りながら、ちょっとした待ち時間にも考えて、メモをする。こっちの方がいいかな、あっちの方がいいかなと悩む楽しみ。

そして投句して、当日みんなが集まリます。幹事の人が全員の句を壁に貼ってくれている。天・地・人のベスト3を選んで発表します。「天」の人には短冊に句を書いてプレゼントする。「天」じゃなくても「地」でも「人」でも、誰か一人でも「好き!」と言ってもらえると、こんなにうれしいことはないんです。その一人がいてくれるだけでもう、その日は楽しい。しかし、誰にも何も引っかからない日もある。その日は口数が少なくなります。

コピーライターやアートディレクター、CMディレクターが集まる句会。(ここから自慢話)今回はなんと、4本も「天」をいただくことができました。

白菜や白いおしりの並ぶ市

外套の男プラハの市電待つ

「白菜」と「冬」を考えると、年末に母親が白菜の漬物をつけるために、大きな白菜を4玉くらい買っていたのを思い出します。買い物に付き合わされて、重い白菜を母と二人で持って帰る。年末の慌ただしい市場に大きな白菜がずらっと並んでいる光景が浮かんだのでした。

「外套」はコートより重そうな気がしました。ぶ厚いウールのマントのような。色は茶色。寒い街。寒い街は、東京ではなく、東欧を思い浮かべました。プラハに行ったことがあって、行ったのは春だったけど、あのプラハの冬は寒いんだろうな。そして古い外套を着た大柄な人もいるんだろうな。プラハの路面電車を待ちながら、雪が降り始めたりするんだろうな。一人で電車を待っていると寒いんだろうな。そんな景色が浮かびました。

みんなから「プラハ」はズルい、「おしり」もズルい、「完全に狙って来てる!」と言われましたが、本当にそんな景色が浮かんだわけだし、それを書いただけですから。俳句の技術があるわけじゃないので、ホントに浮かんだ景色を五・七・五にするだけです。「天」を取ろうと思って書いたって、取れるものではありません。多分外すと思います。次回の句会は春。季題はボクが考える番です。それを考えるもの、句会の楽しみであります。

追伸:ちなみにもう一つの季題「霜柱」には一票も入りませんでした。

朝練のグランドシャリシャリ霜柱

ダメでした。

世界のトップ4と

さて問題です。この写真はなんでしょう? 見る人が見ればスゴイ!人たちと写ったものです。サッカーに例えて言うならば、クリスティアーノ・ロナウドメッシ澤穂希ワンバックの4人と、サッカーのこと全く知らないオッチャンとの写真、みたいなものです。

これは、世界の囲碁界トップ4の選手たちなのです。写真左から、謝依旻(シェイ イミン)六段柯潔(カケツ)九段、オッチャン挟んで、於之瑩(ヨ シヨウ)六段井山裕太九段。ペア碁という、男女がペアになったチームとして囲碁を戦う、その最強位決定戦の後のパーティでの写真です。

「ペア碁ワールドカップ 2016東京」優勝ペアの於之瑩六段・柯潔九段ペア(中国代表)と今年8月に行われた「ペア碁最強位戦2017」優勝ペアの謝依旻六段・井山裕太九段(日本代表)の4人。

もう一度サッカーに例えると、2014年W杯で優勝したドイツと、クラブW杯で優勝したレアルマドリーが試合をするようなもの。その時のレアルのクリスティアーノ・ロナウドセルヒオ・ラモス、ドイツ代表のノイアーゲッツェと一緒に写真を撮ったようなものなんです、サッカー全く知らないオッチャンとが。

囲碁は全くできないボクが、なんでこの場所にいるのか。それは、この大会の告知ポスターを制作させていただいたから。
「囲碁のミックスダブルス。試合中しゃべると反則。」
「1+1=2、以上の強さになる。」
「黒石女→白石女→黒石男→白石男→。」
「強いもの同士のペアが強いとは限らない。」
「自分以外、3人の頭の中を想像しながら戦うゲーム。」
「ケンカはやめた。ペア碁で戦う。」
「人間はミスをする。人間がフォローする。」
などなどのコピーでポスターを作りました。

