ジョニーの正体

こんなコピーを書きました「ジョニーって誰よ?」の裏話です。

KDDIコピー1最初は実名でドキュメンタリーにするつもりでした

「日経の30段があるんですけど」と営業がいうのです。正直なところ「まだあんの?」というくらいの出稿量でした。15段でやったオレンジの白抜きコピードカドカを30段でやるか?でもそれは乱暴すぎだろう。じゃあ牛尾次朗さんや稲盛和夫さん、ソニーの盛田昭夫さんたちの設立までのドキュメンタリーを載せればいいんじゃないか、と提案しました。ある記事で読んだことがあり、その設立動機やストーリーがすばらしくて、それを知らせたらどうかと思ったのです。そしたら佐々木さんが「それいいね。じゃ中村、書いて」「え?ボクが書くんですか?」てっきりすでにある記事を載せるだけのつもりだったので、ヤバイと思いました。

長いボディコピーを書いてもたぶん読まれない。じゃあ脚本のような会話形式にしよう。そして全部読まない人のために、気になるコピーだけ大きくして、そこだけを見た人も「KDDIってオモシロそうね」と記憶してもらおうと考えました。ボクは長いボディコピーは読まれない前提で広告をつくります。読まれなくても最低限伝えなければいけない。そして、読んでくれた人には、読んでよかったと思えるサービスをしたい。

最初は全部実名で書きました。ところが牛尾さんたちから「実名は恥ずかしいよ」と言われたので「配役」を設定することにしました。ちょうどその頃、めったに本を読まないボクが人の薦めで読んでいた本がありました。

2039年の真実

落合信彦の『2039年の真実』J.F.ケネディ暗殺にマフィアが関わっていたという、ほぼ実話。めちゃめちゃオモシロイ話でした。その影響でマフィアの親分と子分の会話のようになったのです。それとイタズラというか『隠し絵』みたいなことをしようと考えた。ある人にしかわからないメッセージを入れ込もう、と。それが「ジョニー」「ジェシー」だったのです。

マッドマックス

1979年公開の映画『マッドマックス』 メル・ギブソンの出世作です。暴走族と対決する近未来の特殊警察の話。暴走族のボスの名前が「トゥーカッター」、その優秀な一番弟子が「ババ」一番のできそこないが「ジョニー」でした。主人公の特殊警察「マックス」がメル・ギブソン。ある日、「トゥーカッター」たちに狙われることになるマックスの妻が「ジェシー」なのです。

最初は登場人物の名前だけあればいいか、と思っていたのですが、だんだん面白くなってきて「なんとかセリフも入れられないだろうか」と思い始めました。コピーライターの佐倉康彦クンとサン・アドの哲ちゃんとボクは、このマッドマックスの吹き替えが大好きで、暗記したセリフがいくつもありました。

マックスの妻ジェシーが息子のスプローグ(まだ2才くらい)とドライブインでソフトクリームを買っていたとき、トゥーカッターたち暴走族に絡まれます。ジェシーは息子を守るために気丈にふるまう。それをからかう暴走族のボス、トゥーカッターのセリフです。そのしゃべり方(日本語)がまたいいんです。

トゥーカッターこの人が名言「そりゃぁねぇだろうジェシー」のトゥーカッターです

『ジェシー、そりゃあ、ねぇだろう、ジェシーw お前さんにはユーモアのセンスがねえな。そうか、美人にはユーモアなんていらねえのかもしれねぇな。ジェシー、ホント食べちまいてぇくらいだぁw』(だったかな)とにかく「そりゃ、ねぇだろう、ジェシー」を入れたかった。この掲載を見たふたりに「あれ、禎さんがやったんだ」とわかってもらえる暗号として。クライアントからは「なんでジョニーなんですか? このジェシーって必要ですか」と言われましたが、そこはなんとか切り抜けました。で、読んだ人がたぶんみんな「ジョニーって誰よ?」と思うと思ったので、それをタイトルにしました。

ジョニー初めまして オレがジョニーです

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ほぼ実録「早い話の男たち」という題名でドキュメンタリーにするつもりでした。当時発行されたビジネス誌「月刊経営塾8月号」の「深層海流」に書かれた記事を元にKDDI設立に至るまでの過程を、登場人物の口調などはアレンジして書いてみた。それが元でした。その下書きがまだ残ってたんですが、見ます?(近日公開か?)

