晴れた。

一番搾り晴れた

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晴れた。

キリン一番搾り。

1992年元旦 キリン一番搾り 
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これ、何だと思います? 元旦の新聞15dなんです。ボクにとって元旦の新聞15dはあこがれの舞台でした。新聞広告が元気だった頃、元旦の新聞広告には力作が多かった。そのステージに立てることはとても名誉なことでした。そしてこの、アッケラカンとした一番搾りの広告。よく見てください。商品カットもロゴもありません。いつもの筆文字と富士山の絵。そしてちょこんと緒形拳さん。一番搾りという商品からの年賀状のような15d広告。その当時、一番搾りという商品がよく売れていて、そうとう勢いがあったから、こんな広告が実現できたのだと思います。一番搾りのCDだった、故・高梨駿作さんは、これが実現できたことをとてもよろこんでくれました。この15dは高梨さん自慢の一作でした。飲みに行くたびに「商品カットもない。商品のロゴもない。ただ晴れた!としか言ってないビールの広告なんて、もうできないぞ、ナカムラッ」

マーケティング調査からはつくれない広告だと思います。元旦のご家庭にぶあつい朝刊が届く。いろんな企業が「夢」とか「未来」とかできない約束をならべている。そんな中で、どんな年賀状が届いたらうれしいだろう、気持ちがいいだろう、と考えてつくりました。ごちゃごちゃ言わずに、元旦→快晴→ビール→一番搾り→今年も!でいいじゃないですか、という15dでした。日本晴れとまではいきませんでしたが、なんとか晴れた元旦でした。

追伸1:雨や曇りだったらどうしたんだろ? ま、心が晴れていればいいんですっ!心が晴れた人に一番搾りはうまいんです!ってプレゼンしたのかもしれません。

追伸2:いつも自分のことばかりしゃべってしまってすいません。一番搾りのグラフィックチームのスタッフをご紹介します。ADはドラフトの宮田識(さとる)さん、デザイナーは石崎路浩さん。そして筆文字や絵を描いてくださっているのが伊藤方也(まさや)さんです。

ビールを飲んだら、本日終了。

本日終了

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ビールを飲んだら、本日終了。

1992年 キリン一番搾り 
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B倍ポスターです。これは、ボクの実感そのままですね。缶ビールをプシュッと空ける音が仕事終了の合図、オフ開始の合図のようなものです。パキッ、プシュッ、ゴクゴクゴク、ぷはぁ〜〜〜。このワンセットで身体中が緩みます。そういう意味でビールは幸せな飲み物ですね。しかし今は、ビール、発泡酒、ビール系飲料などいろんな商品があるので、「ビールって、うまいねっ」と言っても正確ではない。そういう意味で、このコピーは「ビール」じゃないと成立しません。「発泡酒飲んだら、本日終了」もヘンだし、「ビール系飲料を飲んだら、本日終了」もないし。この頃は「ビール」というカタカナ3文字自体にシズルがありました。

こないだ、あるビール好きの女性が居酒屋で言ってました。「ほんもののビールちょうだい!」って。このコピー、居酒屋さんの店頭ポスターにいいですよね。それ提案しなかったかなぁ。こういうコピーの旗が店先でゆらゆら揺れてたら、ふらっと店に入りそう。キリンさん、いかがですか?このコピーの再利用は。

ビールを飲むと本日終了になってしまうので、2014年ブラジルW杯の試合後は朝だから、ビールは飲めないかなぁ・・・。

二番搾りはどうするの?

二番搾りは?

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一番搾りでビールをつくる。
では、二番搾りはどうするの?