選手のスピーチでうれしかったことがありました。日本代表(女性)の謝依旻六段が、『あのポスターを見た、囲碁に全く興味がないはずの友人から連絡があってビックリした』と言ってくれたのです。ボクみたいな囲碁を知らない人間がこの仕事をした狙いは、ボクみたいに囲碁に興味がない人にいかにこの大会いかに興味を持ってもらうか、でした。選手の口からその「効果」が聞けて、うれしく思いました。謝さんは、掲出されているポスターの前での自撮り写真も見せてくれました。有り難や。

サッカーワールドカップ決勝後の優勝チーム、準優勝チームの選手たちとFIFAの会長ら大会関係者との祝宴の末席にお呼ばれしたサッカー全く知らない人、という状況でした。

【言い訳】囲碁ファンからすると、囲碁もできないヤツがこんなスゴイ人たちと記念写真に写るなんて許せない!と思うと思います。サッカーを全く知らないオッチャンがCR7やメッシと記念写真に写っていたら、ボクだってムカつくと思うから。でも、囲碁を広めるための仕事をしたから一緒に写ってもらえたわけなので、許してください。

【追記】ほんとはこの話をしたかった。選手のスピーチで、この4人は世界のトップ4であり、ライバル同士でもあるのですが、決戦の前夜、試合会場のある渋谷セルリアンタワー近くの居酒屋に4人で行ったそうなんです。ペア碁の世界大会は日本、中国、韓国、台湾だけでなく欧米のチームも参加する大会です。世界の国と国が政治で争っているけれど、こういう「ルールのある戦い」でしのぎを削りあう人たちは、お互いをリスペクトしているし、仲良しだったりする。平和って、こういうことなんじゃないかと思うのです。まさに「ケンカはやめた。ペア碁で戦う。」だなと、そのスピーチを聞いて思いました。

長友さんと一緒に【稀代】#13 The OPEN BOOK


長友さんと行ったケッタイ取材、最後のお店となってしまいました。

クリネタ36号 Photo by 木内和美

「稀代」(けったい)とは、なんだ? 
クリネタおススメの、いい店、おもろい店
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The OPEN BOOK
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新宿?
京都の町家に来たような錯覚。でもここは、なんと新宿ゴールデン街。2016年の3月にオープンしたばかりのケッタイなお店。まだ木の香りが残る、静かな図書館のようなBAR「The OPEN BOOK」です。オーナーの田中開さんは作家・田中小実昌さんのお孫さん。「おじいちゃんの本が家にたくさんあって、もったいないから、それを飾る場所として、お店をやることにしたんです」

店内は開さんのラフスケッチから設計された吹抜け。漆喰の白い壁と船底の古木を使ったカウンター。遠く広島の友人を訪ねて探し出した、こだわりの古材です。ゴールデン街のお店ですから、当然広くはないのですが、見上げると吹抜けの壁には本、本、本。約1000冊くらいはあるそうです。どの本がどこにあるか、わかるのですか?と尋ねると「作家の名前の五十音順に並べてあります」小実昌さんがご自宅の本棚でもそうやって並べていたそうです。

我らが長友編集長も「なんやったかいな、小実昌さんの本の装丁もやったんやけどなぁ」と「た行」の棚を探すものの思い出せない。開さんが「もしかしたら今、ちょうど貸し出してる本かもしれません。こないだ何冊か貸したので」常連になると、貸し出してくれるようです。

本棚を見上げるとやっぱり気になるのが、吹き抜けから見える上の階。上はどうなってるんですか?ハシゴのような急な階段を登ると2階にはトイレスペースともうひとつ。靴を脱いで上がる、茶室のような畳の小部屋が出現。一輪挿しの花が静かにに飾ってあったりして。この座敷で飲めるようになるには、多分何回か通って馴染みにならないといけないのかも。ボトルを入れて飲まないと、一杯ずつお替りしていたら運ぶのが大変です。その場合はせめて途中まで取りに来てもらうか、ですかね。