ジョニー三部作
「ジョニーって誰よ?」
②ジョニーの正体
ジョニー前(下書き)

「ジョニーって誰よ?」

KDDI日経30d2000年 KDDI 日経新聞30d

「ジョニーって誰よ?」

ーーー1983年夏ーーーー

「何か用か?」
「なんでもないっす」
「何だよ?変なヤツだな。何の用なんだ?」
「いや。なんだか最近、何にもやる気がしなくて」
「派手なヤマが無いからか」
「そうかも。なんだかだるいし、夏休みの友も、はかどってないし」
「バカ野郎。わざわざ呼び出しておいて、そんな話かよ」
「今朝の新聞、読んでないのか」
「シンブン?」
「大臣さんたちがやっと重い腰を上げてくださったってわけよ」
「えっ、ということは!」
「そうよ。やっと
電電公社と国鉄と専売公社の民営化
が始まるのよ」
「じゃあ、兄さんのあの、去年の夏休みの自由研究が現実になるってこと・・・」
「そうよ。だからそんなしけた面を二度と俺様の前にさらさない方が身のためってことよ」
「わ、わかったよ。兄さん。と、とりあえずおめでとう」
「給食が終わったら、さっそくみんなを体育館ウラに」
「ああ、そうしてくれ」
「あ、でも今日は夏休みの登校日だから給食はでないと思うぜ」

「もう一個、作ろうかと思うんだ。電話会社」
「お言葉ですがボス、今から作ってもどうせ業界二番手ではないですか?」
「ふん。頭の固い学級委員長さんにも世話がやけるぜ」
「いいか、二番手というのはな、一番手がやってきた失敗を繰り返す必要がないんだ。
わかるか?ロスなく事を運ぶことができるんだよ」
「つまり、そのぶん
No.2だから、ヤンチャできる
ってこと」
「そういうこった」
「だけど、町中のあっちこっちに、もう電信柱がおっ立っちまってるぜ、旦那」
「ば〜か。そんなもんが21世紀まであると思うか?」
「21世紀ったって、まだ17年5ヶ月以上も先ですぜ」
「ま、線がないとつながらないって発想は今日限りで忘れちまうことだな」
「ということは、もしかして・・・」
「ジョニー、火っ」
「は、はい」
「夏はやっぱり線香花火だな」

「そこでだ。半径100マイルの土地に一軒だけコンビニができるとする。
その町には店らしい店がその一軒だけ。そこの店主ならまず何を考える?」
「値段を高くしても客は買うしかない」
「そうだ。生活必需品ならなおさらだ」
「で、そこにもう一軒コンビニを作ったらどうなる?」
「おでんもあるといいなぁ・・・」
「ジョニー、お前は確かにいつもいい味だしてるぜ」
「ごめんなさい」
「やけに素直じゃねぇか」
「競って安売りしたり、品揃えを工夫したり、サービスを考えたりする」
「ピンポンだ」
「ケーザイっていうのは、競争して発展していくもんなんだ」
「だから電話会社もいくつかあって、競争する方がいいのかぁ」
「なーんだ、いままでは一個しかなかったから面白くなかったんだ」
「ってことになるかな」