1993年 一番搾り
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「一番搾りでビールをつくる」ことを言うからには、必ず気になる二番搾りの使い道。これは、ちゃんと言っておかないといけません。なんでこんなに「麦汁」の話をしたかったかというと、当時一番搾りに似た商品が続々と出てきていたのです。パッケージも白と金を使ったものばかり。名前も「一番搾り」的なシズルのありそうな名前ばかり。で、一番搾りとしましては、おいしそうに思わせるためにつけた名前ではなく、製造工程の中で、もともとあった呼び名だったということを知っておいてほしかった。一番搾り麦汁だけでビールをつくったから、名前は一番搾り。なんもカッコつけてないことを知っておいてほしかった。この広告から20年か・・・。もうそんなこと知ってる人いないんだろうな。わざわざそんなこと知らなくても、飲んでうまけりゃいいのかな。

キリンビールでは、麦汁を搾ったあとの残りを
モルトフィードなどといって、牛の良質な飼料として有効利用しています。
「一番搾り」の場合、二番搾りを行わないので、通常のビールより
モルトフィードにはまだエキス分が残っています。
牛たちも『一番搾りのは、ひと味違うね』と
喜んでいるかどうかはわかりませんが・・・。

最初に搾った麦汁だけでビールをつくる。一番搾りでビールをつくる。

うれしいビール。キリン一番搾り。

 

ビールは、何番搾りまであるの?

何番搾りまで
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ビールは、何番搾りまであるの?

1993年 一番搾り
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横浜の生麦にあるキリンビール横浜工場で一番搾りのことを取材しました。(ビール工場で「生麦」っていい地名ですね)コピーライターの目線ではなく、飲む人の目線で話を聞いていて、疑問に思ったことがそのままキャッチコピーになりました。一方的に話を聞くのではなく、どんどん質問しながら取材しました。「いい質問ですねぇ」がそのままコピーになりました。

『五番でも十番でも、どんどん搾ればいくらでもできるんじゃないか』と
お思いかもしれませんが、ビールは二番搾りまでしかありません。
ビールの仕込み工程で、ろ過機から自然に流れ出る麦汁(ばくじゅう)が一番搾り。
その後、お湯をかけて流れでるものが、二番搾りというわけです。
通常ビールはこの一番搾りと二番搾りをあわせたものからつくります。
キリン一番搾りは、新しいビールの味をつくりたくて、
一番搾り麦汁だけでつくった、ちょっと贅沢をしたビールです。

最初に搾った麦汁だけでビールをつくる。一番搾りでビールをつくる。

うれしいビール。キリン一番搾り。

まぜご飯のうまさより…

一番搾りまぜご飯

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まぜご飯のうまさより
白いご飯のうまさを目指す
一番搾りではあります。

1992年 一番搾り
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「飲み飽きないビール」ということを言いたい、というのです。まあ、「飽きない!」と叫んでも実際買って飲んでみてユーザーがそう決めればいい話だとは思うのですが、なんかいい例え話はできないものかと考えました。「飲み飽きないビール」「どんな食べ物にも合うビール」「日本人の繊細な味覚に合うビール」・・・・日本人・・・。で、白いご飯に至りました。テレビCMの世界とは違う一面をグラフィックでつくっていく。それが、狙いでした。露出量の限界はあると思いましたが、一番搾りのファンが読んでくれたら、もっとファンになってもらえるといいなと、書きました。

松茸ご飯は好きですか。あさりご飯はどうですか。
どんなにおいしいまぜご飯も、
毎日毎日食べるとなるとどうでしょう。ちょっと困る。
なのにあの、炊きたての
白いご飯のうまさに飽きないのは何故でしょう。
日本人の味覚に自然だからか、
シンプルで味の個性が強すぎないからか、
いろんな食べ物と合うからか。
世の中には、たまに食べるからうまいものと
毎日食べてもうまいものとがあるようです。

うれしいビール。キリン一番搾り。

しぼりきらないこと。

一番搾りしぼりきらない

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しぼりきらないこと。

一番搾りは、一番だしのとり方似ている。

1992年 一番搾り
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一番搾りの製品広告です。ビールは搾ってつくります。その最初に流れ出る麦汁を「一番搾り麦汁」といいます。さらにぎゅっと搾ったものが二番搾り麦汁です。ふつうのビールはこの一番麦汁と二番麦汁を合わせてつくります。二番麦汁を使わずに、一番麦汁だけでビールをつくる。それが一番搾りというビールなのです。それをなんかいい例え話はないかと考えていたら、料理の一番だしに思い至りました。お吸い物なんかは一番だしを使う。煮物とかをつくるなら二番だしも混ぜる。そう、ビールも同じだったんです。