そして、もう一つ、上のお座敷に上がった人だけが目撃する「もう一つの秘密」がここにあります。これは、お店に行った人の楽しみとして取っておきましょうか。ヒントは「体の固い人にはきついかな」です。

メニュー?
1階はスタンディングのカウンター。まず気になるのが、スライスレモンがたっぷり入った何やら見慣れないマシーン。The OPEN BOOK自慢のレモンサワー・マシーンです。黒糖焼酎ベースでつくるレモンサワー。バーテンダーがお酒をつくる仕草を眺めることは、バーでの楽しみの一つですが、このレモンサワーも是非注文してほしい。何でもない小道具に感動したりします。筆者は小さな電動泡立て器に、おおーっと、(心の中で)声が出ました。

他には何があるのかなと見回すと、古木のカウンターにさりげなく原稿用紙が一枚。そこに手書きの縦書きでメニューがありました。「本」と「原稿用紙」は、相性がいい。さりげないセンスを感じます。

そのメニュー、最初にレモンサワーが書いてあって、次にあるのがビール。「金鬼ペールエール」と書いてある。少量生産の地ビールを取り寄せているそうで、いつも同じビールがあるわけではなく、その時々で変わるそう。それも楽しみです。で、ビールサーバーはどこ?と思うと、カウンターの上の天井から黒いアームが突き出ている。ここからビール?そうなんです。生ビールの樽は2階にセットしてあって、場所をとらずなかなかスマートです。

レモンサワーの次はジムビームのソーダ割り。「バーテンダーの作るちょっとした食べ物」が大好きな長友編集長は、メニューの文字を見逃しません。乾きものだけではなく、ちょっと温かいものがうれしい。「この、カレートースト、お願いできる?」とろけるチーズとカレーの乗った一口サイズに切ったトーストは、たぶんみなさん、お替りなさると思います。取材班も2度お替りしました。

長友さんは温かいものが好き

数学?
ほろ酔いになり始めた頃、ぼんやり本棚を眺めていたら、階段のそばの本に「ん?」と目が止まりました。「数学辞典」という本。数学の辞典?そのそばには何やら数学関係の難しそうな本が数冊。何ですか?これ?とたずねると「大学で応用数学をやっていたんです」と開さん。てっきり作家系というか、文学系だったのかと思いきや、数学。「文学はいつでもできるから。数学は後からじゃできないと思って」大学は早稲田の理工学部に進んだそうです。

それを聞いた東京理科大学で化学専攻の柴田副編集長がうれしそうに語り始めます。「そう、数学は哲学なんだよ」・・・ホンマかいな。柴田博士曰く、「1+0=1」なのに、「1×0=0」になる。そして「0÷1=∞」になり、「1÷0=やってはいけない」のだそうです。うーむ、わからん。わからんところが哲学なのか。懐かしそうにその数学辞典をめくる開さんの長い指がセクシーです。その長い指がレモンサワーやハイボールを作る仕草もセクシーでした。

「しかしThe OPEN BOOKとはいい名前やねぇ」と長友編集長。たくさんの本があって、みんながその本を開く・・・あ、田中開さんだからOPENか!とその時気づいたら、「なにを今ごろ気づいてんねん」と笑われました。「せやから、いい名前やねぇ、いうてんねん」と。すみません。

こんなにたくさんの本の「か行」の最後の「く」のあたりにクリネタも並べていただけますか。バックナンバーもいいのが揃っていますので。

なにを今ごろ気づいてんねんw

The OPEN BOOK
〒160-0021 東京都新宿区歌舞伎町1-1-6 ゴールデン街五番街
営業時間 19:00 -26:00 無休  
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No.36 (2016年冬号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月
長友さんと一緒に【稀代】⑥EST!
長友さんと一緒に【稀代】⑦赤道倶楽部
長友さんと一緒に【稀代】⑧ボロンテール
長友さんと一緒に【稀代】⑨KOMATSU RESTAURANT & BAR
長友さんと一緒に【稀代】⑩JAZZ BAR直立猿人
長友さんと一緒に【稀代】#11 サントリーラウンジ 昴
長友さんと一緒に【稀代】#12 キヌ・ギヌ
長友さんと一緒に【稀代】#13 The OPEN BOOK