「ひとつ素朴な疑問があるんですが」
「なんだカルロス」
「手紙を出すのに切手を貼りますよね」
「ああ、貼るわな」
「隣りの県に出すのも都内に出すのも同じ値段ですよね」
「そうだな」
「なのになぜ、電話料金は距離が遠いと高くなるんでしょうか?」
「う〜む。わかんねぇけど、エライ誰かさんがお決めになられたんでしょうな」
「東京都江戸川区に住んでいて、隣りの千葉県浦安市の彼女と
東京都八王子市の彼女だったら、どっちの電話代が安くすむんスか?」
「カルロス。二股は感心しねぇな」
「でも、それもいつか同じになるんじゃね〜かと思うぜ。別に根拠はないけど」
「やっぱり会社の会議室で、大勢で決めるとそういうことになるんでしょうか?」
「そうかもな。
多数決で決まることはたいていフツーだ
からな」
「そういう意味でも新会社を作るって面白いかも」
「そうですね。新会社を作ったらまず、スローガンなんかつくっちゃいますか」
「なんかカッコイイやつをバシッと。横文字かなんかで」
「ま、そうなんだけど、まず
スローガンより実行せよ
なんじゃねぇか?」
「あはは、そうでしたね。スローガンなんて企業の自己満足の場合が多いですからね」
「それに昔から、『死んだカモよりゃ生きてるカモのほうが値打ちがある』って言いますし」
「ジョニー、それは全然例え話になってないと思うんだが・・・」

「広告キャンペーンはどうしましょう?」
「やっぱ広告代理店かなんかをいっぱい呼んでバ〜ンと大競合大会っすかね」
「お前はとんでもねぇ勘違いをしている。案がいっぱいあればいいってもんじゃねぇんだ。
確かに広告屋さんはいろんなアイデアを提案してくれる。
でもそれをチョイスするのはクライアントなんだ。そこで、どの案を選ぶかが勝負なんだよな」
「世間の人から『この企業はこ〜んな広告がいいと思って採用したんだぁ〜』
『ダッサァ〜』
とか思われているんですかね、陰で」
「とにかく広告主は、自社の商品を褒めただけのコピーを採用しがちなんだ。
誰でも自分を褒められると悪い気はしねぇからな。だけどちょっと考えてみ?
合コンで、自分のことを褒めてばっかいるヤツが、モテると思うか?」
「確かに・・・
つまんない広告
をする企業は、ほぼ、つまんない(笑)
「広告だけ面白い、って企業もあるんだけどな(笑)いろいろタイヘンなわけよ。
ま、コピーライター講座はその辺にして、下校時間の放送の前に本題にはいるぞ」

「ジェシー、例の枠はいくつだ?」
「はい、郵政省が次世代の携帯電話の参入枠を3つと設定しました」
「確かか?」
「はい、昨日の中吊り広告に出ていたので間違いありません」
「そうか、中吊りか」
「はい」
「で、今はどうなってる?」
「旧電電公社系と旧国鉄系がすでに手を挙げています」
「すでに、か」
「さすがは、そういうところは抜け目がないようです」
「残るはあとひとつか」
「国内電話と携帯電話、あと国際電話とインターネットプロバイダ・・・」

「兄貴、うちの親父が国内電話のDDIのお偉いサンやってまっせ」
「拙者の知り合いのオジキの場合はケータイのIDOを、やっておるでござる」
「カルロスの家は確か・・・」
「はい、父親が国際電話のKDDの関係者だという噂です」
「よし、わかった。明日全員をこの秘密基地に集めろ」
「えっ?何をする気ですかい」
「まさか誘拐?」
「ば〜か、兄貴が人様の迷惑になるようなことをしたことがあるか?まだ小学生だぜ」
「合併するんだよ」
「あ、知ってますよ。中華街で売ってますよね」
「それは月餅だよ、ジョニー」
「そんな調子だから子分の一番になれないんだよな、お前は(笑)」
「それだけは言わない約束だったのに。でもさ、
日本で二番手でも
世界で一番になればいいじゃん。
でしょ?」
「お、いいこと言うじゃん。それ、採用(笑)」