ああ、もったいないと思う気持ちは、とても自然なことだと思います。
でも、一番だしをとるときは、少し話が違うらしい。
昆布だしに削りがつおをさっと通し、
それをしぼらずに静かに濾して自然にしたたる分だけをとる。
もっと味がでそうな気がして、ついギュッとしぼりたくなるのが人情ですが、
過ぎたるは及ばざるが如し。しぼりすぎると雑味がでて、
素材の上品なうまみが出せないそうです。一番搾りも、そう思います。

うれしいビール。キリン一番搾り。

ビールがあれば晴れた日は…

93一番搾り猫になりたい

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ビールがあれば
晴れた日は
猫になりたい。

1993年 キリン一番搾り 
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93年の1月の新B額面です。一番搾りのタレントは俳優の緒形拳さんなのですが、もうひとり?タレントがいました。「しっぽ」という名前の猫。これがときどき出演します。デビューは一番搾りCMの名作「花火篇」だったと思います(この時はボクはまだチームの一員ではありませんでした) 家の2階から花火を見ようと緒形さんがビールとグラスをもって階段を駆け上がっていく。と思ったら、また慌てて降りてくる。そして、今度は猫を抱えてまた階段を駆け上がって行く。猫と一緒に花火を見ようと思ったのでしょう。2階の窓辺に腰掛けて、猫を膝に花火を見ながらビール、うれしー。というCMでした。

この冬の「洗濯篇」でもその「しっぽ」が登場しました。CMプランナーの安西さんが「冬の晴れた日、洗濯物でも干しながら、下駄を脱いで裸足の両足をスリスリするのがいいんだよね」という言葉がそのままCMになりました。

パキッと晴れた冬の日は、缶ビールでも持ちだして、
洗濯物といっしょに自分も干してみることにする。
陽だまりの中、ポカポカしたからだの芯に
冷えたビールが、ツツーーッと流れていく。
なんでもない休日の、日向ぼっこのビールが、
思ったよりうまくて、少し驚いた。
外の空気はまだ冷たいけれど、セーターの中は暖かい。
陽のあたったセーターは、いい匂いがした。

うれしいビール。キリン一番搾り。

(梅雨時に紹介するコピーではないのですが・・・)

ビール、ビールと蝉が鳴く。

92蝉が鳴く

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ビール、ビールと
蝉が鳴く。

1992年 キリン一番搾り 
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これはB倍ポスターです。これも好きなコピーなんですが、いま思うと、よくこんなコピーを書けたなと(OKしてくれたクライアントに感謝です)その頃確か、仲畑広告制作所で句会が流行っていまして。みんなで俳句をやるんです。みんなで出し合って、みんなで選ぶ。それがボクの句はちっとも選ばれないんです。それが口惜しくて俳句の本を読んだりして勉強してて。そのころのボクの頭の中はほとんど五・七・五でした。で、どことなくコピーにもその五・七・五の匂いが残っているんじゃないでしょうか。それともうひとつ。心の奥の方でお手本にしていたコピーがありました。1974年日本国有鉄道、長沢岳夫さんの「ミーン、ミーン、ミーン。」というポスターのコピーです。これは夏休みの帰省か旅行のためのコピーだったかと思います。「ミーン、ミーン、ミーン。」だけですよ? なのにこんなにシズる言葉。こういうの、いつかできるといいなぁと漠然と思っていました。そういう背景で、このコピーができたんだと思います。

そして何気にボクは「うれしいビール。キリン一番搾り」というのが、名コピーなんだと思っています。これはボクがチームに加わる前からあったコピー。CMで緒形拳さんが一番搾りを飲んでひとこと「うれしー」と言って終わる。(だからたぶん、安西さんの発明かな)これが実によかった。だから、「うれしいビール」になったのだと思います。時代が変わっても、タレントが変っても、酒税が変っても、担当広告代理店が変っても、商品名やパッケージや愛飲するお客様が変らないんだから、この「うれしいビール。キリン一番搾り」というコピーだけはずっと使い続けていたら、カッコイイのになぁと勝手に思ったりします。