長友さんと一緒に【稀代】#12キヌ・ギヌ


こういう表情の人になりたいんですよ、ボクは。

クリネタ35号 Photo by 木内和

「稀代」(けったい)とは、なんだ? 
クリネタおススメの、いい店、おもろい店


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LE QUINE GUINE 
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後ろの朝?
まず店の名前からしてケッタイでしょ。何語だと思います?「LE」なんて付いているからフランス語かなと思いつつ、フランス語圏のアフリカ系の匂いもする。セネガルあたりの。っていうか、その前に何と読むの? これは「キヌギヌ」と読みます。キーボードで「キヌギヌ」と打つと「後朝」と変換されて出てくる。『実はこれ、日本語なんですよ、平安時代の』と説明してくれたのはオーナーの榎本晋輔さん。衣衣(きぬぎぬ)とも書くこともあるのですが、「衣を重ねて掛けて共寝をした男女が、翌朝別れるときそれぞれ身につける、その衣」のことだったり「男女が共寝をして過ごした翌朝。また、その朝の別れの時間」のことを言うそうです。なんとまぁ、色っぽい。京都出身の榎本さんらしいネーミングです。フランス語っぽく「キュイーヌ・ギュイーヌ」みたいに読めるのも洒落です。そんなフランス語ありそうですけどね。

新宿三丁目の画材の世界堂ビルの横にある雑居ビルでお店を始めて12年。現在の場所に移ってきて1年ほどだそうです。カウンターに3人。詰めて座って5人。カウンターの後ろにソファ席。詰めて座れば7、8人。決して広いとは言えない狭いお店。『以前はもっと狭かったんですよ』と榎本さん。

楽器店?
ケッタイなのは店名だけではありません。ドアを開けると、あれ?こちらはBARでよろしかったでしたっけ、、、と言ってしまいそうなくらいの楽器楽器楽器。飾ってあるだけではなく、ほとんど全部演奏できるし、実際演奏するというのです。クラリネット、フルート、バイオリン、ホルン、オーボエ、ミュートのトランペット。そしてなんとカウンターかと思っていたらそれはグランドピアノ。『ベランダにチェンバロと小さなパイプオルガンがあります』ですって。さらにハープまで。戸棚の中には和太鼓や鼓を隠してある。決して広くないスペースによくもまあこんなに。有名なミュージシャンが来店して演奏してくれたこともあるらしい。こんな街中で生演奏の音出して大丈夫なんですか?と心配すると『昔ここカラオケのお店だったので防音バッチリなんです」とはいうものの、ベランダの窓開けてるじゃん、と突っ込みたくなります。

黒い歴史?
若い頃ミュージシャンを目指して、バンドをやっていたオーナーの榎本さん。この店にある楽器は全部演奏できるそうです。なんでミュージシャンの道を諦めたのですか?と聞くと、笑いながら『黒い歴史があるんです』と。それ以上は聞けませんでした。ミュージシャンの道は諦めて調理師学校に通い始めます。ミュージシャンから料理人に転向する、というとガラッと方向転換な気がしますが、『料理を出しながら、自分のお店でジャズピアノなんか演奏して聴かせられる、そんな店ができたらいいなと思っていました』なるほど。ミュージシャンになるために努力した時間と調理師学校で努力した時間は、ちっとも無駄になっていない。むしろその両方があってこその今があるのですね。「じゃあ、こちらでも料理を出されるのですね」と聞くと『いや、料理はやらないんです。楽器が痛んでしまうから』だそうです。やや、がっかり。でもね、このキヌギヌには料理はいらない。それ以外がタイヘンなんです。やることがいっぱいなので食べている場合じゃないんです。

全員参加?
『お客さんと毎晩演奏するんです』じゃあ楽器のできない人はどうすれば?『ライト係、紙吹雪係、緞帳係、いろいろやることあるので手伝ってもらいます』よく見ると、ただのインテリアの小道具かと思っていたら、全部使える装置なんです。スポットライト、フラッシュライト、カウンターに緞帳。そうなんです、ここは一応BARということになっていますが、劇場のような、楽屋のような宇宙なのです。カウンターの中がメインステージで、お客さんがそれぞれの楽器を担当し、VIPのお客様は後ろのソファから眺めている。そんな一夜を想像しました。その中に、かの有名なあの人が演奏し、かの有名なあの人が踊る。なんという贅沢な劇場でしょう。