「で、最初は何をやりますか。やっぱ値下げですかね」
「値下げの広告って、一覧表を見てもよくわかんないんですよね〜」
「あれはわざとですかね。どこもイタチゴッコだし」
「そうなんだ。3分当たりいくら下げました!って威張ってみたところで、使える地域が限られていたりする。
注意しないと『安くしました!』というイメージだけが残っちまう」
「それが目的だったりして(笑)」
「そういうまぎらわしい広告は、ジャローラモ一家が黙っちゃいないでしょ」
「確かに、ウチの立ち上がりの時期にはドコもそういう広告が増えてくるでしょうな」
「たぶんな。だから、ウチは他と違うアプローチが求められるってわけよ」
「値下げで威張るのはカッコ悪いですもん。だったら最初から安くしとけっちゅうの(笑)」
「でも、商売ですから、そうも言ってられないんではないかしら」
「そりゃあ、ねぇだろう、ジェシー」
「消費者って、っそういう広告の狙いを意外とズバッと見抜いているもんなんだぜ」

「お話の途中ですが兄さん・・・」
「なんだ、ジョニー、久しぶりだな」
「僕たちは一体誰なんですかね?変な小学生の設定になっているようですが」
「架空の人物なんですかね?」
「ば〜か。架空でこんなに面白い話ができると思うか?」
「まだ若いお前たちには、実名を明かすわけにはいかないけどな、フフフ」

「なんか面白くなりそうですね、兄さん」
「ははは、そうだな。ま、面白くなきゃ、こんなことやってらんねぇけどな(笑)」
「あ、そうだ。合い言葉は、
二年後に笑おう
に決めたから」
「二年後というと、アレが規制緩和されて、アレとアレに決着がついて・・・・」
「それまで、笑うのを我慢しなきゃいけないんですかい?でも、昔から言うじゃないですか。
スポーツ選手へのインタビュアーは必ず『放送席、放送席』と二度叫ぶ、って」
「ジョニー、お前は、生まれてくるのがちょっと早すぎたのかもしれねぇなぁ」

*というわけで、KDDとDDIとIDOがひとつになりました。
合併と言うより集合ってカンジが近いかもしれません。
とにかく、これからの通信業界を面白くするために。
*このストーリーは、ある程度事実に基づいたフィクションです。
*しかも、1983年から今年までの話を数分間に短縮したものです。

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長いコピーを読んでいただきありがとうございました。
あまりに長かったので、この仕事の裏話は後日報告します。
なぜジョニーなのか。ジェシーとは誰なのか。

ジョニー三部作
①「ジョニーって誰よ?」
ジョニーの正体
ジョニー前(下書き)

…わけが違う

銀行なんかの2

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銀行なんかの合併とは
わけが違う

2000年 KDDI
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KDDIへのプレゼンは大きな会議室で行われました。そこに大勢のクライアントが並びます。しかし、決めるのは牛尾会長だろうとは思っていました。プレゼン時間も限られているので、グラフィックは考えたものすべて壁に貼っておくことにしました。コピーがデカイので遠くからでも読めます。牛尾会長は会議室に入るなり壁を見て、「これはいいね」「これも面白いね」と言って笑ってくれた。ハイ、OKいただきましたっ!って感じでした。その中でとくに気に入ってくれたのが、このコピー。「そうなんだよ!こういう気持ちなんだよ。これいいねぇ」 結局これは、世には出ませんでした。KDDIも銀行とはおつきあいがあるから、さすがに言えないか、と。でもボクはうれしかった。牛尾さんが「でも、これやりたいなぁ」と最後まで言ってくださっていたと営業から聞いて、それだけで満足でした。KDDIの会長と同じことをボクも思った、わけですから。(実は、「銀行なんかの合併」を「銀行さんなどの合併」とかにしてもダメすかね?と粘ったのですがダメでしした。「せめて社内に貼りましょう」と言えば良かったか!)