暑い暑い世の中で…

92暑い暑い世の中で

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暑い暑い世の中で
ビールだけが冷えている。

1992年 キリン一番搾り 
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これは新B額面というボクが一番好きなメディア、電車のB3ポスターです。電車のドアの戸袋の、一番端の席に座った人の頭の上に貼られるB3ポスター。つり革につかまって、つい読んでしまう位置。このコピー、自分では気に入っていました。でもプレゼンする前、ホントにこれでいいのか?と思っていたある昼下がりの山手線。ボクはその新B額面が掲載される場所が見える位置に座っていました。中年のサラリーマンが汗を拭きながら乗って来て、その新B額面が貼られるであろう位置のつり革につかまった。そこで想像してみたのです。その汗を拭きながら乗って来たサラリーマンの後ろから「暑い暑い世の中で、ビールだけが冷えている。キリン一番搾り」と頭の中でささやくのです。すると、そのサラリーマンはどう思うか、と想像してみます。「何言ってんだか・・・ふんっ」と思うか「くーっ!ビール飲みてぇ〜」と思うか。勝手な想像力ですが、ボクは後者だと確信しました。汗ばんだ背中がそう言っていたのです。

一番搾りの広告は、「すべてのビール広告の中で一番うまそうな広告、一番飲みたくなる広告にしよう」というチームの暗黙の約束がありました。一枚のポスターが心に残る。しかも「なんかビールの広告見てたらビール飲みたくなった」じゃなくて「あの一番搾りの広告でビールが飲みたくなった」と言わせたい。それが一番搾りという商品のファンをつくっていくんだと信じていました。今はもう担当ではありませんが、今でもそう思っています。

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暑い暑い世の中で
ビールだけが冷えている。

子どもの頃に好きだった夏は、
いったいどこへ行ったのだろう。
いつの間にか「暑いなあ」の言葉を
「疲れたなあ」の意味で使っていた。
「暑いなあ」を連発しても、涼しくなるわけではないので、
そんな時は「夏だなあ」と思うことにした。
その方が、少し元気がでてくる。
ビールがあるさと思えば、また少し元気がでてくる。
冷えたビールがあれば、夏は暑いほうがいい、と勝手に思った。

うれしいビール。キリン一番搾り。
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遠くを眺めて飲むビールは…

92遠くを眺めて飲むビール

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遠くを眺めて
飲むビールは、
いいよ。

1991年 キリン一番搾り 
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一番搾りのチームに入ることができました。この商品の立ち上がりは、CMプランナーが安西俊夫さん、コピーライターは佐々木宏さんでした。その後、佐々木さんが別の担当になりチームを離れ、コピーライターの席が空席になった。そこでCDだった故・高梨駿作さんが、午後の紅茶でキリンを担当していた中村禎を入れようと言ってくれたのです。ほんとに救われました。電通に移籍してなかなか調子がでなかった。電通の悪い面ばかり見ていた。ところがこの電通一番搾りのチームはボクの想像とはまったく違っていました。CMプランナーの安西さんが優秀な人だというのは知っていました。ところが、営業のリーダー前田圭一くん(現在弊社の役員)をはじめ、キリン担当の営業がみんな優秀。マーケの小林青年やSP(当時のセールスプロモーション)の中西謙司くんも優秀。CMの太陽企画チームもグラフィックのドラフトチームもみんなみんな優秀。こういう人たちに恵まれたチーム、そうはないゾ、と思いました。愉しみでもありましたが、プレッシャーでもありました。

そんな中での、九州ロケの列車篇。そのロケハンの列車の車窓から懐かしい九州の景色を見ながらボディコピーの仕入れをしたのを憶えています。

車窓から新緑の木々を見るたびに、
木や花の名まえをもっと
知っていたらなぁと、思う。
大きな農家の縁側に、ちょこんと
座っているおばあちゃんが見えると、
今日の夕ごはんは何だろうな、と考える。
遠くの工場の煙突に煙が見える。
働いている人がいるのに、自分は休暇。
ちょっとすまないような気もするが、
ま、それはそれとして。
遠くを眺めながら飲むビールは、
いつもより少し、うまいと思った。

うれしいビール。キリン一番搾り。