トイレのうさぎ?
いろいろお店の「仕掛け」を紹介してくれたのですが、このページ数では紹介しきれませんし、全部は言わないほうがいいと思います。でも、ひとつだけ紹介しておきます。カウンターの中から見える位置にウサギがトイレに腰掛けているライトがある。OCCUPIEDと書かれている。『トイレに誰か入っている時に、点灯するんです。飛行機や新幹線みたいでしょ』こういうことの大好きなオーナーなのです。

チェンバロと煎茶?
もうひとつ、どうしても書いておきたいことがあります。「LE QUINE GUINE」における「チェンバロ点前」について。チェンバロと煎茶道。豊臣秀吉が大坂城をつくった安土桃山時代。イスパニア国王(スペイン)から贈られた巨大なチェンバロがあった。秀吉はその楽器を弾いて楽しんだ。しかし大坂夏の陣の時、大阪城とともに焼けて幻となってしまったという。

煎茶(葉茶)が日本で広まったとされる時期は歴史的検証も必要でしょうが、新し物好きの秀吉がチェンバロの音を聞きながら煎茶を飲んだという可能性は十分ありうる。そこで榎本さんがチェンバロを演奏しながら、そのチェンバロをテーブルのように使いながら、煎茶道を嗜む友人の黒田久義さんがみんなにお点前を披露してくださる。

バロック音楽ではなく現代風にアレンジされた榎本さんのTea For Twoを聞きながら、黒田さんの所作を眺める。チェンバロの音色が安土桃山時代を想像させる。ベランダに置かれたその小さなチェンバロの上で煎茶を入れる静かな時間。大阪城でこの音色が流れていたのか。秀吉もこのお茶の香りと音色を楽しんでいたのかもしれない、と思えてくる。音と香りが想像力を刺激するのって気持ちいいもんですね。

年間購読?
と、ここで悲しいお知らせがあります。ここまで書いて、まだ書ききれないほどの仕掛けやサプライズがまだまだあるのですが、この「キヌギヌ」、会員制のお店なのです。「クリネタを見てきました」くらいでは入店できない。せめて「クリネタを年間購読しています」くらいじゃないと(それでも厳しいかも)。

会員制のお店というと「なんだかお高くとまってるなぁ」とお思いかもしれませんが、そうじゃない。そうじゃなくて、キヌギヌを愉しんでくださっている今までのお客様たちのバランスが壊れないように、オーナーがとても気を使っているんです。ご理解ください。でも、新宿●丁目のどこか狭い道を歩いていて、ビルの上からチェンバロが聞こえてきたら入れる・・・かもしれませんね。(かつ年間購読なら)

 LE QUINE GUINE(キヌギヌ)
東京都新宿区秘密丁目
電話:03-内緒-内緒
営業時間 Wed & Thu 20:00 -26:00
Fri & Sat 20:00 -27:00
Sun 20:00 -24:00
Mon&Tue close
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No.35 (2016年秋号)
クリネタ
http://www.crineta.jp

長友さんを偲んで【稀代】①モンド・バー
長友さんを偲んで【稀代】②BAR JADA
長友さんを偲んで【稀代】③ne & de
長友さんを偲んで【稀代】④ Salon書齋
長友さんと一緒に【稀代】⑤抱月
長友さんと一緒に【稀代】⑥EST!
長友さんと一緒に【稀代】⑦赤道倶楽部
長友さんと一緒に【稀代】⑧ボロンテール
長友さんと一緒に【稀代】⑨KOMATSU RESTAURANT & BAR
長友さんと一緒に【稀代】⑩JAZZ BAR直立猿人
長友さんと一緒に【稀代】#11 サントリーラウンジ 昴
長友さんと一緒に【稀代】#12 キヌ・ギヌ