そういう意味でKDDIのコピーは、クライアントそのものになり切って書いたコピーでした。クライアントが乗り移ったカンジ。この場合の「クライアント」とは牛尾さんたち、KDDIを作ろうとした人たちのことです。広告を決断する人のことです。上司の了解を得る人のことではありません。クライアントの顔色を伺うのではなく、そのものになりきる。クリエーティブ・ディレクターと企業のトップ、あるいは広告の決定権者が同じ方向を目指していれば、つまんない広告なんかできるはずがない。この2トップが同じ方向を向いている広告だけが意味のある広告になるのだと思います。予算の大小なんて関係ない。この2トップの関係さえ強くあれば、効果のあるコミュニケーションはできるとボクは確信しています。

日本で二番手でも…

KDDI二番手

KDDIイタチゴッコ

KDDI国民としては

KDDIケンカしても

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日本で二番手でも世界で
一番になればいいじゃん。

2000年 KDDI
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電話代の値下げって、いつも
イタチゴッコだなぁ。
(安くなるのはいいけど)

2000年 KDDI
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国民としてはNTTとKDDIが
競争してくれると面白くなると
おもうなぁ。

2000年 KDDI
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ケンカしても勝てない相手なら
別なことをやるしかない。

2000年 KDDI
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電車の中吊りワイドです。一車両に二カ所ずつ掲出される中吊りワイド。それがいろんな路線に出るという贅沢。オレンジ色に白抜きで、コピーがドカドカうるさいロックンロールバンドのような広告シリーズ。ヘタをすれば「ウザイ」「乱暴だ」「金をかけ過ぎ」と言われるかもしれない。だからこそ、丁寧に考えました。一車両に二カ所出るから当然2種類のコピー。路線ごとにコピーを替えました。人は同じ路線の電車に乗るけど、乗り換える人も多いはず。例えば東横線でコピーを見る。中目黒で乗り換えて日比谷線に乗ったらまた違ったコピーがある。そうすると、『じゃあ他の路線はどうだろう?』→『他のコピーがあるかもしれない』→『見てみよう!』 と思ってはもらえないだろうか、と考えました。だから、何本も作った。ひとりがなるべくいろんなコピーに出会えるように組み合わせたのです。KDDIの広告は、「乱暴だ」とか「金をかけ過ぎ」なんて、ゼッタイ思われたくなかった。だから細心の注意を払って「丁寧」につくる事を心がけました。

以前に紹介した新聞15dの下一行にひと言入れようか、と言い出したのは佐々木さんでした。なにもコピーのない原稿とか、コピードカドカの広告は乱暴に見えるかもしれない。じゃあ、言いっ放しじゃなく「なんちゃって」的なことを入れましょうか、と話し合ったのです)

つまんない広告…

KDDIつまんない

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つまんない広告をする企業は、
ほぼ、つまんない。

2000年 KDDI
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KDDIのコピープレゼンはリトマス試験紙でした。合併して新しい企業としてスタートをするそのとき、どういう企業になるのか、どういう企業になろうとしているのか、まだ誰も知らない。このコピーにOKを出すのかどうか、試してみたかったのです。そしてOKが出た。そうとうの「覚悟」や「勇気」があったのだと思います。KDDIはつまんない広告はやりません、と宣言するわけですからね。もちろんこのコピーは自分たちにも向けられています。ボクはつまんないコピーは書きません、と言ってるわけですから、自分にプレッシャーをかけていました。(残念ながらボクはもうKDDIを担当していません)

コピーを書いた時、ボクはKDDIの会長のつもりで書いていました。合併でいろんな社員が一緒になる、その人たちをまとめなければいけない。そのとき、世間に発表する広告で、企業のトップがメッセージを送る。「ウチの会社はこうなんだゼ」というコピーです。

こういうコピーとか、昔書いたさくら銀行の「普通預金にお金を貯めすぎるのは損ですよ」みたいなコピーは、それをチョイスしたクライアントが立派だと思うのです。ボクはただ言いたいことを書いただけ。それが世に出て広告賞なんかもらえるのは、クライアントの選択眼と覚悟がないとできないことです。だからボクらは一番いいと思うコピーを出し続けるしかない、このコピーを採用しないなんて、どーかしてるぜっ、と。勇気があるなら採用してみろよ、と。広告は無難で何も意見がでないものより、賛否両論あるもののほうが断然良いとボクは思っています。

 …出社は明日から。
がんばれNTT。がんばるKDDI。

No.2だから、ヤンチャできる。
つまんない広告をする企業は、ほぼ、つまんない。
スローガンより実行せよ。
日本で二番手でも…

「ジョニーって誰よ」
…わけが違う

スローガンより実行せよ。

スローガン
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*一応「Designing The Future」という企業スローガンを掲げていますが、

スローガン
より
実行せよ。

2000年 KDDI
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そして欄外に

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◎この新聞広告を、社内のあちこちに貼る予定です。
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企業スローガンって言いっ放しで勝手なものが多いと思いません? 個人的な感想ですが、立派なことを言うだけで、それで気が済んだ、と言わんばかりなものが多い。もちろんそうではないスローガンもたくさんあります。 KDDIにも「Designing The Future」というスローガンができていました。「できていた」のですから、ボクらがつくったものではありません。まあ、こうありたい、という気持ちはわかるのですが、そんな言葉は社内だけで共有すればいい。このスローガンを大きく扱った広告なんて、ボクは見たいと思わない。それを世の中に見せびらかすより、そういう「Future」を商品やサービスというカタチで世の中に提供すればいい。そう思ったので、このコピーを提案しました。

そして、一番言いたかったことは「欄外」に書きました。このコピーは牛尾会長がOKしてくれた。つまり、会長からKDDIの全社員に向けたメッセージでもあるんだと言いたかった。実際に貼ってくれたかどうかは、どうだったかな。社員用の掲示板に貼ってくれたんでしょうか。そこまで確かめることはできなかった(誰かKDDI社員の方、ここを読んでいてくれないかしら)ま、貼ってくれてたような記憶(希望的憶測)もあるんですが、このメッセージを世間に掲載したという事実があれば、やらないわけには行かないぞ、という狙いのコピーでした。企業スローガンはユーザーへの「約束」であるべきだと思うからです。

No.2だからヤンチャできる。

ヤンチャ新聞

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No.2だからヤンチャできる。

2000年 KDDI
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この仕事をしていた頃の佐々木宏さん(現・シンガタ)とのことを思い出した。

当時佐々木さんは、たくさんのクライアント作業を抱えていて外出先から戻ると、待ってましたとばかりに、いろんな営業部長が佐々木さんのうしろを金魚のフンみたいにくっついて歩いていた。みんな佐々木さんの判断を仰ぐために。会議中も他の仕事の電話がじゃんじゃんかかってくる。ボクらの打合せ中、コピーを見てもらっている最中にもケータイにかかってくる。あまりにも中断されるので、ボクは頭に来た。ボクらは時間を調整してこの会議室に集っているのに、なんで他の仕事の電話に邪魔されないといけないんだ、と。ボクはガラス張りのその会議室を出て行った。そして外から佐々木さんのケータイに電話したのだった

「で、佐々木さん。そのコピーでいいですよね。よかったらボク、もう帰りますけど」

佐々木さんはすまなそうに、ガラスの向こうにいる中村を見つけてペコリ。そりゃそうだろ。約束して会っている人より、かかってくる電話を優先するのっておかしいじゃんか。。

それともうひとつ。佐々木さんのディレクションはボクにとっては理解できた。が、何をすればいいのかわからなくなる人もいるだろうとも思う。ハッキリ方向を示すというより、「なんか違うんだよな」「面白くない」「例えば・・・みたいなカンジでさぁ」この例え話でピンとこなかったら佐々木さんのディレクションは難解かもしれない。

あるとき「セ・リーグ vs パ・リーグ、じゃないんだよな。セ・リーグ vs Jリーグ、ってカンジなんだよな」とおっしゃる。ボクは、そっか、そういうことか! と視界が開けたのを覚えている。クリエーティブ・ディレクターにハッキリと「こうしろ!」といわれるより、こういう「イメージ的なディレクション」もボクは悪くないと思う。ただし、これはお互いのセンス(とか審美眼)が近いことが前提だけどね。

今回の欄外コピーは、これでした。
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◎そういう意味で、ずっと業界第2位も、いいかもしれない。
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・がんばれNTT。がんばるKDDI。
・No.2だから、ヤンチャできる。
・つまんない広告をする企業は、ほぼ、つまんない。
・「ジョニーって誰よ」

がんばれNTT がんばるKDDI

KDDIがんばる10月2日月曜日の朝刊15d。この朝刊を見たNTTの社員はどう思うだろう。KDDIの社員はどう思うだろう。それを想像しながら出社した朝でした。

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がんばれNTT
がんばるKDDI

2000年 KDDI
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大きな仕事でしたから、当然代理店数社による大競合大会だったそうです。「だったそうです」というのは、ボクらは競合ではなかったから。KDDとDDIとIDOの3社が合併するわけですから当然社長も3人いただろうし、宣伝部長も3人いたのでしょう。当然、なかなか話が決まらなかったそうです。それに業を煮やした新会長、牛尾電機の牛尾治朗さんがついに、『そんな競合なんかで何社にも案を出させてもダメだ。電通に佐々木というのがいるらしいから、その男に依頼せよ』となったようなのです。その頃、佐々木さんはいろんな仕事で目立っていたから有名だったのでしょう。『佐々木に頼め』と牛の、いや鶴の一声です。こうしてKDDIの作業が始まるのですが、その話が来たのがもう夏休みも終わろうとしていた頃。合併は10月1日。時間がない。予算はあるが時間がない。結果的にこれが良かったのだと思います。時間がないから、決断が早い。早くしないと間に合わないからね。

しかし、この仕事がうまくいった一番の理由は、佐々木さんと牛尾さんが最初にふたりで話し合ったことだと思います。そこで目指す方向が確認された。ふたりで話してお互いに信頼関係が生まれた。本来、仕事とはこうあるべきです。クリエーティブ・ディレクターとクライアントのトップ(もしくは決定者)が1対1で話す。プレゼンもその1対1でいい。決定しない人や決定できない人にプレゼンしても意味がない。ほんとうに意味がない。

目指すべき場所が一致しているから、このコピーも一発OKでした。こうしてNTTとKDDIが並ぶと、対等なカンジがするでしょ。でも現実は巨人と小人くらい(曙と舞の海くらいか)企業としての規模の差があったから、タイマン張ります、という宣言でした。相手は「へ」とも思ってなかったかもしれませんが。このコピーは、対等に闘いましょう、という宣言でもありました。

この原稿はたしか10月2日月曜日の朝刊。10月1日から5日くらいまでの連続15dだったと思います。下には小さく「◎国際電話の001と国内電話の0077と携帯電話のauとインターネットのDIONの集合体。KDDI,スタート。」と入れました。

(このコピーは事前にNTTさんにも了解を得ました。名前を使わせてもらってますからね。電通の営業が、そこは頑張って了解をとってくれました。このコピーが世に出たのは、多くの人の勇気や苦労のおかげ。感謝です)

・がんばれNTT がんばるKDDI
・No.2だから、ヤンチャできる。
・つまんない広告をする企業は、ほぼ、つまんない。
・「ジョニーって誰よ」

会ったこともない人を、泣かす。

書く語りき

広告の業界誌などに書いた文章も「こんなコピーを書きました」でまとめておこうと思います。ちょっと昔に書いた文章ですが、今も、これからにも通ずる部分があると思い記録しておきます。2008年に発刊されたコピーライター養成講座 50周年記念ブレーン別冊「コピーライター、書く語りき」に寄せた文章です。
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会ったこともない人を、泣かす。

JWトンプソンの営業をしていた頃、コピーライター養成講座の専門コースに通っていた。岡田耕さんのクラスだった。その岡田クラスを卒業してサン・アドに入社が決まり、リクルート「とらば〜ゆ」のコピーを書いていた、まだ駆け出しの頃。久しぶりに岡田耕さんとお会いする機会があった。

「言おうかな〜どうしようかな〜。悔しいから、言うのやめとこうかな〜」と、いたずらっ子のような目をして岡田さんは話し始めた。

「実はね、リクルートの人から聞いた話なんだけど。新潟に住んでいる中学生の女の子がね、中村君のコピーで、泣いたっていうんだよ」と。

当時、リニューアルした就職情報誌とらば〜ゆのCMで、「新しく、なりたくて、なりたくて、なりました。新しい、とらば〜ゆ」というナレーションコピーを書いた。自分の書いたコピーが、会ったこともない遠く離れた人の気持ちに刺さったのかと思うと、こっちが泣きそうになった。

コピーが人に届いたんだという快感。この感動こそが、広告というしんどい仕事を続けさせてくれるエネルギーになっているのかもしれない。このとらば〜ゆのCMは、何の広告賞も獲らなかったけれど、恩師岡田耕さんからは勲章をいただいたと思っている。そして今でも、仕事で気持ちが折れそうになると、この話を思い出す。広告をつくる仕事を選んでよかった、と。(コピーライター中村禎)

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…出社は明日から。

KDDI表紙

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10月1日、KDDI スタート。出社は明日から。

2000年 KDDI
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2000年10月1日、国際電話のKDDと国内電話のDDIと携帯電話のIDOとが合併して、NTTの対抗軸としての新しい会社、KDDIができました。その日の朝刊新聞15dです。ほんとは、コピー、ドカ〜ンといきたいところなのですが、その年の10月1日はあいにく日曜日。朝、ビックリする広告を見ても会社でみんなと会わないので話題になりにくい。そこで、これから始まる一連のKDDI合併広告シリーズの静かな表紙にしようとなりました。一見コピーがなんにもないように見えるでしょ。でも、細かい所を見てほしい。ロゴタイプのテープのようなものが貼ってあります。これも新聞によって位置を変えてあるんですが、よくみると「Designing The Future」という英文のスローガンがあります。(これは最初から決まっていて、入れなければいけなかったので入れました)その下にも英文がチョロチョロ書いてます。よく見ると、ローマ字です。
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Designing The Future

SUROGAN MO DAIJIDAKEREDO
JIKKOUSURUNOGA ICHIBAN DAIJI.

スローガンも大事だけれど、実行するのが一番大事。
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ここまで読んでくれた人は少ないと思います。でもいいんです。これから何回も出てくるロゴですから、ある時気づいてもらえれば、笑ってもらえる。ここに気づいた人が友だちに「あれ、ローマ字なんだぜ」と誰かに話してくれれば最高です。当時はTwitterとかなかったけど、あったらもっと面白かったかも。笑ってくれて「この会社、なかなかオモロイな」と思ってもらえれば大成功です。こういう「シャレ」にOKを出すセンスの会社なんだということをわかってもらえます。

そして、一番下のスペース。ここにコピーが入っています。
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10月1日、KDDI スタート。出社は明日から。
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新聞を広げて、なんじゃこりゃ、となって「KDDI」という社名だけが目に入る。新聞だから手元を見る。すると下になんか書いてある。そこを読む。という計算でした。10月1日はいろんな会社の合併広告がでます。その中で一番目立たないと出す意味がない。逆にその日目立てば、これから始まるシリーズの表紙になると思いました。

クリエーティブ・ディレクターは佐々木宏さん(現在シンガタ)、アートディレクターは水口克夫さん(現在ホッチキス)、そしてデザイナーは沢田真くん(電通)。このグラフィックのシリーズは、コピーも好き勝手言ってスゴイんですがw、デザインのチカラが大きかったシリーズだと思っています。

…出社は明日から。
がんばれNTT がんばるKDDI
No.2だからヤンチャできる。
つまんない広告を…
スローガンより実行せよ。
日本で二番手でも…
ジョニーって誰よ。
…わけが違う